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佐藤健×武井咲、「るろ剣」に“帰ってきた”最高の瞬間

2021年4月23日 12:00

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仲睦まじく語り合った2人
仲睦まじく語り合った2人

足掛け10年に及ぶプロジェクトが、遂に完結する。人気漫画「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」を実写化した映画「るろうに剣心」シリーズが、第4作「るろうに剣心 最終章 The Final」(4月23日公開)、第5作「るろうに剣心 最終章 The Beginning」(6月4日公開)をもってフィナーレを迎えるのだ。

この2作で描かれるのは、「人誅編」「追憶編」と呼ばれる、原作屈指の人気エピソード。かつて伝説の人斬りだった緋村剣心(佐藤健)の壮絶な過去が明かされ、彼に恨みを持つ最恐の敵・雪代縁(新田真剣佑)との壮絶な戦いが描かれる。「決して人は斬らない」という“不殺の誓い”を立てた剣心は、最後にどのような答えを出すのか――。

今回は、「るろうに剣心 最終章 The Final」について佐藤と、剣心を傍らで見守り続ける神谷薫役の武井咲にインタビュー。和気あいあいとした掛け合いから、それぞれの役者の矜持が垣間見える発言に至るまで、どっぷり楽しんでいただきたい。(取材・文/SYO、写真/間庭裕基

画像2(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

――「るろうに剣心 最終章 The Final」において、おふたりが提案したアイデア等があれば、ぜひ教えてください。
武井:(佐藤に順番を譲られて)いやいや! 健さん、たくさん提案されたでしょ(笑)。
佐藤:私はまあ……しましたね(笑)。ただ、この質問をいただいたということは、武井さんが提案されたということを耳にしているはずですから、ぜひお先にどうぞ(笑)。
武井:えー!(笑) そうですね……。提案と直接的には関係ないかもしれないのですが、撮影前に大友啓史監督と久しぶりにお会いした際、私生活での私自身の経験を「今回の薫ちゃんに生かせるんじゃないか」と言っていただいたことが大きかったです。一番変化した部分でもあったから、力強く「いい!」と背中を押していただけて嬉しかったですね。今回は、剣心の過去を知った薫ちゃんが、「それ(過去)をどう受け止めていくか」がこれまでとは違った変化だと思います。そこで、大友監督とも話し合いながら、一緒に考えていきました。
佐藤:その際、何か具体的な提案などは……。
武井:いや、特に大きなものはなかったかな……。
佐藤:……。(黙って武井を見つめる)
武井:(佐藤の表情を見て)えっ、怖い!(笑) 次、健さんお願いします!(笑)
佐藤:(笑)。僕は一つ挙げるとするなら縁との最後の一騎打ちにおいて。どういう風に決着がつくか、どういう風にそのシーンを終えるかということは、色々とアイデアを出させてもらいました。あと、具体的に剣心が言うセリフも撮影のギリギリまで自分で考えて、「ここではこういうことを言いたい」と伝えましたね。大友監督はずっと待っていてくれて、ありがたかったです。
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――ジャンプフェスタ2021 ONLINEで公開された大友監督との対談映像の中でも、佐藤さんは「るろうに剣心 最終章 The Final」と原作の違い、映画ならではの帰結について語っていました。だからこそ、セリフもご自身で細部まで突き詰めていったのですね。
佐藤:和月先生にお話をうかがった際に「少年漫画として、縁との戦いの中で剣心が出した答えをちゃんと『言葉にする』ことに心血を注いだ」とおっしゃっていたんです。このエピソードは原作でもほぼ最終回に近いものですし、「いろいろな過去があったけれども、これから自分はこういう風に生きていきたい」を表明することが大切だったと。
もちろん原作のその考え方は素晴らしいと思います。ただ、僕は今回の戦い(「るろうに剣心 最終章 The Final」)で、答えを出すのではなく縁との“向き合い”を演じたかったんです。剣心自身の答えではなく、縁に対してどういった言葉をかけるか、どのような存在でいるかをメインに考えていきました。

――アクション面も、剣心と縁の一騎打ちは凄まじい迫力でした。
佐藤:まっけん(新田真剣佑)はアクションの経験は沢山あるけど「るろうに剣心」の現場の経験は初めてだったので、とにかく思い切って遠慮なくアクションしてもらえるような雰囲気や環境を作れるように心がけました。楽しかったですね。
――先の大友監督との対談映像では、「攻撃を避けるシーンでは、ギリギリで避けるのではなく、少し当たっているくらいが画的にギリギリで避けているように見える」と話されていました。この辺りにも強いこだわりを感じます。
佐藤:そうですね。僕としては避ける気持ちでいて、ただちょっと当たったほうが一番画的に映えると気づいたんです。ただ危険は伴うので、毎回集中して臨んでいました。
――大友監督の現場は集中力が求められるかと思いますし、常にどこから撮られてもいいように全身を研ぎ澄ませておく必要があるかと感じたのですが、いかがでしょう?
武井:確かに、どこから撮っているか、誰をどういう風に撮っているかがわからない状況なので、ずっと気を張っていましたね。
佐藤:僕個人としては、「こう撮られているからこうする」とかはあんまり意識していないので、大変だと感じることはなかったですね。逆に、自由にやらせてもらっていた印象です。大友監督は我々役者が自由にできる環境を与えてくれて、その中で生まれたものを良いアングルで切り取っていただきました。そういった環境のなかで何を、僕たちが生み出せるのか。そうした責任感は、他の現場よりも強く感じていました。
画像4(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

