高良健吾が至った思いがけない境地「20代の頃の自分を抱きしめてあげたい」
2021年1月26日 13:00
俳優の高良健吾が、芸能事務所テンカラットの設立25周年を記念して製作された映画「おもいで写眞」に出演し、主演を務める深川麻衣の相手役として真っ向から対峙している。映画.comは富山県で撮影が行われた2019年7月、高良に話を聞いた。
熊澤尚人監督がメガホンをとる今作は、東京で夢に破れた主人公の結子(深川)が、故郷の富山で亡き祖母が遺した写真館で“遺影写真”を撮る仕事を始めるという設定。はじめは「縁起でもない」と嫌がった老人たちだが、思い出の場所で写真を撮る企画「おもいで写眞」に変えたことで、たちまち人気を呼ぶ。結子は老人たちとふれあう中で、次第に人生の意味を見出していく。
高良は、地元の役場で働く結子の幼馴染み・星野一郎に息吹を注いだ。高校時代に結子と付き合いかけるが、最初のデートで行き違ったことであっさりとフラれてしまう。その後は友人として交流を続け、夢破れて故郷に戻ってきた結子に老人向けの「遺影」を撮影するという仕事を持ちかける役どころだ。
作品の内容に思い当たることがあったそうで、「祖父が数年前に亡くなったんですが、残念ながらピンのぶれた遺影だったんです」と告白。さらに、「家族と『撮っておけば良かったね』という話をしていたんですが、これはそういう映画じゃないですか。そういう風に感じている方って多くいるんじゃないですかね。思い入れのある場所で撮影された明るい表情の遺影だったら、とてもハッピーじゃないかなって思うんです」と穏やかな面持ちで話す。
所属事務所の後輩である深川が主演として奮闘する様子に触れ、「かわいいですね。一生懸命だし、『どうやったら上手くなれるんですかね?』って聞いてきて……、そういえば僕も先輩たちに同じ質問をしていたなあって思い出しました」と振り返る。この撮影で、初めてきちんと会話をしたそうで、「後輩の女優が25周年記念映画で頭張っているんですから、みんなが支えるというわけではないですが、深川さんの良いところを生かせたらいいなあ……というような芝居になっています。相手のやりやすさを考えるようになりましたね」と思いやる。
所属事務所が設立25周年を記念し、映画を製作することについては「凄いことですよ。僕は途中から入った人間ですがめちゃめちゃ嬉しい。僕にとって、テンカラットってでかい存在なんですよ。うちの会社は、映画を作る事務所なんだ! ということが嬉しいですよね」と目を細めてみせる。
撮影の合間、公園のベンチに座りながら他愛もない会話を重ねていると、10数年前、高良がまだ20代前半だったころ、初主演映画「おにいちゃんのハナビ」のロケ地・新潟で取材をしたことを思い出す。
「あの頃と比べると、役の問題を自分の問題にし過ぎなくなったという感じがします。当時は自分の問題にし過ぎて、しんどかった。まだ楽しいとは思えない状況でした。いまは、以前よりは引きずられることなく、うまく距離感が取れるようになって楽になったとも思います。苦しまなくちゃいけないときは、自分からそっちの方に近寄ることもできますけど、わざわざ毎回そこに持っていく必要もない。役になり切れるわけがないんですよね。ただ、役として居ることはできる。そういう心境になったのは、本当にここ数カ月なんです。やっと自分らしく居られるのかなという気がしていて、20代の頃の自分を抱きしめてあげたい気分です」
かつては尖った役も数え切れないくらい演じてきた。その代表格が蜷川幸雄監督作「蛇にピアス」といえるが、共演した事務所の先輩・井浦新(当時はARATA)とは、その後も共演を続けている。今作では初共演を果たした香里奈との出会いを、高良は喜んでいる。
「香里奈さんとやれたのは大きかったです。すごく気持ちのいい人だし。現場の居方、視点が凄いんです。10代の頃からモデル、女優の最前線を走ってきた方だし、そこから学べることも多いんです」
所属事務所の先輩、後輩と真っ向から対峙するひと時を経て、自分らしさに磨きをかけた高良が放つ次なる一手に、否が応でも期待が高まるばかりだ。
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