原点回帰した“死のトラップ”はどうやって誕生した? 「ソウ」シリーズ新作の監督に聞く
2021年9月10日 14:00
スリラー映画「ソウ」シリーズの最新作「スパイラル ソウ オールリセット」が本日9月10日から公開された。完全なる新章となる今作は、過去シリーズと関係する登場人物は一新され、ジグソウの後継者を巡る物語をリセット。新しい“ジグソウを凌駕する猟奇犯”が登場する本作について、ダーレン・リン・バウズマン監督が語った。
地下鉄の線路上に宙吊りにされ、舌を固定された男に向かって猛スピードの電車が迫り、男は無残な死を遂げる。警察官をターゲットにしたゲームが始まり、ジークと相棒のウィリアムが捜査にあたる。主人公ジーク役と製作総指揮をクリス・ロックが務め、父のマーカス役でサミュエル・L・ジャクソンが出演している。
日本に4カ月滞在し、撮影した経験があるというバウズマン監督。インタビュー前には「日本撮影最高!」と優しく話しかけてくれた。
新しいシリーズ作品が出てくると、悔しいというか嫉妬にかられていたんです。またやりたいなと思っていたところに、本作の話が入ってきました。プロデューサーのマーク・バーグから電話がかかってきて、ニューヨークにいたのですが「ロサンゼルスに明日戻ってきて。あのクリス・ロックがミーティングしたいと言っているんだ」と言われました。
その後すぐロサンゼルスで朝食ミーティングに参加すると、そこにクリスがいたんです。ものすごくワクワクしていて、シリーズの世界感を熟知しているのが伝わってきました。大体、キャスティングの際に俳優さんと話すと「ホラー映画大好きです。ジャンル映画大好きです!」と口先だけでは言うのですが、クリスは本物でした。今生きているコメディアンとしては、ホラー好きはトップなんじゃないかと思っています。初対面の時は「うわー、スターが目の前にいる」という感じだったんですけどね(笑)。そんなクリスが「ソウ2」「ソウ3」の話をしてくれて、よく観てくれているんだなと思いました。そんな感じで朝食ミーティングは終わったのですが、その10分後にはプロデューサーから電話がかかってきて「クリスが監督は君に」と指名してきていると言われたんです。こんな嬉しいことはないという気持ちでした。
あれだけ存在感を放っている人なのに、ものすごく気さくな人ですよ。彼が関わってくれて、本当に良かったと思ったのは、「この作品には新しい血(雰囲気)を入れましょう」ということをかなり主張してくれたことです。「ソウ」シリーズには、はっきりと分かる爆笑するシーンは一切ないですが、あからさまなコメディにするわけではなく、ちょっと軽やかさを持たせたユーモアを散りばめましょうと提案してくれたんです。クリスが「ちょっとした笑いでも全然変わってくるから」と。
いつも“もっと良くなる、もっと良くなる”という意識でやってくれる方なので、それは見ててすごく関心しましたね。例えば上司と喧嘩するシーンでは、撮影した翌日に「もう一度やりたい」とクリスが言ってきてたんです。「どうしても」というのことで撮り直したら、(社内でみんなを敵に回している状況のシーンで)「お前らは俺がお前らの母親とヤったから、俺のことが気に食わないかもしれないけど……」というちょっとクスっと笑わせるアドリブで軽妙さをもたらしてくれました。
バディ役のジークを初登場させるシーンでは、麻薬捜査のシーンだったんですが、「これちょっと地味だね」という話になり、「もっと良くなるはずだからちょっと考えさせてくれ」と言ってきました。24時間後には彼から「これでこういうのはどう?」と提案をもらい、そこから「フォレスト・ガンプ 一期一会」に関するセリフが出てきたんです。あのセリフは、脚本に入っていたものではなく彼が付け足したものなんですよ。このシーンは「レザボア・ドックス」で、マイケル・マドセンがマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」の話をしているシーンのオマージュでもあります。
いろんなトラップを考えるインスピレーションとなるのは、妻ですね。世界一怖い人ですから(笑)。実際は会議室の中で話し合って色々決め込んでいきます。「場所はどうする?ガラス工場にする?そしたらこれは人の体を切り刻むトラップにする?じゃあどのように切り刻んで行くのか?」ということを美術部、SFX、衣装、メイクなど色んな部門長とブレインストーミングしていくんです。撮影が始まってからも変えていくので、今回は初稿で描きこんだものが何一つそのまま使われていません。もちろん初稿でもいいアイデアはありますが、実際に機能するのかというのが問題でもあるし、そのトラップが目的を果たす物なのかという事を考えなくてはいけないんです。
冒頭の地下鉄のトラップは“舌を引っこ抜く”というのが目的なので、地下鉄にぶら下がらせといて、フックで舌と唇に引っ掛けるものだったんです。でも、それだけでは彼が台から飛び降りたところで唇に亀裂が入るくらいの衝撃で、全然ダメだということが判明して、トングで引っこ抜く装置にするかと改案していって、最終的には万力のような物にしています。そういう風に、各所と連携しながらトラップは考えています。
また、このシーンは安全上の問題で使われていない線路でも許可が下りずロケ撮影ができなかったので、地下鉄を作りました。あのまま作るのは無理なので、パーツを極端にしてかなり長いトンネルに見せています。実際は、振り返れば向こう側を触れるセットなんです。VFXチームも素晴らしい仕事をしてくれて上手くいったので、ここが僕のお気に入りのシーンですね。
今回のトラップで意識したのは、“シンプルで原始的な物を作る”ということでした。確か「ジグソウ ソウ・レガシー」だったと思うのですが、レーザーカッターで切る、というような手がこんでいる仕掛けがありました。今回は、例えばワックスを顔に垂らしたいわゆる水責めのように、一目見れば「これはこういうことをする物なんだな」と観客に分かるシンプルさを心がけました。
そのシーンに関しては、クリスのアイデアで入れることになりました。ほかにも、オリジナルへのイースターエッグ的(監督の遊び心)な、細部まで見ればあれがオマージュかっていうのがわかるものが散りばめられています。
「ソウ」シリーズが成功している大きな要因は、舞台裏で同じ人がついている継続性があると思います。特殊メイクにしても、ずっと継続的にこのシリーズに関わってくれている人がいる。そしてチャーリー・クロウザーの音楽がある。最後のシーンを見てもらえればわかるが、オリジナルと同じ音楽を用いているんです。シリーズのファンが喜ぶようなディテールを細かく散りばめた作品になっているので、劇場で楽しみにしていてください。
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ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
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