【「ジェントルメン」評論】20年ぶりの原点回帰は、より洗練された痛快さ、狂おしさでいっぱい
2021年5月6日 19:00

いざ本作に触れたなら誰もが上映中、心の中でこう叫ばずにはいられないはず。「ガイ・リッチーが帰ってきた!!」と。近年はかつてない規模のファンタジーやアドベンチャーへの挑戦が続いていた彼だが、この人の本領といえば、ロンドンの下町を修羅場に替え、ギャングに一攫千金のチャンスを与え、さらに言えば、絡まりすぎた糸を瞬時にバンッ!とほどいて見せる魔法のような豪腕ぶりにこそある。嬉しいことに今回はその全部載せ。まさに王の凱旋という言葉がふさわしい。
すなわち、簡単に表現するなら、熱狂的な人気を誇る初期作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(98)や「スナッチ」(00)路線への原点回帰とったところか。もちろん、同じことをそのまま繰り返すだけでは芸がない。二周目らしく、豪華俳優陣の演技はしなやかさを増し、しかもリッチー演出は洗練され、ブレがなく貫禄たっぷり。そもそも「コードネーム U.N.C.L.E.」(15)でカメオ的に登場したヒュー・グラントを、今回は語り部役として出ずっぱり、喋りっぱなし状態にするなんて、こんな贅沢な起用法、他にあるだろうか。
そして物語の柱を担うのは、アメリカ出身という設定で、不思議なほどの落ち着きと野性味を併せ持つマシュー・マコノヒーだ。長らく大麻ビジネスを切り盛りしてきた主人公は、そろそろ肩の荷を下ろし余生を楽しみたいお年頃。するとその権力の空白地帯を狙った有象無象が方々から顔を出し、なんとも賑やかで荒唐無稽な抗争劇がスタートする。
とにかく冒頭からノンストップで状況が二転三転し続けるので、うっかりしていると振り落とされそうな気もするが、そこはサービス精神旺盛なリッチー作品なのでご安心を。事態が混沌化するとコリン・ファレルが、お揃いのトラックスーツに身を包んだヒップホップ&アクション・チームを従えて現れ、細かいこだわりなんてきれいさっぱり吹き飛ばしてくれる。
要は弱肉強食。最後に落とし前をつけるのは誰かという話。と同時に、テーマは権力の移り変わりにも及ぶ。人生の潮目を感じた時、どう動くか。きっとハリウッドの隅々まで経験し尽くしたガイ・リッチーだからこそ、いま誰よりも自身の今後について深く思いを馳せているのだろう。その結果、彼は再びこの主戦場へと帰ってきた。以前と比べてジェントルに。しかしより激しく、気高く、狂おしく。まさに人生の新章突入にふさわしい覇気と小粋さに満ちた痛快作である。
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