「旅立つ息子へ」自閉症の弟と父をモデルにした理由 脚本家が明かす
2021年3月30日 14:30
愛する息子ウリのためにキャリアを捨て、子育てに人生を捧げてきた元グラフィックデザイナーの父・アハロン。田舎町で暮らしてきた2人が引き離されることになり、アハロンはウリを連れて逃げることを決心する。
脚本を手がけたイディシスは、イスラエルのテレビシリーズ「On the Spectrum」の企画・脚本を手がけ、世界の優れたテレビ番組を紹介する国際コンクールのモンテカルロ・テレビ祭で最高賞に値するゴールデンニンフ賞を3部門受賞(最優秀テレビコメディ・シリーズ賞、コメディ部門女優賞、男優賞)している。
物語のキーとなるチャップリンの「キッド」について、イディシスは「子どもの頃、私は兄弟とビデオでチャールズ・チャップリンの映画ばかり見ていました。ほんの数分で映画の中に引き込まれ、チャップリンは私たちのヒーローになっていました。大人になった今でも弟だけは、毎日のようにチャップリンの映画を見ています。特に見ているのは『キッド』です。弟がこの映画に愛着を持っているのは偶然ではありません。彼と私たちの父との特別な関係が、間接的に描かれているような映画でもあるのです」と、実際に思い入れ深い作品だと語る。
弟と父をモデルにしたことついては「言葉がなくても理解し合える2人は、現実から離れて、まるで大きなシャボン玉の泡の中で生きているように見えたのです。時には父親の過保護が過ぎることもあります。この2人をモデルにしたのは、特別だけれど今しかない2人の関係と世界観を伝えたかったからです。父と弟の別れの瞬間が来たとき、どうなってしまうのか……。その不安を皆さんにも感じて欲しいという思いがきっかけです」と打ち明ける。
最後に、本作のテーマについて「自閉症スペクトラムの子どもを持つ父親や、特別な支援が必要な難病を患う子供をもつ父親の苦闘を描いた映画ではありません。普遍的な父と息子の物語であり、必ず訪れる親子の別れの物語です」と、多くの人々に響く作品であるとアピールした。
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