遠藤雄弥&津田寛治「映画という共通言語が言葉の壁を越えた」 「ONODA 一万夜を越えて」フランス人監督のもとカンボジアでの撮影秘話
2021年10月9日 10:00

太平洋戦争終結後も任務解除の命令を受けられず、約30年間フィリピン・ルバング島に潜伏、1974年に51歳で日本に帰還した小野田寛郎氏の物語を基に、フランスの新鋭アルチュール・アラリ監督がフィクションとして映画化した「ONODA 一万夜を越えて」。フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・日本合作で、メインキャストは日本人、ほぼ全編日本語で、約4カ月間カンボジアにて撮影された。“最後の日本兵”と呼ばれ、社会現象を巻き起こした実在の人物を演じること、過酷なジャングル生活の日々を海外ロケ、外国人スタッフとともに撮り上げたことは、どのような経験だったのだろうか。オーディションで選出され、主人公・小野田の青年期を演じた遠藤雄弥、成年期を演じた津田寛治に話を聞いた。

映画の中の20代の小野田はコンプレックスの塊です。もちろん、当時の日本は国のために命を捧げる……という思想がベースにあって、それを諏訪敦彦監督が演じる実の父親から、祖父の小刀を渡され、捕虜になったら「自害しろ」と言われる。また、高所恐怖症のために、憧れていた飛行機乗りになれず、優秀なお兄さんと比べられるジェラシーなど、複雑なコンプレックスがあったのだと思いました。それでお酒に溺れるようになった彼が、イッセー尾形さん演じる谷口少佐という人物と出会い、実の父よりも父性に富んだ谷口にすがるように心酔していく。そんな谷口に連れて行かれた陸軍中野学校二俣分校で、コンプレックスの塊だった青年が「君たちは特別なんだ」と教えを受ける……。
津田さんが演じる成年期まで、ある種の一本筋の通った、いろんな感情があり、迷いがある中でもああいう形の人物像に至ったのだと思います。柔軟性と羞恥心もあるのだけれど、自分のコンプレックスがさらけ出てしまう瞬間があったり、仲間たちの前でも吐露する場面があったり。その若い小野田の微妙な感情の機微をアラリ監督と探していきました。

そして、その視点が日本の監督だったらあり得ないのかなとも思いました。やはり、日本人だといろんなものを背負わなくてはいけないですし。そういったところではない部分を描くところがめちゃくちゃ面白い。遠藤君たちが仲間たちの絆であったり、どのようにジャングルに潜伏するようになったのかきっちり表現していただいた後で、僕のパートは前半に小塚役の千葉哲也さんとの絡みはありますが、たったひとりになったところをしっかり演じなければいけない。僕はよく瞑想をやるのですが、その心境に近かったです。フランスの若手監督が、日本人の心の芯にある瞑想や禅、みたいなところに行き着いている感じが興味深くて。台本のある個所のト書きでは「緑と同化している小野田」と一行ありまして。これは、もう無の境地に至った小野田さんかなと(笑)。だから、日本のことをちゃんと理解されている監督だと思いましたね。
その後日本で、小野田さんの本を読んだりして役作りの準備する中で、監督にメールで、「読んだ方がいいものはありますか?」と尋ねたら「台本以外は読まないでくれ」と。だから、監督は小野田寛郎さんという人物を忠実に描きたい、という思いではなかったので、それで楽になりました。ただ、衣装部さんや美術部さんたちの再現の仕方は半端ではなかったです。例えば、服の縫い目の一つ一つまで写真を見て研究していました。そういう部分で史実的なところはリアルに説明できているから十分だと思いました。

肉体的な役作りについては、僕が演じた時代は、どれだけベルトを締めてるんだろう……って思うほどめちゃくちゃシュッとした小野田さんの姿が写真で残っているので(笑)。しかもガリガリではなく、筋肉がしっかりした細マッチョに作り込まなければいけませんでした。監督に途中経過の写真を送ったら「もうそれ以上痩せないでいいから、体に気を付けてくれ」という返事がきましたね。

また、近くにいる、カメラマンや美術さんの言っていることもお互いにわかるような気になりました。やはり同じものを作っていると言葉の壁を越えるんだなと。だから、撮影が終わるときはさみしいくらいでしたね。カメラマンも、録音さんも、スタッフ全員のキャラが立っていて。本当に楽しかったです。遠藤君たちはほかの日本人キャストも一緒で絆が深そうでしたが、僕は一人の時が多かったので、周りを見ていることが多かったんです。


(C)2021映画「ONODA」フィルム・パートナー(CHIPANGU、朝日新聞社、ロウタス)
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