伊藤健太郎×阪本順治監督「冬薔薇」に実力派集結 小林薫&余貴美子が葛藤を抱える両親役
2022年3月31日 11:00
伊藤健太郎が主演し、阪本順治が監督・脚本を務めた映画「冬薔薇(ふゆそうび)」の追加キャストが発表され、小林薫、余貴美子、眞木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰、河合優実、佐久本宝、和田光沙、笠松伴助、伊武雅刀、石橋蓮司が出演していることがわかった。
本作は、阪本監督によるオリジナル脚本で、人間の業を切なく儚く紡ぎ出した作品。舞台は、ある港町。専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳(伊藤)は、“ロクデナシ”という言葉がよく似合う中途半端な男だ。両親は埋立て用の土砂を運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ませながらもなんとか日々をやり過ごしていた。淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らぬ人物のものだった。
小林は、淳の父親で日本の高度成長期を支えたガット船「渡口丸」の船長でもある渡口義一役を演じることに。忙しさにかまけて息子と向き合わず、埋めようのない溝を作ってしまった男の弱さと哀しみ、内に秘めた思いを体現している。余は、義一の妻で会社の事務を取り仕切る渡口道子役。生来のバイタリティーと、長い結婚生活で染み付いた徒労感――相反する要素が自然に溶け合った佇まいに注目してほしい。
失業して「渡口丸」に雇ってもらう淳の叔父・中本裕治役に眞木、淳が所属する不良グループのリーダー・美崎輝役に永山、不良グループのメンバー・君原玄役に毎熊、淳のいとこ・中本貴史役に坂東、美崎の妹・智花役に河合、淳の学友・友利洋之役に佐久本、淳に好意を寄せる澤地多恵子役に和田、「渡口丸」の甲板員・近藤次郎役を笠松が担当。また「渡口丸」の航海士・永原健三役に伊武、最年長の機関長・沖島達雄役を石橋が演じている。
「冬薔薇(ふゆそうび)」は、6月3日から新宿ピカデリーほか全国公開。小林と余のコメントは、以下の通り。
台本の段階では、この終わり方で良いのかなって云う不安が正直ありましたが、完成試写を観て不安払拭、感動しました
自分のことはさて置き、阪本作品に参加させてもらい、大変貴重な時間を頂いたと思っています
観終わってしばらく経ってなんですが、ふとコレは俺のことなんじゃないかという思いが湧いてきました
もちろん、淳の人生と似ていると云う意味ではなく若い時の出口の無い袋小路ってみなの中にもあるンじゃないのかな
ボクはたまたまと云うか、役者業の道に入りましたけど、別の道を歩んでいたらと思うと、淳達が遠いところの住人でもなく、とっても身近な存在に思えてきました
大人達にしたっても別段明るい明日があるわけでもない、みな、出口の無い袋小路で、もがくようにして生きている
それが何だか分かりませんが、ボクには希望でもあるように観えてきたのです
阪本順治監督との仕事は三作目だが、いつもドキドキドキする。監督の言葉、脚本、演出だから人をよくみている。自分の本性を見透かされそうで、恐ろしい!
主人公の伊藤健太郎さんとは初めての出会いだが、役どころとは裏腹に力むことなく、ずっと優しく穏やか。母親役の私の息子としてリアルに存在していて有難い!
夫役の小林薫さんや諸先輩方は、実人生とお芝居との境目がなく、とても自由で幸せな現場だった!
冬薔薇というタイトル!とても切なくて儚い感じだが、冬に薔薇が咲くのは、間違いなのか?勘違いなのか?でも夏の薔薇のように、北風にも負けずスックと花は咲く。全員がちょっとずつ誤解しながら生きている、そんな人達の物語。解っちゃいるけど、生きるって大変!
とても静かに心に沁みてくる。面白いと思う。