【中国映画コラム】今際の国のアリス、チェリまほ、MIU404――2020年、中国で注目された日本発ドラマを教えます
2020年12月30日 17:00
北米と肩を並べるほどの産業規模となった中国映画市場。注目作が公開されるたび、驚天動地の興行収入をたたき出していますが、皆さんはその実態をしっかりと把握しているでしょうか? 中国最大のSNS「微博(ウェイボー)」のフォロワー数279万人を有する映画ジャーナリスト・徐昊辰(じょ・こうしん)さんに、同市場の“リアル”を聞いていきます!
2020年、映画・ドラマ業界は新型コロナウイルス感染拡大の影響によって多大な影響を受けました。しかし、テレワーク・リモートワーク、在宅での自粛期間が増えたことで、映像コンテンツに触れる機会も多くなったはずです。日本国内では、上半期に韓国ドラマ「愛の不時着」によって再び韓流ブームが起こりました。また、中国国内では、2021年1月にWOWOWで放送される「バッド・キッズ 隠秘之罪」をはじめとした社会派サスペンスドラマが立て続けにヒットし、社会現象を巻き起こしたんです。
そんな中、日本のドラマが中国本土で大きな話題を呼んでいます。当コラムの第21回「『半沢直樹』『坂の途中の家』『ポルノグラファー』日本発ドラマに秘められた世界進出の可能性」(https://eiga.com/extra/xhc/21/)では、中国における日本ドラマの鑑賞方法や人気作品を紹介させていただきました。今回は、ソーシャル・カルチャー・サイト「Douban」のデータベースに基づいて、2020年に中国で話題となった“日本発ドラマ”を語らせていただきます!
Netflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」は、約40の国と地域で総合TOP10入りを果たし、早くもシーズン2の制作が決まっています。中国ではNetflixを視聴することはできませんが、全世界配信日(12月10日)とほぼ同タイミングで海賊版が流出。元々Netflix自体に「中国字幕版」が存在していたため、今回は“字幕組”が翻訳する必要はありませんでした。
配信開始から2週間が経過すると、「Douban」では約4万人弱のユーザーが“見た”をチェック。点数は、8.1(10点満点)の高評価。「Netflixのオリジナル作品」という点が功を奏し、日本のコンテンツファン以外の人々にも注目されていたようです。
中国の映画ライターは「年末にこんな日本ドラマが出て来るとは思ってもいなかった。これまでの日本産ドラマと全く異なっている。これからの日本ドラマの可能性を感じました。さすが世界のNetflix!」と絶賛。一般ユーザーからは「『クイーンズ・ギャンビット』と同じぐらいの爽快感! 最高の作品!」「日本のドラマにも、こんなに面白いものがあるんだ! “げぇむ”の続きが気になります」「日本ドラマには『説教臭い内容』『中二病の主人公』がなくなりましたよね。これこそエンターテインメントですよ!」という声も。
鑑賞した人々は、作品の内容、演出について感想を出し合ったり、ディスカッションを重ねています。「今際の国のアリス」をきっかけに、日本ドラマが“さらなる進化”を遂げることを期待しています!
