東京でスパークスとカラオケ「最高だった!」 エドガー・ライト監督「スパークス・ブラザーズ」インタビュー

2022年4月9日 16:00


スパークスとエドガー・ライト監督
スパークスとエドガー・ライト監督

ラストナイト・イン・ソーホー」「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督が、ロン&ラッセル・メイルによって1960年代に結成された謎の兄弟バンドの真実に迫った音楽ドキュメンタリー「スパークス・ブラザーズ」が公開された。

実験精神あふれる先進的なサウンドとライブパフォーマンスでカルト的な支持を集め、時代とともに革命を起こし続けてきたふたりの生い立ちから、浮き沈みも経験しながらも、世界的アーティストたちに影響を与え続けた活動の軌跡、そして兄弟のシネフィル的側面などが、貴重なインタビューやアーカイブ映像で綴られる。劇映画でのその音楽センスにも定評のあるライト監督が、初のドキュメンタリー作品となった本作を語った。

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――監督が大ファンであるスパークスとの共演はいかがでしたか? 一番興奮を覚えたこと、驚いたことなどお聞かせください。

初めてふたりに会ったのが2015年で、実際には3年ほど映画の撮影開始までに期間が空いていたのですが、その間に何度も直接会って映画のことはもちろん、その他にもいろいろなことを話しました。その期間で人間としての彼らを知ることができたことはこの映画の撮影において大きかったと思う。いかにセンスがあってチャーミングで、かつ謙虚かっていうことをその場で感じることができたし、よく自分が憧れているヒーローには、幻滅させられることもあるから会わない方がいいと言うけど(笑)、スパークスの場合はそんなことは一切なかった。逆にふたりのセンスやユーモア、僕が感じ取ったものを撮りたいと強く思いました。

スパークスのふたりと時間を共にしたことで、初めて彼らの生い立ちを知り、触れてきたカルチャーや、聴いてきた音楽の話などを聞いて、メイル兄弟がいかにスパークスになったかということを初めて知りました。それからもっとふたりのことを掘り下げたいと思って、スパークスを組む前にふたりに影響を与えた曲のプレイリストを作って欲しいとリクエストしてみたり。彼らはジャズ、クラシックからオペラまでオールジャンルの100曲くらい入ったプレイリストを作ってくれました。いかにもスパークスらしい選曲から、意外な曲までかなり多岐にわたっていましたね。

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――ご自身初のドキュメンタリー作品ですが、撮影において難しかったことはどんなことでしたか?

全てが新鮮でした。今回この手法を選んだのは、スパークスのファンについて考えてみたことが始まりです。まずは、スパークスのファンがどういう人たちなのかを3つのグループに分けてみたんだ。一つ目は、彼らふたりのことを全て知っているような熱狂的なファンのグループ。二つ目は、昔聴いたことがあったり、ライブに行ったこともあるけど、これまでのスパークスの歴史をまだ知らないグループ。三つ目は、バンド名も全く知らないような、スパークスを何も知らない人たちのグループがいると考えた。そして、このどれかのグループに向けてではなく、全部に向けた映画を撮影したいと思ったから、今回はドキュメンタリーという手法を選びました。

僕が作ってきたどの作品とも違う方法だったから、ドキュメンタリーを作った経験のあるプロデューサーや仲間たちと一緒に作業できたことはすごく助かりました。足りない部分を補ってもらましたね。ドキュメンタリーを撮って気が付いたことは、重要なのは関係する人たちへのインタビューだということ。誰に話を聞くか? は時間をかけてリサーチしました。もちろん、ロンとラッセル自身にもインタビューに答えてもらったけど、彼らは性格がとても謙虚で、あまり必要以上に自分たちのことを語ろうとしないんです(笑)。それを補う意味もあって多くの人たちにインタビューする必要があった。結果、80人に聞いて、その作業は大変というよりは、むしろありがたかったですね。みんな大好きなスパークスのことをそれぞれの解釈で話すからとても楽しくて。もちろん僕も含めてね(笑)。もしまだ時間があるなら、もっともっとインタビューしてみたいでんすね。スパークスは話題が尽きませんから!

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――スパークスのミステリアスな雰囲気はそのままに監督の作品として撮影してほしい」とスパークスが監督に伝えたと伺いました。どのように解釈して制作をされたのでしょうか?

ふたりからはいくつか触れたくないと言われたことがあって、それは例えば、バンドの神秘の部分は守りたいので、私生活についてはあまり話したくなくないというようなことでした。それは尊重しましたが、彼ら自身がそのルールを破り、喋ってしまうこともあって(笑)。そこが映画の中での僕のお気に入りのシーンです。つまりはステージ・ペルソナのマジックということなんだと思います。

今どきのポップスターというのは、面白みに欠けることが多いですよね。ソーシャルメディアを通じて、私生活も含め、なんでも知られていますよね。毎日、自分からそれを知らせるスターもいるわけで。だから僕はロンとラッセルが謎は謎のままにしておきたいと願う気持ちを尊重したかった。実際、スパークスの魅力の一つは、彼らにはたくさんの「???」があることだと思います。

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――日本での撮影シーンもありましたが、ふたりとの思い出を教えてください。

東京訪問は6~7回目ですが、日本で撮影をしたのは初めてです。もちろん撮影クルーと一緒ですが、僕もたくさんカメラを回しました。クラブ・クアトロのギグではステージに上がり、彼らのすぐ横で撮影しました。コンサートも終わる頃になって、あるファンの子の前にずっと僕は立ってたってことに気づいて、申し訳なくなっちゃって。「ずっとコンサート中、視界を遮ってしまってごめん。お詫びにこれを」とセットリストを渡しました。

彼ら(ロンとラッセル)は喜んでくれてたけれど。ふたりと日本に来られたってことだけで嬉しかったし、ふたりが好きな場所に連れて行ってもらえたのは、本当にいい思い出です。クラシック音楽だけをかける「名曲喫茶ライオン」だったり、タワーレコードではスパークスがディスプレイされていました。僕らが店内で撮影してるのを見た若いファンが「本物のスパークスがいる!」と慌てて「Kimono My House」を買ってきて、サインをねだったり。そんな微笑ましい出来事もありました。あともう一つ、皆でカラオケに行き、ラッセルが「This Town Ain't Big For Both Of Us」を歌ったこと。あれは最高だった!

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