西島秀俊&岡田将生「ドライブ・マイ・カー」に見出した“自分ではない感覚”を告白

2021年8月20日 15:43

第74回カンヌ国際映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞した
第74回カンヌ国際映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞した

第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を含む4冠に輝いた「ドライブ・マイ・カー」が8月20日、全国115館で封切られ、主演の西島秀俊、共演の岡田将生濱口竜介監督が東京・TOHOシネマズ日比谷での初日舞台挨拶に登壇した。当初は、キャストの三浦透子霧島れいかも参加予定だったが、三浦が8月16日に新型コロナウイルス感染者との濃厚接触の疑いが生じ(三浦自身のPCR検査の結果は陰性)、霧島は8月17日に新型コロナウイルス感染症濃厚接触者との接触があったため、安全を考慮し、舞台挨拶を欠席することとなった。

村上春樹氏の短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)に所収された小説を映画化。妻を亡くし喪失感を抱える、舞台俳優であり演出家の家福悠介(西島)と、ある過去を胸に秘める寡黙な専属ドライバー・みさき(三浦)の旅路が描かれる。

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舞台挨拶では、カンヌ国際映画祭脚本賞のトロフィーを披露。現物をまじまじと眺める西島と岡田。一方の濱口監督は、自らの胸の内を吐露した。

濱口監督「まずは村上春樹さんの物語がベースにあり、そして大江崇允さんと共に今までにない脚本を書くことができたという感覚がありました。ただ脚本は“映画ではない”んです。映画を見たうえで脚本賞を頂けたということ。この映画は、役者さんが発する言葉が、そのまま作品になっていると思うので、全員に贈られた賞なんだと思っています。むしろ、役者さんこそが物語。だからこそ、物語全体に与えられる賞というのは、本当にありがたいことだと思っています」

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本作における印象的な要素は“多言語演劇”。西島は「(各国から集ったキャストの)共通点としては、真っ直ぐな方が多かったです。作品、演技、監督の演出に対して、100%信じて向かっていく。毎日気持ちよく演技をしていました。豊かで喜びのある現場でした」と説明。演出家という役どころについては「濱口監督には『本気で演出をしてくれ』と言われていました。僕を通して、濱口監督の“目”で見る。僕が見ているんですけど、それは濱口監督が僕を通して演技を見ている。そう感じながら、演技をしていました」と振り返った。

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濱口監督は“多言語演劇”について「シンプルに演技をするための方法になるのではないかと思った」と明かす。「セリフの順番が決まっている演劇は、劇中のようなリハーサルをこなせば、違う言語でも成立する。その際に、相手の“声”を聞いたり、“身体”を見たりしていると、自然と演技が出てくるのではないかと。かえって、シンプルに演技が出来るのはないかと思っていました。全編を通して『シンプルに演技をし合う人々』を撮りたいと考えていたので、そのために出てきた設定です」と語っていた。

物語の鍵を握る俳優・高槻を演じた岡田は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、撮影が一時中断した時期を述懐しつつ「高槻という役を理解するために、その空いた時間がプラスに働いたんです。自分の中で確信めいたものがありました」と告白。初共演となった西島に関して「(家福は)演出家じゃないですか。だから、カットがかかった後、監督の顔をチラッと見るんですが、その次に必ず西島さんの顔をチラッと……(笑)。『僕の芝居は、今大丈夫だったのか?』とおふたりに確認している自分がいました。それくらい、西島さんは家福として現場にいらっしゃったんです」と思いを述べる。すると、西島は岡田についての印象を語りだした。

西島「本当に純粋な人で……こんな世界にいて大丈夫なのかなと思うほど。色んな大人がいるのに……(笑)」

岡田「僕、もう32歳です(笑)。10代とか、20代じゃないんです……」

西島「心配になるよ、本当に(笑)。経験を積んだタフな男性ですけど、常に繊細で脆い部分を感じる。でも、その内面はずっと持ちながらも、外側は強くいていただけたら、一ファンとしては幸せだなと思います」

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やがて、改めて作品の感想を問われた西島と岡田。2人の言葉からは、作品に対する確かな手応えが感じられた。

西島「『寝ても覚めても』に衝撃を受け、その前から思っていましたけど、改めて『すごい監督が日本に現れた』と感じました。そして『寝ても覚めても』から、もう1歩先に進んだ作品に参加できた。不思議な気分です。出演はしていますが、自分がそこにいるというよりも『作品の中に自分が映っている』という感覚。映っているのは、自分とは違う存在というか……。観客の皆さんの感覚と近いものがあります」

岡田「西島さんが仰られたように『(スクリーンに映っているのは)自分ではない』という感覚がありました。(出演作にも関わらず)お客さんとして見ることができているのは、初めての感覚。それと、少し縁を感じる出来事がありました。初めて台本を読んだのが、違う作品の地方ロケに車で向かっていた時のこと。車の中で芝居をすること――体がなかなか動かせず、言葉と表情だけでどれだけ見せられるのか。そういうことを考えながら、台本を読んでいました。そこから今日という日を迎えるにあたり、すごい体験をし続けた日々だったんだなと。本当に出演することができてよかったなと思っています」

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