2020年、中国で最も注目された日本のドラマは何か――おそらく、多くの方々は「半沢直樹」(新シリーズ)と答えるかもしれません。しかし、この作品の存在も見逃してはいけません。テレビ東京の深夜ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(通称:チェリまほ)が、爆発的に流行ったんです。
当コラムの第21回でも言及していますが、中国では「男性同士の恋愛」「性的内容」を題材にしたドラマを制作することができません。そのため、中国の人々は同様のテーマを扱った海外ドラマをチェックし続けていて(海賊版を通じてですが…)、日本の深夜ドラマも度々話題にあがっているんです。「Douban」のデータによれば、「チェリまほ」を“見た”にチェックしたユーザーは10万人を突破。なんと9.1という超高得点を叩き出しています。
作品のクオリティが評価されることは言うまでもなく、キャストの赤楚衛二&町田啓太の知名度が中国で急上昇しています。11月28日に発売された赤楚衛二の写真集「A」は、中国国内でも早い段階で注目されていました。その結果、日本在住の中国人転売ヤーが早速動き始めるという事態に……。町田啓太は「チェリまほ」だけでなく「今際の国のアリス」にも出演しているので、既に中国国内では“超人気俳優”と言ってもいいでしょう。
「チェリまほ」以外に目を向けると、第21回のコラムでも紹介した「来世ではちゃんとします」、ABEMA SPECIALで配信されたドラマ「17.3 about a sex」もヒットとなりました。特に「17.3 about a sex」は「Douban」の点数が9.2。中国国内の性教育に不満を持っているユーザーが「『17.3 about a sex』は、もはや教科書だ! 中国の若者は全員見るべきです」という感想を投稿しています。
厳しい検閲の関係上「制作できない物語」が多く存在している中国。この状況が続く限り、“中国で大ヒット”となる日本の深夜ドラマが再び出てくるでしょう。
「半沢直樹」シリーズの新作は、アジア中で最も期待されていたドラマのひとつです。新型コロナウイルスの影響によって放送延期になったとしても、注目度はまったく変わっていませんでした。
11月5日からは、ビリビリ動画で中国独占配信をスタート。ですが、配信開始前、既に多くの人々が海賊版を鑑賞していたんです。「Douban」の点数は、2020年度における日本ドラマの最高得点9.4。日本ドラマという枠に留まらず、世界中で放送・配信されたドラマの中でも“今年の一本”として幅広く支持を集めています。
ちなみに、日本国内で話題になった「三菱UFJ銀行の頭取に“半沢”淳一氏」というニュース、中国でも大々的に報道されていましたよ。「半沢直樹」、原作・池井戸潤のTBSドラマは、既にブランドとして確立しました。日本以外のファンも“池井戸ユニバース”がどうなっていくのか、大きな関心を寄せているんです。
2018年に放送された「アンナチュラル」は、中国でも社会現象となり、「Douban」の点数は9.4。“見た”をチェックしている人は、48万人を超えています。「逃げるは恥だが役に立つ」「重版出来!」放送時、脚本家・野木亜紀子の名前は既に知られていましたが、“オリジナル脚本”だった「アンナチュラル」で知名度は一気に急上昇。だからこそ「アンナチュラル」の主要スタッフが再結集し、同作とつながりのある世界感で制作された「MIU404」は、放送前からかなり期待されていました。
現在は、ビリビリ動画で独占配信中。「アンナチュラル」ほどの社会現象にはなっていませんが、全体的な評価はとても高く「Douban」のスコアは8.7。“見た”人は、既に約2万人です。また「アンナチュラル」のキャラクターが登場したことで“野木ユニバース”という言葉も誕生しました。
非常に評価されている部分は、社会問題に関する描写です。中国のドラマ評論家は「社会派作品の少ない日本ドラマのなかで、こんなドラマが出てきたのは非常に嬉しかったです。『政治』『宗教』『在日外国人』――実際、日本の社会問題は多い。なぜ、漫画原作ばかり撮っているのでしょう。だからこそ、野木亜紀子先生は本当に偉大です」と語っていました。
日本のキラキラ青春映画・ドラマは、中国では既に賞味期限が過ぎていて、多くの人々が“少女漫画の実写化”に抵抗感を示しています。ですが、2020年1月に放送された「恋はつづくよどこまでも」は、注目の的になっていました。
ビリビリ動画で中国独占配信中の本作は、ストーリーは従来の少女漫画とそれほど変わりません。ですが「これこそ、少女漫画の真髄!」「佐藤健が格好いいので、ストーリーは脇役でいい」「冬にぴったりのドラマ。暖かいラブコメ! 佐藤健だから成立するかな。萌音ちゃんも超かわいい!」という好意的なコメントであふれていました。
一方、中国のドラマ評論家が評価したのは、演出面でした。
「少女漫画の実写化は、最早内容はあまり関係ない。“見た人の乙女心を甦らせる”ことができたら、成功だと言えるでしょう。そういう意味では、本作の演出は非常によかった!」
「なぜ本作の佐藤健はどんどん格好良くなっていくのか…。なぜ上白石萌音の可愛さは、毎話レベルアップしていくのか…。ここには、監督の実力が反映されているに違いない」
配信全盛期に入った2020年。どんな場所にいても、世界中のドラマを見ることができるようになりました。これからは、映像業界の勢力図も変わっていくはず。日本ドラマも含め“新時代の作品”の登場に期待しています。
Amazonで関連商品を見る
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。