【「DUNE デューン 砂の惑星」評論】SFジャンルとの連戦を布石に、ビルヌーヴはエピックの難山を制す!
2021年10月9日 22:00

「ブレードランナー 2049」(17)で偉大なカルトSFを拡張させた監督ドゥニ・ビルヌーブの新作は、大河SF小説の古典として誉れ高き「砂の惑星」の再映画化。1984年にデビッド・リンチによって実写大作となったが、5時間近い粗編集を半分に削られて物語に一貫性を欠き、自らも映画化を志したアレハンドロ・ホドロフスキーいわく「失敗作だ!!」と落胆(狂喜)させる結果となった。
恒星間航行をも可能にする生命維持香料「メランジ」の産出地である、砂漠の惑星アラキス。そこは残忍なハルコンネン家が支配していた。だが皇帝はアトレイデス家を新たな統治者となるよう指図し、両勢力の紛争をくわだてる。物語は特殊能力を操る女性教団ベネ・ゲセリットの血を引き、やがて宇宙に調和をもたらすとされるアトレイデス家の子息ポール(ティモシー・シャラメ)が、己れの使命に目覚めていくまでを描く。
ビルヌーヴ版はリンチ版のネガティブ要素を踏まえ、原作の前半部をすくい取り作品を構成している(そのため冒頭に出るタイトルは“DUNE PART ONE”)。だが驚異的なことに、登場人物それぞれの役割と世界観の詳述にほぼ全編を費やし、そのような半身の状態にありながらも、今回のバージョンは息を飲むほどの出来に仕上がっているのだ。
プロダクションデザインも予告編からはリンチ版と代わり映えしない印象を受けたものの、本編を通じて明らかになっていくそれは、哨戒船からコスチュームまで機能的かつパワフルな牽引力を有し、ひとつの空想世界を見事なまでに創造・可視化している。キャストもただ巨額の大作であることに比して豪華スターを並べたものではなく、各キャラの性格づけや容姿を的確に再現。これらがひいては映画が持つ、とてつもない説得性へとつながっていく。
なにより要となる砂漠のイメージは、かの「アラビアのロレンス」(63)を連想させ、ステラン・スカルスガルドのカーツ大佐(「地獄の黙示録」(79))を思わすハルコンネン男爵の役作りからは、本作が巨大イベント映画としてあらんとするテンプレが顕著に感じられる。新型コロナウイルス感染拡大の影響から、本作も配信による公開が検討されたが、あくまで劇場での上映にこだわった監督の意図と成果がここにある。妥協により意訳化されたリンチ版と違い、本作はまぎれもない「砂の惑星」として成立しているといっていい。「ブレラン2049」そして「メッセージ」(16)に次ぎ、ドゥニはまたひとつ、SFジャンルにおいて大きな爪痕を刻みつけ、エピックの難山を制したのだ。
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