【ホラー映画コラム】「屋敷女」82分という短いランタイムに、出来る限りの暴力と血のりを注ぎ込んだ傑作
2021年7月31日 21:00

Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「OSOREZONE」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は特別編として、OSOREZONE配給第2弾「屋敷女 ノーカット完全版」をご紹介。2007年の日本初公開時に、その凄絶な内容のために修正やカットを余儀なくされたフレンチホラーが、完全な形となって7月30日より公開。ホラーファンの方はお見逃しなく!
アレクサンドル・アジャ監督の「ハイテンション」、パスカル・ロジェ監督の「マーターズ」、ザヴィエ・ジャン監督の「フロンティア」とあわせて、フレンチホラー四天王の1作として知られる、アレクサンドル・バスティロ&ジュリアン・モーリー監督コンビが手掛けた超暴虐スプラッターホラー映画「屋敷女」。過激すぎるあまり修正を食らっていた本作が、遂にこの夏、完全無修正となり日本に再上陸する! 今回は、その素晴らしい機会にあわせて、今一度本作の魅力について紹介したい。
かつて交通事故で夫を失った妊婦のサラ。お腹の子だけは何とか一命を取りとめ、もう間もなく出産を迎える。そしてクリスマス・イブの日、彼女が家で一人過ごしていると、怪しい女性が訪ねて来る。サラは玄関先で適当に言い訳を付けて帰らせようとしたところ、その女性がいきなり激高!家の中に侵入しようと激しい攻撃を仕掛けてきた! 身の危険を感じたサラは警察を呼ぶが、いつの間にか女性は消えてしまっていた。だが、本当の恐怖はこれから始まるのだった……。
メインの登場人物は女性2人。舞台は家の中だけ。作りは非常にシンプルだが、その分、暴力と血飛沫に全力が注がれている。この映画、とにかく妥協が一切ない。ハサミを妊婦のお腹につきたてる。顔を切り裂く、目を刺す……。劇中で起こる暴力シーンはどれも凄惨極まりない。しかもそれを本作は全部ちゃんと見せちゃってくれるから恐ろしい。刺さると、切られると、人の皮膚や肉はどうなるのかを、これでもかとガッツリと描く。女が家に侵入してくる中盤以降は、ずっとゴア描写の幕の内弁当状態だ。サラはいきなり顔を切り裂かれて満身創痍。以降、ずっと血まみれのまま奮闘する羽目になる。たまに彼女の家に警察などが訪れるが、全員もれなく殺される。これはネタバレじゃないですよ。こんな状況にぽっと出で現れる奴らなんか全員が死に要員に決まってるでしょ! 一人一人が、全く異なる凝った人体破壊を見せながら死んでいくのが素晴らしい。女性2人の攻防だけでなく、彼らのおかげで殺戮成分もお腹いっぱいに味わえるので、観ているこちらからしたら非常にありがたい存在だ。

そんな死に要員たちの見せ場も盛り込みながら、全編に渡って、謎の女と妊婦の激闘が繰り広げられる。とにかく暴力方面において容赦がないうえ、主人公がお腹の中に赤ちゃんを抱えている状態のため、緊張感が尋常ではない。予定調和な展開は一切なく、観客はこの映画では何が起きてもおかしくないと思わされる。実際、想像をはるかに超える出来事が次々と起きてしまう。後半にかけては、妊婦側もやられっぱなしではなく、自ら武装して相手に戦いを挑む。こういった逆襲展開は他作品でもよく見るが、本作はその更に斜め上の展開を行く。もう、一周回って激アツ状態だ。陰惨さと爽快さの両方を極め、それぞれをギリギリの線で両立させているのが凄い。この絶妙なバランス感覚が本作を傑作たらしめている理由だ。プロット自体は非常に単純だが、それを最後まで飽きずに引っ張る為の様々な技が光っている。一見関係のない女性2人に緻密なつながりを持たせる脚本も素晴らしい。
また、本作を語るうえで、主人公を襲う女性を演じたベアトリス・ダルについても触れておかねばならない。一発で印象に残る独特の顔立ちに加え、その動作、容赦ないハサミ裁きなど、全てにおいて凄まじい演技を披露している。フレンチホラーにとどまらず、全世界のホラーの中でもトップクラスで強烈に印象に残るキャラクターを作り上げた。完全に狂ってしまってはいるが、その一方で格好良さも備えているのも魅力の一つだ。中でも、序盤で雨の降る庭先に佇みながらタバコを付けてサラを睨むシーンの格好良さといったら! 人間離れした見事な殺戮ぶりを見せつけると同時に、イラついたり、赤ちゃんへの愛情を見せるなどの人間臭さも露わにする。全てが異様で、同時に僅かな共感性も持たせる複雑な人物像を見事に表現している。彼女なしでは本作は成立しないと言える。

本作は、82分という短いランタイムに、出来る限りの暴力と血のりを注ぎ込んだ傑作だ。観客の痛覚をガリガリ削ってくる激しい展開は、今見ても全く色褪せない。やっぱり最高の映画だなあ。そして今夏、冒頭にも書いた通り、遂に本作が完璧な状態で日本に再上陸する。残酷すぎて思わず書くのも憚られる、あのショックシーンもモロ見えの状態に。全てがありのまま、暴力の原液状態となった最凶の「屋敷女」を目に焼き付けよう。
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