【ホラー映画コラム】「マインズ・アイ」予算が無くても観る者を圧倒する超能力バトルは作れる!
2021年5月1日 21:00
Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「OSOREZONE」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は、食べ食べさんが「これからも追いかけていきたい監督の1人」とプッシュするジョー・ベゴスの「マインズ・アイ」をご紹介。
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1980年代のアメリカでは、政府が民間の研究所に予算を投じ、超能力持ちの人間を兵器として利用する計画が進んでいた。そして90年代初頭。強い念力を持つ男ザックは、道中で警官に絡まれた際に力を使ってしまったことで、念力を研究するスロヴァク博士に目を付けられてしまう。博士の目的はその力を自らに取り込み、最強の超能力者になること。やがて同じ力を持つ恋人がスロヴァク博士によって囚われていることを知ったザックは、彼女を救うため、そして陰謀を阻止するために立ち上がる!!
超能力バトルモノと聞けば、まずマーベルの「X-MEN」あたりを思い浮かべる方が多いかと思うが、今回紹介する「マインズ・アイ」はそっち系統ではなく、「スキャナーズ」マインド溢れるゴリゴリのバイオレンス特化型の作品である。

本作はインディーズ映画に近い規模で、予算があまりかかっていないため、超能力バトルといっても、光線を出すとか天候を操るみたいな派手な画を作ることは出来ない(多分元々そんなのは作る気すらなかったと思うが)。人や物を吹き飛ばす念力が題材となっているが、その能力単体の描写だけで迫力を出すのは中々難しい。そこを本作は、役者たちの「顔芸」でカバーした。
本作の登場人物が使う超能力はとにかく体に負担がかかる。人を殺すほどの力を放つには、自分も死ぬ勢いで力を込めないといけない。その設定によって、必然的に超能力者が戦うシーンは、決死の顔で相手を睨みまくるという絵面になる。この顔面の画力がとにかく凄まじいのだ。超能力者同士のバトルなんか、その映像だけ見てるとどっちの頭の血管が先にブチ切れるかを争っているかのよう。青筋という青筋を浮き上がらせながら全身をブルブルと震わせて、「ウアアアアアアアア!!!」「ウオオオオオオオオ!!!」と互いに全力で叫んで激しく力をぶつけ合う。この対決シーンは、下手なスペクタクル描写よりもよっぽど迫力がある。予算的な制限を逆手にとって、唯一無二の面白さを生み出している。この工夫とアイデアは流石という他ない。
超能力バトルの大部分を役者の顔面力で補いつつ、ここぞというところではインパクトのある特殊効果も炸裂させる。超能力を食らい続けて限界を迎えた相手がどうなるかというと、頭部もしくは全身が破裂する。この人体破裂描写が本当に見事な出来だ。限られた予算の殆どをここに突っ込んだのだろう。これは正しいお金の使い方だ。相手に全力で力を放ち続け、溜めに溜めに溜めに溜めて放たれる顔面破壊! 全身爆裂!! 一気に解き放たれる血しぶきと肉!!! 最早これは花火である。やられた相手の頭部がパカーンとブチ割れるシーンでは、思わず「たまや~!」と叫びたくなる。スキャナーズリスペクトを前面に出しつつ、残酷描写をアップグレードし、今までに見たことのない人体破壊を披露する。ただ影響元をコピーするだけでない、更にその上を行かんとする志の高さに感動する。
そんな素晴らしい本作を監督したのはジョー・ベゴス。彼は「人間まがい」で鮮烈なデビューを果たすとホラー映画ファンに一気に名を知られるようになった。続く2作目が本作である。その後も、実生活で味わった創作の苦しみと地獄を作品に全てぶつけた「ブリス」や、スティーヴン・ラング率いる退役最強お爺ちゃんたちがクスリで凶悪ジャンキー集団をブッ殺しまくる「VETERAN ヴェテラン」などの傑作を連発! 今ノリにノっている監督だ。「スキャナーズ」と「狼よさらば」を組み合わせたという本作を始め、どの作品も、レトロな空気を出して往年のジャンル映画にリスペクトを捧げつつも、さらに一歩踏み込んで自分の色を出している。これからも追いかけていきたい監督の1人である。
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また、主役を演じたグラハム・スキッパーの功績も大きい。ベゴス監督とは「人間まがい」に続いて、本作が2度目のタッグとなる。彼も本当に良い役者ですよ。ぽっちゃりした山田孝之とダニエル・ラドクリフを足して2で割ったみたいな見た目が最高に良いのと、何より必死な顔を作る演技がとにかく上手い。彼の顔面芸がなければ本作は成り立たなかった。スキッパーの渾身ブルブル力み顔のおかげで、本作の超能力バトルが非常に見ごたえあるものになった。直近では、ベゴス監督の「ブリス」に出演し3度目のタッグを組んでいる。独特の味がある名役者なので、これからも様々なホラーやバイオレンス映画に出演してほしいところだ。
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予算が無くても観る者を圧倒する超能力バトルは作れる。力の入れどころと工夫次第で、ここまで面白い作品を生み出すことができるのだ。才能が完全にスパークした「ブリス」や「VETERAN ヴェテラン」と比べるとまだまだ粗削りだが、ベゴス監督独特のセンスを骨の髄まで味わえる逸品。人体打ち上げ花火とともに、このパワフルな面白さを是非味わってほしい。
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