日本の“差別”を丸ごと見つめて学びほぐす 「私のはなし 部落のはなし」5月21日公開
2022年3月7日 12:00
ドキュメンタリー映画「私のはなし 部落のはなし」が、5月21日に公開されることが決定。あわせて、メインビジュアルや場面写真、制作者のメッセージ、著名人のコメントが披露された。
本作は「部落差別」の起源と変遷から、根強く残る差別の現状までをとらえてる。近年の「鳥取ループ裁判」に関する話題も取り上げており、堆積した差別の歴史と複雑に絡み合ったコンテクストを、多彩なアプローチで鮮やかにときほぐしていく。
監督は「にくのひと」で第一回田原総一朗ノンフィクション賞を受賞するも、劇場公開を断念せざるをえなかった経験を持つ満若勇咲。「なぜ君は総理大臣になれないのか」「香川1区」の大島新がプロデューサーとして名を連ねている。
「私のはなし 部落のはなし」は、5月21日からユーロスペース、第七藝術劇場、シネマート心斎橋ほか全国順次公開。
ここ数年、私のもとに多くのドキュメンタリー映画の企画が持ち込まれ、「プロデューサーとして参加してほしい」という依頼があったが、「乗った」のは満若勇咲監督の「私のはなし 部落のはなし」のみである。
勘が働いた、というしかない。この若者に、賭けてみたい。
出資を決め、企画が動き出してからおよそ2年後、3時間におよぶ編集の第1稿を観た時の驚きは忘れられない。やろうとしていることのスケールの大きさに圧倒された。期待を遥かに上回る意欲作が誕生しつつあるという予感に、「おれの勘は正しかった!」と叫びたくなった。
この映画は、まことに饒舌である。そしてその饒舌さゆえに、単純な要約を許さない。だから観た人は、それぞれに受け止め、自らの思いを持ち帰って解釈をするしかない。私はプロデューサーとして、このとんでもない作品をきちんと世に届けなければと、身の引き締まる思いでいる。
現在の部落差別は、その根深さとは裏腹にとても見えにくく分かりづらい。多くの人にとって部落問題は身近な社会問題ではない、というのが正直なところだろう。ぼくも映画制作という機会がなれば意識することはなかったように思う。
「部落問題」を題材にした映画作りは難航した。カメラには映らない。けれど確かにそこにあるものを、どのように映像で表現すればよいのだろうか? 悩んだ末に、ぼくは人々の「はなし」を紡ぐことで、意識の奥底にある「部落問題」の存在を感じさせることが出来るのではないかと考えた。そのために3時間25分という長さが必要だった。
部落問題を解決する道はまだ見つかっていない。撮影することは当事者の方々が差別を受けるリスクを伴う。そのような現実のなか、覚悟を持って今回の撮影に応じてくださった皆さんに心から感謝します。
被差別部落は、なぜ残ったのか。中世から現代に至るまでの共同体の歴史をたどりつつ、さまざまな立場の人びとが、自分と部落を語った傑作ドキュメンタリー。
具体性がないまま膨らみ、実態を確認せずに強い拒否反応だけが生まれる。
それは、今、この社会のあちこちで起きていることではないか。
歴史を知ると、強烈な問いが現在の自分に向けられる。