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永山瑛太、監督として役所広司を演出する 短編映画「ありがとう」で過ごした贅沢な時間

2022年2月4日 12:00

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「アクターズ・ショート・フィルム2」でタッグ!
「アクターズ・ショート・フィルム2」でタッグ!
永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵 役所広司:スタイリング/安野ともこ、ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)

「監督、お久しぶりです!」

役所広司は、満面の笑みを浮かべながら、言葉を投げかけた。

視線の先にいたのは、永山瑛太。いや、永山瑛太監督だ。役所の声掛けに、少々照れくさそうな面持ちだった。

WOWOWが開局30周年を記念して行った「アクターズ・ショート・フィルム」。「尺は25分以内」「予算は全作共通」「原作物はなし」「監督本人が出演すること」を共通ルールとし、俳優5人がショートフィルムを制作するプロジェクトだ。第1弾では、磯村勇斗柄本佑白石隼也津田健次郎森山未來が、監督として参加している。

2月6日午後5時からWOWOWで放送・配信される第2弾「アクターズ・ショート・フィルム2」では、青柳翔玉城ティナ千葉雄大前田敦子が監督に挑戦。そのなかのひとりとして、永山が監督を務めることになったのだ。

タイトルは「ありがとう」。主人公は、家族と離れ、死に場所を求めてひとり彷徨う男。癒してくれるはずのマッサージ嬢からも逃げ出し、路上で盗んだ車で奥深い山へと入っていく。車を乗り捨て、さらに森の奥へ歩み入る男は、そこで奇妙な若者に出会う……。

自主映画の制作はあるが、本格的な映画としては“初監督作品”となった永山。その挑戦を支えることになったのが、主演オファーを快諾した役所だった。09年に公開した役所の初監督作「ガマの油」では、永山がキャストとして参加。「ありがとう」では、監督・キャストの立場が逆転している。

監督・脚本を務めた永山。主人公の“男”を演じた役所。2人の対談によって、「ありがとう」の制作過程が紐解かれていく。(写真/朱恒斌)


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――お二人が再会するのは、本作の撮影以来となりました。まずは、役所さんにお聞きいたします。永山監督から直接電話があり、主演オファーを受けたそうですね?
役所:「監督をするので、出てくれますか?」と。友だちですからね。断れないですよ(笑)。
――役所さんが監督を務めた「ガマの油」では、永山監督が矢沢拓也役として出演されています。今回は立場が逆転する形となりました。永山監督は、当時のことを憶えていますか?
永山監督:「ガマの油」における死生観、役所さんのエンタテインメントに対する捉え方や描き方――それらがシリアスになりすぎず、撮影現場もとても居心地が良かったんです。死生観を描くという意味では「一命」という作品でも共演しましたし、CMでもご一緒させていただきました。このCMでの「友だちのようにしゃべってください」という演出が一番難しかったかもしれません(笑)。

役所さんと出会う前、そして出会ってからも、出演された作品をずっと見続けてきてはいるんですが、ご飯を食べたり、長い時間を一緒に過ごすということがなかったんです。でも、今回の企画では「役所さんだったらやってくれる」という思いがあったんです。勝手ながら、役所さんと僕は絶対に繋がっていられるという確信がありました。だからこそ、このような作品を生み出すことができて、本当に幸せです。

