【「最後にして最初の人類」評論】音楽家が人類の儚さと希望を描く予言的SFを映像化 視覚と聴覚から宇宙規模の内省に誘う
2021年7月25日 18:00

「博士と彼女のセオリー」(14)、「メッセージ」(16)など映画音楽でもその名を知られる作曲家ヨハン・ヨハンソンの初監督長編作品で、遺作となった映像作品。その哲学的な考察で、スタニスワフ・レムらに影響を与えた、英国人作家オラフ・ステープルドンの同名小説のテキストをティルダ・スウィントンが朗読する。
20億年後の未来から、人間同士の殺戮や自然環境を破壊する過度な開発など、これまで人間が犯してきた愚行により滅亡が近づく現在の人類にテレパシーで語りかけるという内容だ。ヨハンソンによる、オーケストラの重層的な響きが宇宙的な広がりを感じさせる。
映像は第2次世界大戦で犠牲となった国民の追悼、社会主義プロパガンダを目的に建立された、旧ユーゴスラビアの巨大な記念碑「スポメニック」を、ヨハンソンが16ミリフィルムで様々なアングルで撮影したもの。不幸な人間の歴史の遺構とも言える異形の巨大モニュメントの数々は、ディストピアや未知なる星の要塞などを想起させ、そして、何かを象徴するような暗闇の中の緑色の光が時折現れる。
全編は約70分。文学、建築、映像、そして音楽という人類が生み出したそれぞれの芸術に没入できるミニマルな構成だ。映像を俯瞰するように眺め、音楽と語りに耳を澄ませると、作家が思い描く予言めいた物語、脈々と続いてきた人類史とともに、かつて西洋の画家が打ち立てた「我々はどこから来たのか 我々は何者なのか 我々はどこに行くのか」という問いが脳裏に浮かぶ。字幕を追わなくて済む吹替版があれば、なお良いだろう。
最後は緑の微細な光が、心臓の鼓動を思わせるリズムで点滅して終わる。遥けき彼方の人類へ思いを馳せ、ちっぽけな一個人としてではなく、宇宙の一員として与えられた魂をどのように生かすべきかという内省が深まる一作だ。
(C)2020 Zik Zak Filmworks / Johann Johannsson
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