エレクトロシーン黎明期の女性ミュージシャンの奮闘描く「ショック・ドゥ・フューチャー」 鬼才映画監督の孫、主演のアルマ・ホドロフスキーに聞く
2021年8月29日 21:00
エレクトロミュージック黎明期、1970年代後半のフランスを舞台に、新しい音楽の可能性を探る女性ミュージシャンを描いた映画「ショック・ドゥ・フューチャー」が公開された。男性優位の音楽業界で奮闘する主人公、アナを演じたのは、ミュージシャン・モデルとしても活躍する女優のアルマ・ホドロフスキー。カルト的人気を誇る鬼才、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の孫でもある。監督は音楽ユニット「Nouvelle Vague」のマーク・コリン、キーアイテムとして登場する日本製のリズムマシン「ROLAND CR-78」など音楽ファン必見の要素もちろん、70年代のレトロなインテリアやファッションも楽しめる良作だ。アルマ・ホドロフスキーが作品を語った。
実は、ほとんど知識がありませんでした。あまりよく聞くタイプの音楽ではないので、今回の撮影のおかげで深く知ることができて嬉しかったです。この手の音楽でそれまで聞いていたものといえば、クラフトワークやスーサイドの曲だけでした。でも、本作でこうしたエレクトロニック・ミュージックの誕生において女性が果たした重要な役割を知ったんです(※映画では女性電子音楽家たちへのリスペクトが示されるシーンがある)。彼女たちは1960年代にはすでにその道で真のパイオニアであったにもかかわらず、表だって評価されることはなかったのです。
撮影の前に演奏の練習をしました。監督のスタジオで練習をして、基本的なことを学びました。私にはミュージシャンの友人がたくさんいるのですが、その中には70年代当時の電子機器を使っているアドリアン・パローもいます。彼は1970年代のシンセサイザーの使い方を教えてくれました。この2人のコーチのおかげで、マスターしたとまではいかなくても、少なくともその仕組みを理解することができました。
私は昔から音楽が大好きでした。そのきっかけは、書くことでした。幼い頃からいろんな種類の文章や詩を書いていました。芸術家の家に生まれたので、アートに対しては特別な思いがありました。全ては可能なのだと、夢見ることをとがめられたことはありません。女優になりたいという思いはありましたが、それだけではなく、様々な方法で自分を表現したいと思っていました。いろいろな人と出会い、彼らは一緒に歌おうと誘ってくれました。そして、2011年にソロ活動を考えていたダビッド・ブダールに誘われ、バーニング・ピーコック(Burning Peacocks)を結成したのです。
エレクトロニック・ミュージックの境界線をどこに引くかにもよりますね。今では、エレクトロニック音源はアコースティック楽器に補足的に使われ、どんな楽曲にも登場します。私は、ジャンルをミックスするのが好きで、バーニング・ピーコックもいろんなジャンルの影響を受けています。エレクトロニクスとのつながりがあるとすれば、本作でも登場するCR -78の系列のドラムマシンの使用や、パソコン上でリメイクしたサウンドなどでしょうか。とはいえ、エレクトロニック・ミュージックそのものについては、氷山の一角しか知りませんでした。
家族や友人のおかげで、私にとってはすべて身近なものでした。私はこの時代が昔から大好きで、魅了されています。この時代に浸るのは2回目で、最初は 「La Vie devant elles」というTVシリーズでした。狭い空間での撮影は、少人数のチームで作業することで、仲間意識、助け合いの精神、共犯関係が生まれ、私たちは、まるでサマーキャンプのように団結していました。難しかったのは、一人で演奏することと、大声で独り言を言うことでした。簡単ではありません。でも、あの撮影以来、実は以前から家でもしょっちゅう声に出して独り言を言っていたことに気づきました。
映画でタバコを吸うシーンには要注意です。「彼女のキャラを表現するために、1本吸ってみせるのは悪くないアイデアかもね」と吸い始めるのですが、5テイク目には後悔する! これは1週間でがんになるようなアイデアでした。でも、タバコはこの時代の特徴ですよね。 今、こんな狭いところでタバコを吸う人はいないでしょう。本作では、それがリアルなタッチになっています。
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