のん×林遣都「私をくいとめて」 大九明子監督が語り尽くす“綿矢文学”の魅力
2020年11月15日 11:00
第33回東京国際映画祭の観客賞を受賞した「私をくいとめて」で実現したのは、「勝手にふるえてろ」の大九明子監督、原作者・綿矢りさ氏という“黄金コンビ”の再タッグだ。“綿矢文学”に惚れ込んだ大九監督が、その魅力を明かしてくれた。
のん、林遣都、橋本愛らが結集した「私をくいとめて」は、おひとりさまライフを満喫する31歳のみつ子(のん)が、脳内の相談役「A」とともに年下男子・多田くん(林)との恋に挑む“崖っぷちロマンス”。大九監督が原作小説と出合ったのは、ロングランを記録した「勝手にふるえてろ」の公開が落ち着き始めた、2018年のことだった。
さまざまな人から「綿矢さんの新作読んだ?」と聞かれる機会が多かったそうで「『勝手にふるえてろ』は、主人公がモノローグでしゃべっている原作を会話劇にした映画なのですが、今回の新作は『そもそも主人公が一人でしゃべってるよ!』と聞いて、すごく興味が沸きました」と当時を振り返る大九監督。「すぐに読んでみるとやっぱり面白いし、いつものクセで自然と脳内で映像に変換しながら読んでいた」と懐かしみ、すぐに脚本を書き始めたという。
「綿矢文学の世界観が好き」と公言する大九監督。最大の魅力は「大きなうねりのある起承転結ではなく、その登場人物がどう感じて、どう生きているかというところが一番の面白味」と感じているようだ。「彼女の作品で嫌いな登場人物が出てくることは一度もないので、ひたすら楽しく書けちゃうし、すべての登場人物に少しずつ私が入っているという感覚もある」と話しつつ、「触れてもらいたくない部分に触れられるしんどさも込みで、綿矢さんの世界観はどこか心地いいんです。『この際だから吐いちまえ!』っていう心地良さですよね」と“綿矢愛”にあふれる言葉で熱弁する。
大九監督「綿矢文学の醍醐味である切れ味のいい言葉たちの間を、さまざまな色が漂い、ある時はスパークする。色に溢れた読書体験を終えた時には、この色と言葉をどう映像で描こうか、と考え始めていました。すぐにシナリオにして、プロデューサーに売り込みました」
一方、綿矢氏は、今回の映画化について「大九監督の魔法によって、どれだけのキャラクターが生き生きとよみがえるんだろう」と期待に胸を膨らませていた。「『勝手にふるえてろ』が映画化された際、主人公だけでなく、物語上のすべてのキャラクターたちが、本当に実在するかのようにリアルで、それでいてコミカルに描かれていたのが、驚いて忘れられなかった」と述懐しつつ、大九監督が新たに築いた世界観に太鼓判を押す。
綿矢氏「本作は、想像力がたくましく、たくさんの人と関わることを無意識に恐れている女性が主人公の話。(大九監督による)脚本を読むと、彼女の実は色鮮やかな内面が、イイ味出してる周囲の人たちとのふれあいにより、より濃く輝いているなと感じました」
「私をくいとめて」は、12月18日から全国公開。
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