ジャン=リュック・ゴダール「イメージの本」の展覧会がベルリンで開催
2022年2月22日 19:00

2月10日に開幕したベルリン国際映画祭と連動して、ジャン=リュック・ゴダールの最近作「イメージの本」(2018)に関する展覧会「Sentiments, Signes, Passions」が、ベルリンのカルチャー・センター、Haus der Kulturen der Weltで4月24日まで開催されている。
ゴダールの展覧会といえば、2019年、ロッテルダム国際映画祭でも開催されたが、このときは「イメージの本」をまるで彼の書斎で鑑賞するかのように、ホテルの一室を装飾し、上映するものだった。だが今回は、会場をいくつかに区切り、40台のスクリーンを設置し、それぞれの小スペースで、映画の断片を編集の順に沿って上映する、という手法。つまり展覧会をぐるりと回ると本作を鑑賞したことになる。

もっとも、本作自体が1世紀以上にわたる歴史、戦争、宗教、芸術などの変遷を振り返りコラージュした内容ゆえに、ばらばらに見ても、違和感はない。むしろ本作をご覧になった方の中には、あまりに多くのディテールが怒涛のように現れては消えていくので、リワインドをしたいと思った方も少なくないのではないか。本展の目的は、映画を細かく分節することで、それぞれのパートに好きなだけ時間を掛け、その狭間でビジターがテーマについて熟考することを可能にしている。ゴダールについての展覧会とも、通常のビデオインスタレーションとも異なる試みである。
またところどころに抜粋と関連する、ゴダールがセレクトした書籍が置かれ、ビジターが造詣を深められるようになっている。
本展をキュレートしたのは、「ゴダール・ソシアリスム」(2010)から撮影監督を務め、「イメージの本」のプロデューサーでもあるファブリス・アラーニョ。彼は本展について、「まるで「イメージの本」の編集室を拡大し、映画のスペースのように増殖させたもの。ビジターは自分で映画のコースを選択し、彼ら自身が時間のカーソルとなって、まるで森のような映画の棚を散策できる」と語る。
ゴダールは、「未来を語るのはアーカイブである」と述べているが、こうして20世紀からの膨大な歴史、とくにホロコーストやイスラエルとパレスチナの紛争などの暗部を振り返ることで、人間の歩みについて学び、そこから我々が未来への指針を探ることを望んでいるのだろう。

現在91歳の彼が今回ベルリンを訪れることはなかったが、本展覧会に際して、ツイッターで公開したお茶目なビデオがある。そのなかでゴダールは、「ベルリンにはイノシシが多いから、イノシシの飼育家を映画館に連れてくるべきだね」と、唐突な冗談を言った後、「映画、あるいは映画から得られる何かは、自然の中を散策し、枝別れした木々を眺めることに似ている。ファブリス・アラーニョがおこなうことは毎回、それぞれが映画の木なんだ」と語っている。(佐藤久理子)
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