【独占インタビュー】小川紗良監督&小川未祐、小学生の少女から教えられたこと

2021年6月20日 09:00

取材に応じた小川紗良監督(左)と小川未祐
取材に応じた小川紗良監督(左)と小川未祐

女優、文筆家として活動する小川紗良の長編初監督作「海辺の金魚」が完成した。「ワンダフルライフ」や「誰も知らない」で知られるベテラン撮影監督の山崎裕とタッグを組み、鹿児島・阿久根で撮影した今作に主演したのは、「よこがお」「スペシャルアクターズ」への出演が記憶に新しい小川未祐。ふたりの小川が現場で何を目撃したのか、話を聞いた。(取材・文/大塚史貴)

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今作は、児童養護施設で暮らす少女たちの世界と心の成長を描いた人間ドラマ。未祐が演じる主人公は、母親が起こした事件が原因で幼少期から施設で育った花。高校卒業を控えた18歳となり、施設で暮らせる最後の夏を迎えていた。そこに8歳の少女・晴海が入所してくる。かつての自分を重ねた花は、晴海と過ごすうちにこれまでになかった感情が芽生えていく……。

ふたりを最初に取材したのは、2019年12月。同年8月下旬に鹿児島・阿久根でクランクインし、10日間の撮影を終えて仕上げに入っているというタイミングだった。その後、新型コロナウイルスの感染拡大により、現在までの約1年半がこのような日々になるとは、ふたりも想像していなかったはずだ。本編に映し出されている集団登校、校内での会話、電車移動など、マスクなしでは日常とはいえなくなってしまった光景が切り取られている。だからこそ、その日常を取り戻すまでは、ひとつひとつのカットがかけがえのないものとして観る者の琴線に触れていく。

1年半前の取材で、今作に参加しているベテラン撮影監督・山崎裕に過去の監督作を観てもらったところ「映画っぽいね」と言われたことに衝撃を受けたと、小川監督は明かしている。今回は本編完成後、山崎と答え合わせはしたのだろうか。

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小川監督「そうですね、『映画っぽいね』と言われたことで、今回は“映画っぽい”ものを極力省いて映画にしていこうという気持ちが強くあって、それは撮影から編集まで一貫してありました。去年、初号試写をしたあと、山崎さんが強くうなずきながら『映画でしたよ』と言ってくださった。20代というタイミングで、このベテランの撮影監督と一緒に作品を作ってきた意味があったなと感じました」

一方、未祐のほうは当初、伝えるべきことをストレートに口にする山崎に委縮してしまうこともあったようだ。

未祐「撮影最初の2日間くらいは、もがきながら考えこんじゃっていたんですね。そんなタイミングで、山崎さんから指摘されたことをどう処理したらいいのか分からなくて、当初は恐れながらやっていた部分が正直ありました。ただ、撮影が進んでいくにつれて、それほど多く言葉を交わしたわけではありませんが、お芝居をしているときの撮り方というのかな、なんだかすごく優しさを感じる瞬間がたくさんあって。後半へと進んでいくにつれて、もっともっと優しさを感じることができました」

小川監督「山崎さんって全然怖い方ではなくて、すごくチャーミングな方なんですよ。正直な方でもあるので、思ったことを口にされてしまうだけなんです。私やプロデューサーは脚本作りからご一緒させていただいていましたが、当時18歳でそこに立っている未祐ちゃんはビックリしたと思う。撮影2日目に未祐ちゃんの気持ちを置き去りにしているところがあるなと気づいて、改めて一緒に話し合ったりしましたね。山崎さんも対等に接してくださる方なので、未祐ちゃんがどう感じているかをお伝えしたら理解してくださいました。その日以降、現場の空気がぐっと変わって、みんなで探り探り撮っていきましたね」

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若手とベテランが模索しながら完成させた「海辺の金魚」は、清々しさとともに実に丁寧に作り込まれていることが随所にうかがえる。「いい子じゃなくても、抱きしめて。」というキャッチコピーも印象的だが、地元の子どもたちを集めて行ったオーディションで見出した、晴海役を演じることになる花田琉愛ちゃんとの出会いは、ふたりに鮮烈なものをもたらしたようだ。

小川監督「未祐ちゃんと初めて会った時もそうだったのですが、琉愛ちゃんは第1印象から惹かれるものがありました。目の強さ、芯の強さみたいなものが見える子だったので。オーディションといっても、みんなで遊んだだけ。それを見つめながら、『この子は出来るかもしれないな』って思いました」

このオーディションに端を発し、子どもたちと撮影期間を共にすることで心境に変化があったようで、撮影後には保育士の資格を取得したという。

小川監督「これまで子どもと関わる機会が全然なかったのですが、映画を通して子どもたちと触れ合った時間がすごく楽しかったんです。個性豊かで面白いし、触れ合うことで自分も楽しくいられる。疲れも、良い疲れに感じられるくらいに。そういった充実感があったので、子どものことをもっと知りたいなと思ったんです」

