新海誠監督、最新作「すずめの戸締まり」にコロナ禍の“願い”こめる
2021年12月15日 19:08
日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描くロードムービー。新海監督は「ロードムービーですから本来であれば、(ロケハンのために)全国各地に行きたかったが、それもコロナ禍でできない状況。当たり前のことが、当たり前にできるようになればいいなという願いはこめている。渇望にも似た気持ちが、お客さんにも届けばいいなと思う」と話していた。また、「登場人物がマスクをするかしないかも迷った。(コロナを)連想させるものがなくはないが、マスクはほとんどしていない」と明かした。
最新作「すずめの戸締まり」について、「日本列島をめぐるロードムービーである」「扉を開くのではなく、閉じていく物語」「映画館に足を運ぶ理由になるような作品づくりを目指す」という3つのポイントを挙げた新海監督。プロモーションで全国各地を飛び回った経験を踏まえ「ファンの皆さんに『次は僕の町、わたしの町を舞台にしてください』とよく言われた。今回はちょっと欲張り、さまざまな風景と人々、特別な出会いを描いている」と説明した。
また、「どんなことでもそうですが、何かを始めるよりも、終わらせるほうが難しい」と語り、「今作るべきは、可能性を開くことではなく、散らかった可能性を見つめて、ある手段で閉じることで、本当に新しい場所を今作るべきじゃないかと思った」と作品のテーマ性に言及。「新しい土地を開くとき、地鎮祭が行われるが、各地でさみしい風景が増えるなか、その逆は何だろうと。ヒロイン主導というよりは、まずは『戸締まり』という発想が先にあった」と振り返った。
配信全盛の時代にあって、劇場公開へのこだわりも強く「感情移入する、物語に没入するという人間が持っている特別な能力が発揮される場所が映画館だと思う。配信もそうかもしれないが、劇場に足を運んで暗闇で集中することで(特別な能力が)強く引き出される」と強調。「そういうことが実現できる絵づくり、音づくりをしている」と自信を示した。
作風に関しては「ヒロインが戦うアクションムービーでもある。それも今までとは少し違ったアクションが盛りだくさん」と明かした他、「君の名は。」「天気の子」との関連付けを問われると「アベンジャーズ的なものを期待されるファンの方もいらっしゃるが、そこはそんなに……。過去のキャラクターが登場するかはわからない」と“ユニバース展開”については明言せず。「アニメーションは総合力。ほかでは見ることができない、力のあるアニメーションを届けたいと思っている」と完成への強い思いを語った。
会見には「君の名は。」の上白石萌音(宮水三葉役)、「天気の子」の森七菜(天野陽菜役)が駆けつけ、すでに鑑賞したビデオコンテの感想を「めちゃくちゃ面白いです。圧倒されましたし、ストーリーにも魅力がある。これまでの新海イズムを保ちつつ、新たな扉が開かれたようで、ゾクゾクした。明るい明日を信じたくなる、前向きな終わり方」(上白石)、「ゾクゾクして鳥肌が。悩み事が増えていて、その解決法がわからないときもあるけれど、心と心がぶつかれば、どうにか結末はまっている。扉の開き方を教えてくれた」(森)と興奮しきり。新海監督によると、現時点で声優オーディションは始まっておらず、上白石は「さっき、七菜ちゃんに『(オーディション)受けない?』って」。これには新海監督も苦笑いだった。
「すずめの戸締まり」は、2022年秋に全国東宝系で公開される。
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