画像3永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵
画像4役所広司:スタイリング/安野ともこ、ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)
役所:瑛太くんは「ガマの油」に出演してもらった時は、若手の中で期待されている役者さんでした。あれからお互いこの業界で今日まで生き延びてこれたことが嬉しい。普段、めったに電話はかかってこないんですよ。いきなり不意打ちのように連絡をもらって「おー、いいね!」と言ってしまった自分もいます(笑)。
――(笑)
役所:「ガマの油」の借りは「一命」で返したつもりだったんだけどなあ(笑)。でも、俳優としても「永山瑛太」は、好きな俳優なんです。そんな彼がショートフィルムでどのようなものを撮るのか。俳優としての個性も出てきますし、それを現場で経験したいと思ったんです。俳優同士、違う立場で再会を果たして映画を作ることができる。こんなに贅沢な事はないなと思いましたね。
画像5永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵 役所広司:スタイリング/安野ともこ、ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)
――完成した作品をご覧になられて、いかがでしたか?
役所:台本をもらった時には、こういう作品になるとは想像がつかなかったんです。台本に書かれていたのは、永山監督の記憶のメモ――“生きる”ということについてのものでした。それをどうするのかというのは、現場に行って、監督の意見を聞きながら、ワンカットずつやるしかないなと。(撮り終った素材を)永山監督が新たな発想で繋ぎ合わせたものが、すごく良い雰囲気を出している。監督として演出してくれた部分が、映画として上手くいったんだなと思いました。
永山監督:役所さんに出演して頂いて、作品を見て頂いて、さらに「俺は大好き」という言葉も頂けた。幸せです。
役所:いやあ、この作品、好きなんですよ。やるなあ――流石です!
画像6永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵
――そもそも「役所さんで映画を撮りたい」という思いが先なのでしょうか? それとも物語の構想があったうえで、役所さんに出演を打診したいという形になったのでしょうか?
永山監督:両方です。自分で映画を撮るのではあれば、こういう作品を作りたかったんです。生き辛さを抱えてる男が、何処に向かっていくのか。そして、実際に撮るのであれば、キャスティングの優先順位として、1番が役所さんでした。10年くらい前、今回のような話を書いたことがあるんです。でも、映画業界のプロデューサーに、それを見せた時「暗いね」と言われてしまって。“生き辛さ”というものには暗さというものが伴いますが、僕の中のイメージでは、そこまで暗いタッチのものではなかった。言葉で伝えることの難しさというものを痛感しましたね。今回もイメージの伝え方、説明をするための“言葉の壁”というものにはぶつかりました。
役所:でもね、監督は小道具も含めて、撮影現場の全てを決めるわけです。俳優は、現場にやって来る事で「こんな感じで撮るのか」と思うんです。そこでようやく、脚本に書かれた言葉と(自分の想像が)合ってくる。現場に行ったことで監督の思いが伝わるというのは、よくあることだよね。今回の作品は、ユーモアがある。そこがいい。映画にとって、ユーモアや愛嬌というのは、とても大事なものだと思っているんです。どんなにシリアスな内容でも、おかしみのようなものが加わることで、豊かな作品になっていきますから。
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――先程、役所さんから「生きるということについて」という話題があがりました。永山監督は、この点について、どのような意識を持っていたのでしょうか?
永山監督:ある死生観を描いているのですが、現場で感じていたことがあります。それは役所さんの生命力の強さで、シリアスになってしまうような部分にもユーモアが生じている。編集室で作業していた時も、どこか危ない場面なのに、何故か笑ってしまう。死の匂いがするのに、笑えるというか……。役所さんには限界がなくて、自由で拡張的なビジョンがある。無限の世界をもたらすことができるので、そこに言葉や意味がいらなくなってしまうんです。生きるということのエネルギーの強さも描きたかったんです。想像以上の仕上がりになったのは、役所さんの生命力の強さのおかげだという実感がありました。
――役所さんを演出するうえで、どのような考えを巡らせていたのでしょうか?
永山監督:役所さんであれば、こういう動きを見せてくれるのではないか、こういうイメージになるのではないかと考えていました。ですから、具体的に感情を説明したり、言葉を投げかけるのではなく、動作を伝える。すると、1シーン目のファーストカットから、予想とは異なるものになったんです。役所さんの顔が(モニターに)映った瞬間、想像を遥かに超えたものになっていくのだろうなと思いました。色々準備はしていたんです。でも、1カット目を撮った瞬間に「これはつかめた」という瞬間があった。そこからガンガンぶつかっていっていいと思いましたし、基本的には1発OKのスタイルで進めていきました。不安やネガティブな方向には、心が傾かなかったんです。役所さんと撮影ができる――楽しい、これは気持ちが良すぎるなというひと時が続いていきました。
画像8永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵 役所広司:スタイリング/安野ともこ、ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)
――印象に残った芝居はありましたか?
永山監督:それは全てのカットですね。
――役所さんはいかがでしょうか?
役所:冒頭のシーンで、男が納豆を箸で掲げるという場面があるのですが、永山監督から「焦点が合わないような目をしてください」と言われたんです。振り返ってみると、あれが全編における大きなヒントになりましたね。あの演出があったからこそ、全体が繋がっていくような気がしました。
永山監督:僕自身にも言えることなんですが、光がまぶしかったり、自分の内側に意識がいきすぎてしまったりすると、自分が表面的にどう見られているのかわからなくなってしまう時があるんです。そういう時は、目をぱちくりとしている。役所さんの存在によってフィクションを創り上げてはいますが、内側の世界というのも表現したかったんです。蕎麦屋にいて、周囲にはお客さんもいれば、環境音もある。そういう外の世界にいる感覚みたいなものを、全部失ってしまっている。役所さんの表情、目の強さ……そういうものを、一回そぎ落としてみたかったんです。
