俳優・川岡大次郎が映画祭をプロデュースする理由
2022年1月3日 13:00

俳優の川岡大次郎が、栃木県那須塩原市で「なすしおばら映画祭」を実現させるべく奔走し、紆余曲折を経ながら2021年11月27、28日にフォーラム那須塩原での開催に漕ぎ着けた。青木崇高、ムロツヨシら多くのゲストが来場し、盛況のまま幕を閉じた同映画祭だが、大阪出身の川岡がなぜ那須塩原での開催にこだわったのか、その理由に迫った。(取材・文・写真/大塚史貴)
「サマータイムマシン・ブルース」「UDON」(ともに本広克行監督)など、映画やドラマで活躍してきた川岡が那須塩原に接点を持ったのは、16年にさかのぼる。テレビ朝日の番組「イチから住 ~前略、移住しました~」の企画で16~17年、約4カ月間にわたり同市で移住生活を送ったことが、現在まで脈々と繋がっていることになる。
■那須塩原移住企画は僕の中では本気だった

「周囲の方々は、もしかしたら『俳優が番組で来たよ』みたいなノリに見えたかもしれませんが、僕の中では本気だったんですよ。30代後半という時期で、人生の次のプランを考えるタイミングでした。本気でこの街が好きになったし、この街で暮らす人たちの温かさに触れることが出来た。家族のように食事をし、酒を飲み、年越し蕎麦も一緒に食べたり…というお付き合いをさせてもらって、この街には必ず帰って来なければ! と思っていました」
そんなタイミングで、さぬき映画祭をプロデュースし大成功に導いた本広監督を街に招き、意見を聞いたところ「この街、最高だよ。ご飯も美味いし、観光する場所もあるし、東京からも近い。ポテンシャルだらけだよ」と絶賛されたという。
「当時は、どこかに『本広さんがここでも映画祭をやってくれるのかな?』という考えもあったんです。そうしたら、市の方々がいらっしゃる場で『大次郎を大使とかにして、ちゃんと取り組んだ方がいいですよ』と話をしてくれて……。そこから、自分がやるべきなんだという自覚が芽生え始めました。市の方でも『まちづくり大使』(17年11月)に任命してくれたんです」
■母が亡くなり帰る場所がなくなった

もうひとつ大きなきっかけとなったのは、川岡がプロデュースし、那須塩原市でほぼ全編を撮影した短編作「HELP!!」(田中佑和監督)が、さぬき映画祭2018の「さぬきストーリー・プロジェクト」で第1位に選出されたことにある。
「さぬき映画祭に那須塩原市の方々が視察に来ていて、あの受賞の瞬間を見てくれたことが大きかったですね。大きな会場で行われたクロージングセレモニーの盛り上がりに、映画祭の持つパワーって凄い! 大次郎が作った映画が1位になった! と肌で感じてくれて、そこから街の方々も本気になってくれました」
また、大阪で暮らしていた川岡の実母が時期を前後して他界したことも、様々なことに思いを馳せる契機になったようだ。
「僕は一人っ子なので、母が亡くなったことで故郷がなくなったわけです。大阪出身と言っているけれど、もう帰る場所はなくなったんだな。正月に紅白見ながらすき焼き食べて……みたいな光景がなくなってしまったんだなと。そんなこともあって、那須塩原を故郷にしたいという心の使命感みたいなものが生まれたんです」

そこからの奮闘ぶりは言うまでもないが、必ずしも順調だったわけではない。19年11月30日のトライアル開催を経て、20年にいよいよ第1回開催となるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により開催日時を21年3月に延期したうえで、オンライン開催に変更を余儀なくされた。ようやく21年11月に劇場上映とオンライン上映のハイブリッド開催という形で、実質的な“第1回”が結実したことになる。
川岡の熱意に応える形で、今回の映画祭には、かつて現場を共にした“同志”たちが忙しい合間を縫って協力を惜しまなかった。映画祭クロージング作品用に製作された長編作「川のながれに」(杉山嘉一監督)には、川岡がNHK大河ドラマ「龍馬伝」で共演した音尾琢真と青木が友情出演を快諾し、28日に上映された「マイ・ダディ」(金井純一監督)に主演したムロツヨシは、サプライズで那須塩原入りして舞台挨拶に登壇。ムロとは、「サマータイムマシン・ブルース」で共演して以来、友情を育んできた。
■俳優仲間たちの思いに「なんか泣きそうになってきた……」

「本当に痺れますよね。やばい、なんか泣きそうになってきた……。皆さん、気持ちだけでやってくれているので、感動しますよね。めちゃめちゃ忙しいのに、こうして来てくれるわけですから。かつて現場で、俳優として一緒に戦ったっていう自負があるんですよね。当時の自分が持っている最大限のものを出して全員で戦ってきましたし、オンの時も、オフの時も、すごく気持ちの良い人たちばかりだから『大次郎が映画祭をやるのなら!』と言ってくれて、本当に感謝しかありません」
同志たちの思いに応えるためにも、継続して映画祭を開催することの意義を川岡は説く。と同時に、継続することの難しさについても。

「コロナの影響もあって、これまでスポンサー集めや民間に協賛金を募ったり……という動きが出来ませんでした。今回はまず、ひとつ形にして那須塩原の市民の皆さん、企業の皆さんにも知ってほしいという思いでやってきました。クラウドファンディング、ふるさと納税などもありますが、きちんとスポンサーを募って継続するための仕組み作りをしていかなければなりませんね。製作した長編『川のながれに』は22年中に全国のミニシアターを回らせてもらって、劇場公開が出来たらなと思っていますし、そこで収益があがれば次の映画祭の予算に組み込みたいとも考えています」
「会場でお客様の姿を見ていて、やっぱり劇場での開催にこだわって良かったという思いが湧き上がってきました。舞台挨拶の待機中の監督同士が交流している姿などを見て、『これが映画祭だよ! やっぱり生でやらないといけないんだよ!』って。それに僕たちからしたら、映画祭って晴れ舞台だし、ご褒美みたいなもの。本当に“祭り”なので、この瞬間に報われるものがあります。ほかにも、『宇都宮でもやって! 一緒に手を組みませんか?』と会いに来てくれる方もいらっしゃって。県の皆さんで手を繋いで連携できたら、すごく素敵じゃないですか。そういうのってメールやSNSではなく、ちゃんと顔を合わせて、目を見て話すことで動き始めるものだと思いますから。課題は山積みですが、まずは無事に開催できて感無量です」

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