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「大林賞」を受賞、インド出身の監督が日本で撮り上げた「コントラ」 後ろ向きに歩く男の正体は…?

2021年3月12日 15:00

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(左から)アンシュル・チョウハン、円井わん、間瀬英正
(左から)アンシュル・チョウハン、円井わん、間瀬英正

日本在住のインド出身監督アンシュル・チョウハンの「コントラ KONTORA」上映会と会見が3月11日、外国特派員協会で行われ、チョウハン監督と俳優の円井わん、間瀬英正が出席した。

大林宣彦監督の日本映画界での偉業を称え、北米最大の日本映画祭「第14回ジャパン・カッツ」で創設された「大林賞」を受賞した本作は、チョウハンが、モノクロームで撮り上げた長編第2作。祖父が大事にしていた第2次世界大戦の戦中日記を見つけた女子高生(円井わん)が、後ろ向きに歩く不思議な男(間瀬英正)と出会ったことをきっかけに小さな町で起こる波紋を描いた、ファンタジー映画。戦争の記憶と地方の鬱屈、経済格差や父と娘の相克といった日本の現代社会も浮かび上がらせている。

時空を逆走している、とも捉えられる、間瀬が演じる後ろ向きで歩く男の存在について問われたチョウハン監督。「youtubeで後ろ向きで歩くデリーの男の映像を見た」ことがきっかけだそうで、「彼には何か不幸があってそのようになったそうです。後ろ向きに歩くだけではなく、ノートを携え、見た車のナンバーを記入するのです。その姿が印象深く、当初はほかの映画に盛り込もうとしましたが、できなかったので、今作で使ってみようと思った」と明かす。

謎の男を演じた間瀬は、「戦争からよみがえってきたような男です。よみがえっただけでは記憶がおぼろげなところから、だんだん家族になじんで過去を思い出していく、ということを意識して演じました」と役との向き合い方を語った。

モノクロにした理由、長回しが多用されている理由についてチョウハン監督は「私の祖父と戦時中の兵士に捧げる作品にしたからです。祖父の写真は1枚しかなくて、それが白黒でした。リサーチ中に見つけたものもカラーではなかったので、白黒で撮るのが自然だと思ったのです」「後ろ向きの男が出ているからと言って変だと言われたり、ほかの人が気に入らないような反応を気にせずに、この映画は自分のために作ろうと思いました。皆、ほかの仕事を持ちながら撮影をしたので、なるべく無駄がないように、長い尺で撮っていき、トータルの尺も長くなった」と説明した。

女子高生の空(そら)を演じた円井は「モノクロになったことによって、映画の良さが引き立ったと思う」「14分の長回しもあって、役者としては素晴らしい経験で、その中で生きることができた。ほかの現場に行くと、もう切ってしまうの? と思ってしまうほどだった」と撮影を回想した。

外国人が日本についての映画を撮ると「日本の慣習や伝統に批判的な考えを持っているのでは? と受け止められませんか」と外国人記者から質問を投げかけられたチョウハン監督。「外国人の自分が、日本で映画を作ることに特に抵抗は感じていません。日本の何かを作ろうとしたわけではなく、(円井が演じる)高校生の役も自分の10代の気持ちを参照した。日本のために日本の映画を作るのではなく、自分のために作ろうと思った。ただ、第2次世界大戦を取り上げたことについては、疑問や意見を持たれる懸念はあった」と回答。そして、「パーソナルな動機で作り始めた作品ですが、完成して世界のいろんな場所からコメントをもらってうれしく思う。特に年長の世代から、戦争を扱っているということで反応をもらうことが多かったが、若い方々が知らない歴史にどう向かい合って考えるのか、いろんな人に見てもらいたい」と思いを述べた。

チョウハン監督のメッセージに続き、俳優陣も「私たちの世代は知らないことが多い。戦争を題材にしていますが、祖父たちが体験してきたことを後に伝えなけれればならない。それを知ることができるのが映画だったり、表現をする場だと思う。今後残る映画になれば」(円井)、「日本は戦争経験者が少なくなり、私は俳優として戦争の時代を演じていますが、この映画を通して過去の日本人に対しての弔いの気持ちや思いを、今の時代に生きる、円井さんが演じた空とそういった気持ちを感じていただければ」(間瀬)と呼びかけていた。

3月20日から、新宿K's cinemaほか全国で順次公開。

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