ドイツの名匠C・ペッツォルト、水の精の神話を現代にアレンジ ベルリンW受賞作、21年3月公開
2020年12月24日 12:00

第70回ベルリン国際映画祭で、女優賞と国際映画批評家連盟賞をダブル受賞した「Undine」(原題)が、「水を抱く女」の邦題で、2021年3月26日から公開されることが決定。「東ベルリンから来た女」(13)で同映画祭の最優秀監督賞に輝いたドイツの名匠クリスティアン・ペッツォルト監督が、水の精の神話を現代に置き換えた物語を創出した。
ペッツォルト監督が新作のモチーフに選んだのは、「愛する男に裏切られたとき、その男を殺して水に戻る」という宿命を背負った美しき水の精ウンディーネ(オンディーヌ)。「婚約者の友人」「ある画家の数奇な運命」のパウラ・ベーアが、ウンディーネを下敷きにした神秘的なヒロインを妖艶に演じ、ベルリン国際映画祭と第33回ヨーロッパ映画賞で女優賞を獲得した。ダンサーや振付師としても活躍し、「希望の灯り」に出演したフランツ・ロゴフスキが、心優しい潜水作業員のクリストフ役。ふたりは、ペッツォルト監督の前作「未来を乗り換えた男」に続く再タッグとなる。
物語の主人公は、ベルリンの都市開発を研究する歴史家ウンディーネ。彼女はアレクサンダー広場に隣接する小さなアパートで暮らし、博物館でガイドとして働いている。恋人ヨハネスが別の女性に心移りし、悲嘆にくれていたウンディーネの前に、愛情深い潜水作業員クリストフが現れる。数奇な運命に導かれるように、激しく惹かれ合うふたり。彼女は新しい無垢な愛を大切に育むが、再び自分の宿命と直面することに――。官能的なバッハの旋律にのせ、ミステリアスな愛の叙事詩が繊細に紡がれる。
ウンディーネの魅惑的な神話は、古くから多くのアーティストたちにインスピレーションを与えてきた。アンデルセンは童話「人魚姫」を書き上げ、チャイコフスキーはオペラ、ドビュッシーは楽曲を創作。また、ゲーテが“ドイツの真珠”と絶賛したロマン派のフリードリヒ・フーケが発表した傑作小説「ウンディーネ」は現代でも読み継がれ、三島由紀夫の「仮面の告白」にも登場している。
「水を抱く女」は、21年3月26日から東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。
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