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共演者として対峙した未祐は、琉愛ちゃんを「人一倍勘の良い子」と感じ、試行錯誤を繰り返していったようだ。

未祐「まっすぐに向き合っていかないと、すぐに信頼を失っちゃうんですよ。撮影中も実際にそういう瞬間はあったんですが、そのあとちゃんと向き合って『ごめんね』って伝えれば、理解してくれる。すごく本質的な向き合い方から遠いところへ行っちゃってたなと気づかされましたし、教えてもらいました。私自身も救われることがたくさんあって、大変なシーンの時は何故だかずっと傍にいてくれたり、強く手を握ってくれたり……。理解してくれているのかなと感じる瞬間が結構あって、本当にかけがえのない時間を過ごすことができました」

小川監督「確かに、琉愛ちゃんの信頼をどう得ていくかというのは悩みながらやっていましたね。序盤は、小手先の対応をしてしまうこともあったんです。そういうのって敏感に思惑がばれてかわされちゃうんですよね。終盤の大事なシーンを撮る日、琉愛ちゃんに『今日は大変だと思うけど、花ちゃんと一緒に頑張ろうね』と目を見ながら話したら、ちゃんと伝わって存分に力を発揮してくれました。人間関係の根源的なことを、当時8歳の女の子から学ばせてもらいましたね」

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また、施設で子どもたちが自分の名前の由来を語り合うシーンは、忘れかけていた幼少期の原体験を思い起こさせてくれる。このシーンは当初、脚本にはなかったという。

小川監督「現場に出演者として、子どもたちの見守り役として、保育士さんたちがいてくださったので、ひとりひとりに聞いてくださり、子どもたちが自分の言葉で答えてくれました。その姿がすごく魅力的だなと思って。自分の名前の由来というか、名前ってすごく大きなことですよね。祈りが込められていて、一生使っていく親からの授かりもの。そこに込められた意味が、その後の歩んでいく人生に影響していくなと思って、名前の重みみたいなものを取り込みたくて入れたんです」

今作の主演女優である未祐には、どのような思いが込められたのだろうか。

未祐「私の名前は、お父さんがすごくロマンティックな人なんですね。未来の『未』に、救う・助けるという意味のある『祐』で、未来を助ける人になれ! って命名してくれたんです。落ち込んだりしているときとか、元気づけられますよ。『わたしは未来を助ける女なんだ!』って(笑)」

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本編が完成してから、当然ながら1日も早く作品を映画ファンに届けたいと思うのは、映画人ならば当然のこと。だが、予想だにしなかったウイルスの脅威が人々の時間を止めてしまった。新作映画の公開延期が相次ぎ、多くの映画館が休業を余儀なくされた。ふたりはその期間、どのようにして過ごしていたのだろうか。

小川監督「私は執筆活動を主にしていました。この作品の小説を書いていたというのもありますし、偶然にもコロナ期間中に執筆の仕事が凄く増えたんですね。もともと書くという行為は好きでしたが、撮影などがストップしたときに表現方法として出来ることが書くことだけでした。そこに注力してみたら、改めて書くことが好きだなと感じられた。これから30代に向けて執筆にも力を入れてみたいと思っています。いま、少しずつ色々な仕事に結びついているところなので、そこを広げていけたらなと考えています」

未祐「私は、歌を作っていました。文章を書いたり、絵を描いたりもしていたのですが、最も力を入れていたのは、歌を作り始めたということですね。いまも、自分の頭の半分くらいを占めている感じですね。いずれ形に? はい、頑張ります!」

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緊急事態宣言の延長に伴い、東京都な休業要請していた映画館などへの措置を午後9時までの時短営業に引き下げたが、それでも観客の人数は上限5000人かつ収容率50%以内に制限するように求められている。作り手たちは、映画館で上映されることを大前提として映画を作っている。ふたりにとって、改めて映画とは?

未祐「秘密基地……みたいな言葉が合うなと思ったんです。扉で仕切られていて、真っ暗で。あの空間の中は、余計なものを遮断できるというか。知らない人同士がひとつの空間に集まって、作品を楽しもうと思える場所じゃないですから。だから、秘密基地」

小川監督「こういう状況だからこそ、娯楽と言い張りたいですね。天邪鬼かもしれませんが、私にとってはずっと当たり前のものとして生活の中にあって、気兼ねなく映画を観に行き、気兼ねなく泣いたり、笑ったり、時には寝たりできるものだった。これからも、どんな状況であっても、そういうものであり続けてほしいという願いも込めて、ただの娯楽だと思いたいです」

(映画.com速報)

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