文化庁が進める「文化芸術分野の適正な契約関係構築」 「映画監督有志の会」がハラスメント防止に向けての要望書を提出
2022年3月28日 17:30

映画監督による暴力行為、性加害の発覚を受け、「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」という声明文を、3月18日に是枝裕和、諏訪敦彦、岨手由貴子、西川美和、深田晃司、舩橋淳(五十音順)の連名で発表した「映画監督有志の会」が、文化庁が発出を進める「文化芸術分野の適正な契約関係構築」において、ハラスメント防止に向けての要望書を文化庁に24日提出した。
現在、文化庁ではフリーランスの俳優やスタッフが安心・安全な環境で働けるよう「文化芸術分野の適正な契約関係の構築」に向けた検討を行い、わかりやすい契約書のひな形の作成を進めている。この契約書の作成において、「映画監督有志の会」はハラスメント防止が重要な検討項目と考え、更なる検討が必要であるとの危機感から要望書を作成し提出した。現在映画界においては契約の書面化は進んでおらず、そのことがハラスメント、精神的・身体的暴力などさまざまなトラブルの要因の一つとなっていること、極めて深刻なハラスメント被害の現状を、提出者の諏訪敦彦監督と西川美和監督が文化庁に伝えた。
同会は、今回の要望書の提出にあたり、「しかし、ハラスメントについては、まず私たちも含めこの問題の当事者である映画業界自らが事態の深刻さを認識し、改善に向けた具体的な対策を講じる必要があると考えます。今後は省庁に限らず映画業界団体に対してもハラスメント防止に向けた働きかけをしてまいります」とコメントしている。「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します。」という声明文は同会ホームページ(https://action4cinema.theletter.jp/posts/877aa260-a60c-11ec-a1bd-3d3b3c9fc3bd)に掲載されている。
映画・映像分野における労働環境について提言します。
現在、「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」において準備されている文化庁発出の契約書の雛型にハラスメント防止策を組み込むことを十分に議論し検討することを要望します。
日本の映画業界は1960年代頃までは俳優もスタッフも撮影所に雇用され安定した立場で働いていましたが、その後のテレビの普及に伴う映像分野の多様化のなかで、雇用型の撮影所システムは終わりを迎え、その大多数がフリーランスとして不安定就業の形態で働くことになりました。しかし、そういった重大な労働形態の変化に残念ながら映像業界は十分に対応できてきたとは言えませんでした。
撮影所時代の労使間の争議によって取り決められた現場の安全を守るためのルールも、俳優・スタッフがフリーランス化するなかで無実化し、雇用者側である映画会社、プロデューサーは圧倒的に優位な地位を有したまま、労働者の権利は縮小し現場の労働環境は悪化していきました。
度を超した長時間撮影の常態化、指導という名のもとに行われる技師から助手、助手から助手への罵倒や暴行、そしてディレクターやプロデューサーによる優越的地位を濫用したスタッフ・俳優へのハラスメント、性的暴行など、撮影準備から撮影、配給から映画館に至るまでそのケースは枚挙にいとまがありませんが、最大の問題はこれらの悪習が当たり前のものとして問題視されず、芸術や教育の美名のもと看過され続けてしまったことです。その被害は誰もが受けることになりますが、そういった環境下で最も傷を負いやすいのは若い俳優やスタッフ、また女性であり、その多くが希望を失い声もなく去っていったことを重く受け止めねばなりません。
私たちはこの悪習を次の世代に残さないためにも、まずは映画監督の立場から映画監督の職掌のもつ権威性、暴力性について同業者に自覚を促すことを目的に3月18日に声明を発しました。
https://action4cinema.theletter.jp/posts/877aa260-a60c-11ec-a1bd-3d3b3c9fc3bd
声明発表後、同様の問題意識を持つ多くの映画関係者から賛同が届き、私たちはすでに300を越えるメッセージを受け取っています。中にはパワーハラスメント、セクシャルハラスメントの深刻な被害を受けていた方の極めて切実な声もありました。それらはすべて、この業界を変えなければならないという危機意識の顕われであるはずです。
映画の現場において俳優やスタッフの権利や人権が軽視されてしまう要因のひとつに、日本の商慣習における契約書締結の不徹底があります。契約書は労使の関係を明確にし、それぞれの持つ権利と負うべき責任を明確にします。契約書の雛形を出すことは契約書を軽視する業界慣習改善に効果が期待できますが、それはときにその内容に同意しない人を業界から排除することにもつながります。内容次第でハラスメント防止にも、その逆にもなりえるからこそ、その内容は十分に吟味されなくてはなりません。
省庁において「文化芸術分野の適正な契約関係構築」について検討が始まったことは歓迎すべきことですが、しかし、その検討期間が21年9月から22年3月末と短期間であること、検討委員のメンバーに実演家当事者の割合が極めて少ないこと、また検討にあたって現場における契約関係の実態を把握し参考にするためのアンケートの実施期間が21年12月17日から12月27日とわずか10日間であることから分母が少なくまた回答を得られた業種にも偏りがあるなど問題が多く、当事者、それも声をあげづらい現場労働者の意見をきちんと反映できているのか、公正な議論と検討が尽されているのか、疑問を持たざるをえません。実際、すでに公表されている3回の議事録を読む限り、ハラスメント防止に関する議論は、問題の深刻さに対しまだ不十分です。
今回作成される契約書の雛型は、今後のモデルケースとなる極めて重要なものとなります。だからこそ、省庁には拙速に結果を示す前に、議論のためのより十分な期間を設け、現場スタッフ、俳優らへのヒアリングをより丁寧に広範に行ったうえで、どうすれば態様が多岐にわたるハラスメントを防止できるのかを真摯に検討することを要望いたします。
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