エリック・ロメール特集上映「六つの教訓話」予告編、ビジュアル、濱口竜介らのコメント公開
2021年4月8日 13:00
「六つの教訓話」シリーズは、パリの街角や湖畔の避暑地、南仏のリゾートなど風光明媚なフランスを舞台に、二人の魅力的な女性と、そのはざまで運命の愛を求め悶々とする男、という図式で展開されるロメール初の連作。
ラインナップは、後にハリウッドでも「バーフライ」など映画監督としても活躍する、ロメールの盟友バーベット・シュローダー(仏語:バルベ・シュローデル)が主演・製作を務めた第1話「モンソーのパン屋の女の子」 (62)、ロメールの作風を決定づけたと言われる第2話「シュザンヌの生き方」(63)、ジャン=ルイ・トランティニャンが主演し、全米批評家協会賞脚本賞をはじめ各国で絶賛された第3話「モード家の一夜」(69)、以後ロメールとタッグを組む名カメラマン、ネストール・アルメンドロスが初めて手掛けたカラー作品であり、「フランス初のヒッピー映画」と称された第4話「コレクションする女」(67)、ルイ・デリュック賞はじめ各賞を受賞した第5話「クレールの膝」(70)、当時のフランスのヒッピーカルチャーを象徴する“ズズ”が主演、これまでのヒロインがカメオ出演したシリーズ総集たる第6話「愛の昼下がり」(72)の6作品。
併映する短編6作品は、20歳のジャン=リュック・ゴダールが主演した「紹介、またはシャルロットとステーキ」(51)、ゴダールのと共作コメディ「ヴェロニクと怠慢な生徒」(58)、日本初公開・未ソフト化のロメール自ら主演、トリュフォーが大絶賛した 「ベレニス」(54)、若かりし頃のロメールが徹底的に観察した女性たちのリアルな生の記録ともいえる「パリのナジャ」(64)、「ある現代の女子学生」(66)、「モンフォーコンの農婦」(67)。また、ロメールの長編デビュー作「獅子座」(59)の特別上映も決定した。
特集上映「六つの教訓話 デジタル・リマスター版」は、4月23日から5月20日まで、渋谷 Bunkamura ル・シネマにて開催。
エリック・ロメールほど一生を通じて「面白い」映画だけを作り続けた人はいない。面白い映画を探している人は皆、どうかまずこ の「六つの教訓話(道徳的コント集)」シリーズを発見していただきたい。しかし、これらの映画からどのような教訓を引き出すこともできはしない。誘惑に右往左往する男たちの姿に「道徳とは果たして何か」と宙吊りにされるのみだ。しかし、面白い映画というのはそもそもそういうものなのだ。答えは宙吊りにされ、私たちは永遠に誘惑され続ける。
初めてロメール作品を観たのは白黒映画を観るために名画座に通っていた時だった。言葉の通り、世界が色づきキラキラと全てが輝いてみえた。それから私はロメール作品に恋をした。物事の善悪ではなく、美しいから良いという、曖昧でシンプルな芸術の寛大さを、息の詰まる現代を生きる私たちにも教えてくれる気がする。
出てくる人みんな身に覚えのあるダサさがあって、しょうもな......と思うにつけ自分も痛い。彼らは話しているというより誰かに喋らされている。都会ってそういう場所だ。滑稽で、なんか気持ちいい。快感のあとは、疲れ。俺の心には風が木々を揺らす音、人気 のない浜辺の水平線、街を行き交う車のツヤツヤだけ残る。思い出の背景。いっぱい増やしたいよねと映画が言ってくる。
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