画像9役所広司:スタイリング/安野ともこ、ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)
――ありがとうございます。役所さんは、監督しての永山さんをどう見ていましたか?
役所:基本的に面白そうにやっていたから、出演者としては、それが救いですよね。テストはほぼ無しで、いきなり本番。ほとんどが一発OK。そういう潔さというのは、キャストから見るとすごく心地よいです。監督が潔いと、スタッフとキャストもついていく。手法としては大成功です。でも、もしかしたら演出をしながら「俺の方が芝居は上手いな」「俺だったらこうするのにな」と思っていたかもしれませんけどね(笑)。
永山監督:いやいや、そんなことはないです(笑)。あ、面白いエピソードをひとつ思い出しました。1カ所だけ、僕の寄りのカットを撮るかどうか迷っていたんです。そうしたら、役所さんから「撮っておきなよ」と言われて、結局撮ることにしたんですよ。
役所:監督をやっていると「自分のカットは、いいや」と思っちゃうからね。
永山監督:その時、カットをかけたら、役所さんが「自分だけ長めに撮るね」と(笑)。
一同 爆笑
役所:そう言えば、ラストカット――実は監督が編集で切っているんですよね。あそこに映し出された男の表情は“台本の先”のもの。それが効いているんですよね。台本の時よりも気持ちの良い終わり方になっています。永山監督、良いセンスしているなあと思いました。
永山監督:その部分は、台本で答えを出していない部分なんです。現場で“何かが生まれる”と思っていました。確か、2回チャレンジさせてもらったと思います。その時に何かが起きていたんでしょうね。編集室で「最高のカットが撮れた」と思っていました。
役所:監督は、この顔を見たくて作っているんだなという感じがしましたね。
画像10永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵
――本作はコロナ禍の世界という点も意識されているように感じました。
永山監督:生活をしていて、閉塞感を感じるというか、生き辛さというものはあって、今の時代の生きる自分や子どもたちは「コロナ世代」と呼ばれてしまうかもしれませんよね。そのような時代に「映画を撮る」ということで取り入れました。特に明確な意図はないのですが、こういう時代もあった、人々がマスクしていた、そのような光景を撮りたかったんです。コロナに対しての具体的なものについては、見て頂いた方の判断に委ねたいと思います。
役所:死に向かっている男が、なぜマスクをしているのか……そういうおかしみは生まれますよね。監督が仰ったように、この時代に、こんな人間たちが集まって、このような映画が生まれたということは、映画史のなかでも大切なことじゃないかな。コロナ禍を描いている作品もあれば、それを一切ないものとして作られている映画もある。でも、コロナ禍において、パンデミックの時代を生きた人間を描くという作品は、あってもいいんじゃないかなと思います。今のような真っ只中に生まれる作品と、歳月を経た後に10年、20年さかのぼる形で「コロナの時代を描く」という作品では、全く印象が異なるわけですから。
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――おふたりとも監督業を経験された俳優となりました。俳優業に立ち戻った時、監督業の経験が生かされるようなことはあるのでしょうか?
永山監督:俳優部には、監督の性質を見てしまうという一面があるのですが、可能な限り、監督とコミュニケーションをとっていくのは面白い事なのかもと思うようになりました。監督に寄り添う――緊張感のある関係性のなかでも、もう1歩踏み込んでみる。そういうことをしてみてもいいのかなと感じるようになりました。
役所:監督をやらせてもらった後、俳優としての生き方、取り組み方に影響したのは“スタッフから見ている俳優の存在”ですね。例えば、現場に俳優さんを招くまでに、非常に多くの時間が割かれていますよね。脚本作りから打ち合わせを経て、準備が整った段階で、俳優はようやく現場へとやって来る。だからこそ、スタッフの皆さんは、俳優に対して「一体、何をしてくれるんだろう」と期待感があるわけです。これだけ期待されているところに行くわけですから、スタッフ同様に一生懸命やっている俳優にならなければいけない。それは監督をやってみないと、わからないことだったかもしれません。今まではちゃらんぽらんに「おはようございます!」と言っていたのかも……と反省したりしましたね(笑)。
画像12永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵
――今後、監督業に挑戦されることはあるのでしょうか?
役所:ロケハンをしたり、台本までこぎつけたものもあったりはしたんです。そういうものが2本くらいはありましたが、結局成立はしませんでした。お金の問題が大きかったですね。低予算でやればいいんでしょうけど……犠牲になるのは、スタッフとキャストですから。あまりにもお金をかけないのは違うなと。映画作りは、難しいですよね。
――永山監督は、いかがでしょうか?
永山監督:今のところは……。今回の「ありがとう」という作品は、役所さんとの打ち合わせ、ロケハン、衣装合わせなど、初めてのことばかりでした。撮影も編集も、その全てが楽しかったんです。「監督って、中毒性があるな」と思ったくらいです(笑)。自分の好きなもの、愛するもので作り上げた作品。よく舞台挨拶の場で、映画監督が「自分の子どもが巣立ってしまうような気持ちだ」と仰ってることがありますよね。正直に言えば、これまではその思いがわからなかったんですが……今回、その感覚がようやくわかりました。
画像13永山瑛太:スタイリング/壽村太一、ヘアメイク/七絵 役所広司:スタイリング/安野ともこ、ヘアメイク/勇見勝彦(THYMON Inc.)

【番組概要】
「アクターズ・ショート・フィルム2」
2月6日午後5時~ WOWOWで放送・配信
監督:青柳翔玉城ティナ千葉雄大永山瑛太前田敦子(※五十音順)
主演:村上虹郎琉花奥平大兼伊藤沙莉千葉雄大役所広司柳英里紗三浦貴大(※監督の五十音順)
番組オフィシャルサイト:https://www.wowow.co.jp/movie/asf/
番組公式Twitter:https://twitter.com/asf_wowow
番組公式インスタグラム:https://www.instagram.com/asf_wowow/

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