惨劇、隠蔽、暴露……巨大医療汚職事件に端を発したスリリングな真実「コレクティブ」10月公開
2021年7月1日 12:00

第93回アカデミー賞国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門にノミネートされたルーマニア映画「Collective(英題)」が、「コレクティブ 国家の嘘」の邦題で、10月2日から公開されることが決定。あわせて、予告編も披露された。
本作は、ルーマニアを震撼させた巨大医療汚職事件に端を発した、フィクションよりもスリリングな現実をとらえたドキュメンタリー映画。「まるでリアル『スポットライト 世紀のスクープ』だ」とも評されており、命の危険を顧みず真実に迫ろうとするジャーナリストたちの奮闘を通じて、世界中のあらゆる国が直面している医療と政治、ジャーナリズムが抱える問題に真っ向から迫っている。世界各国の映画祭で28の賞を獲得。51ものノミネートを果たしている。
また、非英語映画でありながら、タイム誌が選ぶ2020年ベスト映画の第2位に選出。そのほか、ローリングストーン誌では第1位に選ばれ「惨劇、隠蔽、暴露。今年最高のドキュメンタリーだ」と最高の賛辞を得ている。米批評家サイト「Rotten Tomatoes」では満足度99%(6月28日時点)。2020年を代表する1作として、圧倒的な評価を得ている。早くから本作に注目している映画評論家・町山智浩氏は「間違った医療政策で人々が亡くなる。それは日本でも起こった。ただ『コレクティブ 国家の嘘』に感動するのは、新聞記者と大臣が事実を追及するからだ。それは日本では起こっていない」とコメントを寄せている。

2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ「コレクティブ」でライブ中に火災が発生。27人の死者と180人の負傷者を出す大惨事となった。やがて、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡。最終的には死者数が64人まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始め、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。
その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に。内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するのだが……。
予告編は、ライブ演出の花火が施設に引火し、一瞬にして壁を覆いつくすショッキングな場面で幕を開ける。被害者の親たちが投げかける悲痛な叫びや疑問、地道な取材を続けるジャーナリストたちと国の腐敗と対峙する厚生大臣が抱える葛藤などを活写。「我々は権力を妄信している」「メディアが権力に屈したら、権力は我々を虐げる」「医療は一部の人ではなく全国民のものだ」といった映画のカギを握る重要な言葉が飛び交い、現代社会に生きる人々への大きな問いかけも感じさせる内容だ。
「コレクティブ 国家の嘘」は、「トトとふたりの姉」のアレクサンダー・ナナウが監督を務めている。10月2日からシアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
(C)Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019
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