アシュラ
劇場公開日:2017年3月4日
解説
「MUSA 武士」のキム・ソンス監督が、「私の頭の中の消しゴム」のチョン・ウソン主演で、架空の都市「アンナム市」を舞台に描くクライムサスペンス。刑事のハン・ドギョンは、私欲のためにあらゆる犯罪に手を染める市長のパク・ソンベによる悪事の後始末を金で請け負っていた。末期がんの妻の治療費を言い訳に、金になるならどんな悪事にも手を染めるドギョンの弱みを握る検事と検察捜査官は、ドギョンを脅迫。市長の犯罪容疑追及のためにドギョンを利用する。ドギョンを中心に、検察と市長、それぞれの思惑が交差し、生き残りをかけた戦いへと展開する。ウソンが主人公の悪徳刑事ドギョンを、市長のソンベ役を「ベテラン」のファン・ジョンミンが演じる。
2016年製作/133分/R15+/韓国
原題:Asura: The City of Madness
配給:CJ Entertainment Japan
スタッフ・キャスト
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2017年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
韓国の犯罪映画の多くは一触即発の緊張感をはらんでいるが、本作はそれが二倍三倍に濃縮されて2時間以上ずっと持続する超濃厚仕込みだ。
ギスギスした陰惨な内容ではあるが、これだけは言っておきたい。確かにろくでもない人間が騙し合いどつき合い殺し合う映画だけれど、最高に笑えるブラックコメディでもあるのです、と。
とりわけスゴいのが街を牛耳る悪徳市長を演じたファン・ジョンミン。私利私欲のためなら恫喝や暴力だけでなく、土下座もすれば自らを傷つけることも厭わない。これほどなりふり構わない悪党も珍しく、大袈裟でなく『ダークナイト』のジョーカー以来で映画の悪人像を更新したと思う。
実質的な主人公であるチョン・ウソン扮する汚職刑事も、破れかぶれ過ぎる中盤のカーチェイス以降は本当に何をしでかすかわからない。これほどまでに出演者全員が大熱演して、それが作品の個性と勢いとユーモアに繋がっている。おみごと!
この映画がこうまで日本人や韓国人の心に響いてくるのは ラストの音楽の力のおかげであろう。 この音楽は多分 欧米の人の心には響かない。 主人公の陥ってしまった悲劇がこの音楽によって見事に表現されていて 見終わった後にすごい映画だったという 塊のようなものが 心に残った。
一方で冷静に考えてみると これはとても無理のある ネタだ 。こんな状態にはまったら 主人公は助からない。どう考えても助からないから、脚本家が 諦めて 主人公に自爆させた・・・という しょうもない結末だ。 なのに こんだけの作品になっている、もう一つの要素はクライマックスの威力だと思う。映画というものは クライマックスがしっかり作られていると それまでの経過は多少 どうでも良くなる。観客は 魔術にかかったように感動してしまうものだ。
とはいえ、この映画から伝わってくるものは単なる感動というものではない。 もっと 何かわだかまりのような、喉にモノが詰まったような 妙な感慨のようなものだ。そしてこの感慨もまた欧米人とは共有できないものなのかもしれない。
こういうところに身を置いたら こういう ハマり方をして逃げられない・・という意味では セルピコ
仁義なき戦い
不夜城
を彷彿とさせるものがあった。松本清張 作品 なんか読んでいると市議会議員≒ ヤクザという設定がよく出てくるが当時は 市長 でもそんなもんだったかもしれない。 そして 韓国では今でもそうなのかもしれない・・とかいうことをちょっと思った。
2022年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
アウトレイジ風のキャッチコピーを付けさせてもらえれば"全員クズ"と言った感じか?素晴らしく良く出来ている韓国ヤクザ映画(表向きの職業は政治家だったり検察だったりするがやっていることは昔の日本のヤクザと同じ)。登場人物が全てクズで、皆やたらキャラが濃いが、中でも市長役の俳優の演技が素晴らしいと思った。車を使った場面(カーチェイスとか、人を轢き殺すところとか)が実にリアルで見応えがあった。
2022年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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■狂気の極悪市長を演じたファン・ジョンミン、病に臥せる妻のために、市長についたハン・ドギュン刑事を演じたチョン・ウソン、ドギュン刑事を慕っていたが、彼の勧めにより、悪の道へ落ちたソンモ刑事を演じたチュ・ジフンら豪華俳優が血まみれで、競演した強烈すぎる韓国ノワール映画。
ー 架空の街・アンナムを舞台に、再開発の利権をめぐり狂気に走るハク・ソンベ市長(ファン・ジョンミン)と利用される刑事たち(チョン・ウソン、チュ・ジフン)。
そして彼らを執拗に追う検事チャイン(クァク・ドゥオン)たちが繰り広げる、カーアクションやバトルが壮絶過ぎる・・。-
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・極悪市長ハク・ソンベを演じた、ファン・ジョンミンの演技が凄い。平気で、嘘の涙を流し、裏では非情に徹し、長年自らを支えて来たウン室長を、保身のためにソンモに殺させる。
全く目が笑っていない笑顔を湛え、市民の前では大仰なプレゼンをし、最後は、決して手を出してはいけない筈の、検察官まで平気で殺める姿。
権力に憑りつかれた狂人を見事に演じている。
・妻の入院費を稼ぐため、ハク・ソンベ市長の様々な悪事の後始末をする、ハン・ドギュン刑事を演じたチョン・ウソンも、それまでの作品での”良い人オーラ”を封印し、”検察と市長との間で板挟みになっていく男を好演している。
・カーチェイスシーンも、尋常でない緊迫感である。
ー 消防法の規制の違いもあるのだろうが、雨降る夜のカーチェイスシーンのスピード感溢れる迫力は尋常ではない。-
・現役刑事時代には、ドギュン刑事を慕っていたが、彼の勧めにより、悪の道へ落ちたソンモ刑事を演じたチュ・ジフンの、徐々にドギュン元刑事を軽んじるようになっていく姿。彼も又、権力と金の欲に溺れた一人である。
ー だが、彼は最後の最後で、ドギュン元刑事に対する情が出て、命を落とす。その姿を見たドギュン元刑事が、覚悟を決め、極悪市長を殺しに行くシーンの緊迫感や、極悪市長に屈していく検事チャインの姿も、印象的である。-
<ラスト、殺されたウン室長の葬儀場での、検察、市長、元刑事たちの醜いまでのやり取りは、手に汗握る。
そして、最後に極悪市長の額に銃弾を叩き込んだハン・ドギュン元刑事が、息絶え絶えに言った言葉。“こうなる事は、分かっていた・・。だけど、しょうがねえ・・。”
鑑賞後の気分は決して良いとは言えないが、観る側に強烈なインパクトを与える、韓国ノワール映画の逸品であろう。>