心を病んだ母に抑圧された女性の危うい性を描く問題作 佐津川愛美主演、榊英雄監督「蜜月」22年春公開
2021年11月2日 10:00
「MOTHER マザー」など一貫して社会的抑圧や差別を題材にした作品を生み出した脚本家・港岳彦によるオリジナル脚本。「捨てがたき人々」など、これまで社会の片隅で生きる男たちを描き定評のある榊英雄監督が、7年越しに取り組み、リアルな親としての感情をぶつけ、“家族の愛”という新境地を切り開いた。人間の心の暗部をあぶり出し、R15+指定となった衝撃的な描写で観客を挑発、社会に問題を投げかける問題作だ。
母親は、離婚し心を病んだ。娘の美月は激しい母親の抑圧の中で、子どもながらに病める母を支え必死に生きてきた。母が新たな伴侶を得て、四人家族となったとき、美月は、やっと温かな居場所ができることを期待したが、母は美しい17歳に成長していた娘、その「女という性」に対し嫌悪・嫉妬し、性的に抑圧する。美月はそれでも懸命に家族の温もりを求めるが、しかし愛を知らない美月の愛し方が家族を壊していき、ついにはある事件が起こる。そして15年の年月が流れ、美月は夫と穏やかな暮らしを得たものの、義弟が母の死を告げ、隠された秘密が明らかとなる。
ヒロインを演じたのは、自身の監督作を発表をするなどマルチに活躍する佐津川。傷つきながらも愛を求め疾走する17歳、秘密を抱えながら夫と支えあう32歳、過酷な家族環境下、懸命に生きる一人の女性の成長という難役を見事に演じきった。榊監督がこれまで家族の問題として隠されてきた問題を、社会問題として捉え、現代家族が抱える闇をえぐる、重厚な人間ドラマかつ極上の社会派エンタテインメントに仕上げている。2022年春テアトル新宿ほか全国で公開。
■榊英雄監督
10年前に産み落とされた脚本と出会った時に
歪で闇の深い子供でしたが、何か気になり
どうしても育てたいと感じました。
自分なりに頑張りましたが、もう駄目だと思った時に
佐津川愛美という伴侶と出会いました。
でも子供は中々意固地で意地悪で、心を開いてくれませんでした。
私は途方に暮れかけましたが、佐津川の献身的な愛に漸く心を開いてくれました。
「美月」という名前の女性に成長しましたが、私は不安です。
佐津川と「美月」の親子がいい関係であれば或る程、私は怖いのです。
いつか彼女らに嫉妬し、家族を破壊してしまわないか。。
我々スタッフキャストが懸命に献身的に愛を注ぎ込んだ「美月」を何卒よろしくお願い致します。
映画館の暗闇の中こそに、この家族の物語があぶりだされると信じて。
皆様の光で。
撮影まで4年かかりました。
静かに待ちながら、常に彼女が気になる。
突然自分の人生に入り込んできたようでした。
時間が経つほどにどんどん存在が濃くなっていく。きっと、彼女はそういう人間なんだと思います。
どこに惹かれたのか、未だにわかりません。
港さんの作り出した世界にいる彼女をただただ演じたい、心の底からそう思いました。
辛いシーンを超えるたびに私は現場で愛を感じていました。頼もしい共演者、スタッフのお陰で、ひとりぼっちではありませんでした。
だからこそ、ひとりぼっちだった彼女を演じ切れました。
もがき苦しんで生まれたこの作品を、榊組で完成させられたこと、役者として誇りに思います。
どうかこの家族が、スクリーンの先に居る「美月」に届きますように。
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