水を抱く女
劇場公開日 2021年3月26日
解説
「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルトが監督・脚本を手がけ、“水の精・ウンディーネ”の神話をモチーフに描いた恋愛ドラマ。ベルリンの都市開発を研究する歴史家ウンディーネは、アレクサンダー広場に隣接するアパートで暮らしながら博物館でガイドとして働いている。恋人ヨハネスが別の女性に心変わりし悲嘆に暮れる彼女の前に、愛情深い潜水作業員クリストフが現れる。2人は強く惹かれ合い、新たな愛を大切に育んでいく。やがて、ウンディーネが何かから必死に逃げようとしているような違和感をクリストフが感じ取ったことをきっかけに、彼女は自分の宿命に直面することになる。「婚約者の友人」のパウラ・ベーアが神秘的なウンディーネを妖艶に演じ、2020年・第70回ベルリン国際映画祭で女優賞を受賞。クリストフ役に「希望の灯り」のフランツ・ロゴフスキ。
2020年製作/90分/G/ドイツ・フランス合作
原題:Undine
配給:彩プロ
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美しくも儚い白昼夢に包まれているかのような味わいだ。ぺツォール監督の語り口が他のどの映画監督とも異なる感性に満ちているのは『東ベルリンから来た女』をはじめ数々の作品からお馴染みだが、いにしえより語り継がれる「ウンディーネ伝説」に材をとったと思しき本作も、ぺツォールが紡ぐと一味も二味も違う現代的な奇想譚へと生まれ変わる。まずもってベルリンという大都会で暮らすヒロインの日常は、その序盤、果たしてこれからどうやって水と結びついていくのか露ほども想像が及ばないものだ。そこに出会いが訪れる。ハッとするほどの鮮烈な描写と共に。さらには、ベルリンと郊外とをつなぐ列車での距離移動と、水深く潜っていく垂直移動。都市発展についての解説が浮き彫りにする時の移動。これら3つの絶えざる流れが不可思議に渦を巻くところにこそ、現代のウンディーネは降臨するのだろう。小品ながらその余韻がずっと胸のどこかに留まり続けている。
2021年3月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
水の精霊ウンディーネには湖や泉に住んでいて、本来性別はないが主に女性の姿を借りて現世に現れ、男性と恋に落ちて結婚もするけれど、恐ろしい代償を伴う。1、夫に罵倒されると水に帰ってしまう。2、夫が不倫した場合は夫を殺さなければならない。3、水に帰ったら魂を失う、等々。現代のベルリンを伝説の舞台に選んだ本作は、所々で精霊にまつわる決まり事を踏襲しているが、ファンタジー色はほぼ皆無。「東ベルリンから来た女」でもそうだったように、監督のクリスティアン・ペッフォルトは、抗えない運命に引きずられる男女の関係を、ドイツの暗く湿った風景の中で描いていく。キーになるのは、この悲しい恋の物語と、東西統合と共に発展を遂げた代わりに、古典的で美しいカルチャーを捨て去ったベルリンとを対比させつつ描写している点。ヒロインの職業を都市開発を研究する歴史家に設定しているのは象徴的だ。古き良きジャーマン文化と現代に現れた精霊を繋げることで、本作は凡庸なリアル・ファンタジーに陥ることなく、観終わっても忘れ難い一部ホラーな異色ラブロマンスとして観客の脳裏に刻まれることになった。
2022年3月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
見所はパウラ・ベーアの美しさのみという感想です。
水の精霊について予備知識でもあれば違っていたでしょうか…
ベルリンの歴史についてのガイドには興味をひかれました。
2022年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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水の精霊ウンディーネ 魂はないが人間の男性と結婚すると魂を得る。しかしそれには大きな禁忌がつきまとう。
・ウンディーネは水のそばで夫に罵倒されると水に帰ってしまう
・夫が不倫した場合は、ウンディーネは夫を殺さなければならない
・水に帰ったウンディーネは魂を失う・・・(wikiより)
この予備知識だけでOK。この水の精霊ウンディーネの話を頭に叩き込んでおけば映画も観やすくなってきます。まずは恋人ヨハネスから切り出す別れ話。そして潜水夫クリストフと運命的な出会い。「別れるならあなたを殺さなければならない」といった怖い台詞もあったけど、新恋人と順調に愛を育むと元カレを忘れてしまったかのように・・・
ちょっとだけホラーっぽい演出もあったりして、伝説が上手く表現されていたように思う。潜水夫クリストフがダム湖で脳死状態になったという意外性。その意識不明状態のときに電話で罵倒されたのも伝説通りなのかもしれない。さすがに2年後のエピソードは、悲恋がクリストフには当てはまらないため蛇足だと感じた。クリストフが奇跡的に数ヶ月後に目を覚まして、ウンディーネを探し彷徨する・・・そこで終わってもいいんじゃない?
ベルリンの歴史を説明するシーンも好き。クリストフが惚れるのも無理は無い。結局のところ、愛を求めるように水に対する欲求も強いのだろうか、ベルリンの歴史も水槽もダム湖も、常に水を求めていた印象が残る。まぁ、タイトル通りですかね。予備知識がない人のために精霊の話を冒頭に入れておいたほうが親切かもしれない。
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