「東京2020オリンピック」は“2部作”で公開、河瀬直美総監督「たくさんの人に希望を」
2022年3月24日 18:50

昨年開催された東京五輪の公式映画「東京2020オリンピック」が2作品に分けて公開されることになり、河瀬直美総監督が3月24日、都内で製作報告会見を行った。
新型コロナウイルスの感染拡大により、史上初めて1年延期。翌年の開催期間中も東京は緊急事態宣言下にあったため、無観客での開催と異例づくめだった五輪。それでも過去最高の33競技、339種目が行われ、河瀬監督は「コロナで人が分断され、1年模索しながらこの先の未来に伝わるアーカイブにしなければ意味がない。2本作れればいいなと撮影中から思っていた」と意図を説明した。
「東京2020オリンピック SIDE:A」は、参加した選手がメインだが「国を代表して参加する意味を重く持たなければいけない」と、メダリストだけでなく難民選手団や亡命して他国の代表となった選手にもスポットを当てた。ジェンダーの問題も盛り込み、「女性は妊娠、出産があっても、ママアスリートとしてしっかりメダルを獲得した人もいる。私も一人の母親、人間として人生の勝利者になるということも含めてフォーカスしています」と語った。

一方の「東京2020オリンピック SIDE:B」は、大会スタッフやボランティアらに焦点を当てた。「無観客になって、それまで準備していたチケットや観客の誘導などのしつらえがどうなるのかなど、本当に大変だったことがたくさんあった」と振り返る。組織委員会の森喜朗会長(当時)が女性蔑視発言で辞任に追い込まれたことや、反対派のデモ隊にも取材するなど舞台裏をつぶさに記録したという。
撮影では感染予防対策により、選手との距離を取らねばならず「もう少し近寄りたいなと思ったこともあり、言い尽くせないことはたくさんあるが、できないことも含めて作品にしたつもり」と強調。普段は少人数のスタッフ編成で製作しているが、今回は150人で撮影。「全て(の競技に)行くことはできないジレンマはあった。でも、スタッフと毎日集まってミーティングをしていたので、ほぼ寝ていない。常に気持ちはピークで、皆と駆け抜けたかけがえのない時間でした」と充実感をにじませた。
結果、撮影日数は750日、5000時間に及び、「終わりません。2時間ずつくらいにできればと思っていますが…」と、現在も編集に追われている日々で苦笑いも浮かべた。北京冬季パラリンピック開催中にロシアのウクライナ侵攻が起きたが、「こんな時に映画の会見をしてもいいのかという思いはあったが、私はできうれば人々の頃に光を届けたいという思いで映画を作っている。この映画によってたくさんの人が希望を見いだし、皆が人生の金メダリストになれるよう祈っています」と真摯に訴えた。
「東京2020オリンピック SIDE:A」は6月3日、「東京2020オリンピック SIDE:B」は6月24日にそれぞれ公開される。
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