――大友監督が、「佐藤さんが衣装に袖を通したとき、5年の溝が埋まった」と話されていました。おふたりは、久々にこの衣装を着た際、いかがでしたか?
佐藤:僕は、どうしたらよりよくなるかということも考えていました。「Final」に関しては同じ衣装をずっと着ていますが、「Beginning」に関しては新しい衣装になるので、細かく提案はさせていただきました。袴の位置や丈の長さ、全体のシルエットなど……。「Final」は割とゆったりとしていますが、「Beginning」はソリッドに見えるように縦長になるようにしてもらいました。
武井:澤田石(和寛)さん(衣装デザイン/キャラクターデザイン)が作る衣装は、本来の着物の素材ではないんです。今回も新しく仕立てていただいたのですが、洋服で使うような冬物の素材だったので、重かったり固かったり、結構大変なんですよ(笑)。
佐藤:そうなんだ。着物の素材じゃないのは、初耳です。
武井:でもそれが「るろうに剣心」らしさというか、細部までこだわって作っているからこそ、着るだけで全く違う。袖を通したときに「帰ってきたな」と思いました。
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――前作から約5年ぶりの共演となりましたが、久々に顔を合わせた際の感触はいかがでしたか?
佐藤:クランクインは、赤べこで、みんなで牛鍋を食べるシーンでしたね。平和なところから始まったのが印象的でした。メンバーが揃うとやっぱり懐かしさを感じて「戻ってきたんだな」と思いました。
武井:私は、健さんに「髪形、それどうなの?」と言われたのをすごく覚えてます(笑)。
佐藤:初日、前髪がすごく短かったんですよ(笑)。
武井:5年ぶりなのに、そんなちょっとした変化も見抜くのは流石だと思いました(笑)。
佐藤:いや、変化というかただただ前髪が短くて……(笑)。
武井:(笑)。といった感じで、懐かしさももちろんあるんですが、すぐ馴染めたことが嬉しかったですね。「帰ってきた」に近い感覚でした。
――一方、佐藤さんが深く役に入り込み、緊張感が漂う瞬間も多い現場だったと聞きました。
武井:薫のシーンの撮影は合間合間に入っていて、現場の空気がリアルタイムでどうなっているのかがあまりわからなくて(笑)。そんななかいつもどおりに「おはようございます!」って現場に入ったら、全然そういう空気じゃなかったことはありました(笑)。健さんは本当にストイックに現場に入られていましたよ。
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――おふたりそれぞれは、今回新たに「これを心がけて現場に入った」といったものはありますか?
佐藤:5年ぶりではありますが、過去を意識しすぎてなぞったらダメだと思いました。続編で、同じ人間を演じているのですが、新たに剣心と向き合って、まっさらな新作を作るイメージでやっていました。全てのスタッフ・キャストが5年の時を経てレベルアップした状態で再集結しているから、同じことをやってもしょうがない。様々な進化を感じつつ、それぞれが自分のすべきことを全力でやる――。そんな信頼関係がありましたね。
武井:私は、こんなにも長い間同じ役柄を演じることは初めてだったので、どんな心持ちで行ったらいいのか、どんな準備をしていけばいいのかは正直何も分からなかったです(苦笑)。とにかく同じチームでまた作品を作ることができて、そこに参加できるという安心感と緊張感だけで現場に行っていましたね。
――改めて、お互いや演じたキャラクターに対して、どんな想いを抱いていますか?
佐藤:薫は、いい意味で物事を深刻にとらえすぎないですよね。そこが武井さんに合っていると思います。くよくよしないといいますか……。
武井:これ、褒められてます?(笑)
佐藤:どうしても周りのキャラクターがシリアスになりすぎるので。演じている僕たちもそうだし。そんななかで武井さんは明るく現場にいてくれるから、気持ちが軽くなるし救われますね。薫のキャラクターの魅力も、そういうところにあるように思います。
武井:確かに、自分でも「この空気に負けないように」と思っているところは正直ありました。大友監督も健さんも、ずっと台本と向き合って怖いくらい撮影しかしていないお二人だから(笑)。
佐藤:撮影しかしていない!(笑)
武井:撮影に夢中でしたね。だってずっと日が暮れるまで撮っているし、日が暮れてからも撮っているし……(笑)。「薫ちゃん、こんなところに飛び込んで大丈夫?」と思ったりするけど、とはいえ薫ちゃんを演じるうえで、剣心を思ってしている行動が拠りどころになっていたり、気づいたら家族になっていたり、そういう存在であれたらいいなと思っていたので、そう言っていただけてよかったです。
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――それこそ、「The Final」は「活人・活心」という薫を象徴する信念が、作品全体のテーマになっていきますね。
武井:そうですね。大友監督から作品全体のお話をお聞きして、責任は感じました。ただ、演じている瞬間は、「その時をどう生きるか」を大切にしていましたね。薫ちゃんが剣心の過去を聞いたときにどんな気持ちになるのか――原作漫画ではその結果が描かれているけれど、いかに新鮮に薫ちゃんの感情を引き出せるか、すごく考えました。そういった部分でいうと、薫が縁の部屋で寝かされていて、起きたシーンはぞっとしましたね。あんなに綺麗な部屋で綺麗なベッドで寝かせてもらって、でもそこには縁の姉である巴さんへの執着があって……。薫を殺すに殺せない、ぶつけたいけどぶつけられないという複雑な感情は、薫ちゃんもひしひしと感じていたのではないかと思います。
~あとがき~

インタビューの最後に、佐藤に「役者として、『るろうに剣心』以降に進む道は見えているのか?」と尋ねた。すると彼は「明確に見えていますね」とにべもなく答えた。「やりたいこともあるし、やりたいこと以外はやらなくていいと思っています。それを実現するために頑張っていく必要を感じています」と――。

「不殺」を貫く流浪人の人生を生き抜いた彼の次なるステージに期待したい。必ずや我々を驚かせ、熱狂させてくれることだろう。

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