人間が強欲な獣と化す――韓国ノワール「藁にもすがる獣たち」予告編完成
2020年12月4日 18:00
日本人作家・曽根圭介氏のクライムサスペンス小説を韓国で映画化した「藁にもすがる獣たち」の予告編が公開。原作の曽根氏が映画化についてコメントを寄せた。
今作は、曽根氏が2011年に発表した同名小説の映画化で、欲望を剥き出しにした人々が大金を巡って激しくぶつかり合う姿を予測不能な展開で描く。失踪した恋人が残していった多額の借金の取り立てに追われるテヨン、暗い過去を精算して新たな人生を始めようとするヨンヒ、事業に失敗しアルバイトで生計を立てるジュンマン、借金のため家庭が崩壊したミラン。ある日、ジュンマンは職場のロッカーに忘れ物のバッグを発見する。そのなかには、10億ウォンもの大金が入っていた。
ヨンヒ役を「シークレット・サンシャイン」のチョン・ドヨン、テヨン役を「アシュラ」のチョン・ウソン、ジュンマン役を「スウィンダラーズ」のペ・ソンウが演じた。監督は、今作が長編デビューとなったキム・ヨンフンが務め、脚本を兼ねた。
公開された予告編では、恋人の借金を抱えた男、過去を清算しようとする女、事業に失敗した男、借金のために体を売る女など、それぞれ訳ありの登場人物たちが大金を前に互いを陥れようとするさまが収められている。殺人、放火、色仕掛け、強盗など、あらゆる手段を駆使して徐々に強欲な獣と化していく人間の醜さをリアルに映し出した、刺激的な仕上がりとなっている。
韓国ノワール作品ファンという曽根氏は、今回の映画化に「天にも昇る心地」と歓喜。脚本やキャストの演技を絶賛し、「本作を手本にして原作を書き直したいと、半ば本気で思っています」と語っている。
韓国映画、特にノワール作品のファンなので、拙作「藁にもすがる獣たち」の映画化オファーをいただいたときは天にも昇る心地でした。以来、完成を楽しみにしていましたが、一方で、過度の期待は禁物だと自分を戒めてもいました。なぜなら、拙作には小説ならではの仕掛けがあるため、実写化するにあたって大幅に改変されてしまうだろうと覚悟していたからです。
しかし、脚本も手がけられたキム・ヨンフン監督は、その問題を巧みな手法で解決し、原作の構成を生かしつつ、本作をすばらしい娯楽作品に仕立てあげました。お見事です。恐れ入りました。そして豪華なキャスト。いずれもキャラの立った名演・怪演で、私の脳内にあった作中人物のイメージは、もはやことごとく彼らの顔に切り替わっています。
実をいうと、私は今、本作を手本にして原作を書き直したいと、半ば本気で思っています。
「藁にもすがる獣たち」は、2021年2月19日に東京・シネマート新宿ほか全国で公開。