【「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」評論】やっぱりライカは最高。愉快な冒険と友情に満ちた一瞬一瞬がたまらない
2020年11月13日 10:00
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ストップモーション・アニメ工房「ライカ」が手掛ける作品といえば、これまでどちらかというとややダークな雰囲気が印象的だった。それが「KUBO クボ」に続く3年ぶりの本作はどうだろう。もう序盤から心がワクワクする魅力でいっぱい。その中心を成すのは毛むくじゃらの不可思議な生き物だ。彼の個性とブラウンとイエローの色味が、お日様みたいな視覚的なエナジーを沸き立たせてやまない。
時は19世紀末、新発見で名を上げたいフロスト卿(ヒュー・ジャックマン)は、探検の途中、大自然で二足歩行する生物(ザック・ガリフィアナキス)と遭遇する。流暢に話しもできるし、文字だって書ける。これはもしや猿から人への進化の隙間を埋める“ミッシング・リンク”ではないか!? 興奮するフロストを尻目に、便宜上“リンク”と名付けられた彼が口にするのは「僕を連れて行って。ひとりぼっちはいやなんだ」という言葉。かくして二人はヒマラヤに生息する同種を探して壮大な旅に繰り出すのだが……。
我が道を突き進むフロストと、人と触れ合うことが楽しくてしょうがないリンク。二人のコンビネーションが実に愉快で、何とも笑みの絶えない大冒険が展開する。でも決してドタバタ劇に終始するのではなく、はみ出し者の二人が助け合い、友情と信頼を深めていく姿はなんだかほっこりと温かい。きっと彼らは、見つけ、見つけられる存在を超え、この地球上で二人といない運命のパートナーどうしなのだ。
作品を彩る美術にも目を奪われる。ヴィクトリア朝時代の手の込んだ調度品や装飾の数々から、船、列車、馬車、象とバトンリレーしていく乗り物、そして壮大な景色にも圧倒されるばかり。ロードムービーならではの、果てしない旅路と心の移り変わりがオーバーラップする描写が、一コマ一コマ、一挙手一投足、愛情を込めて大切に描かれていく。これぞストップモーション・アニメの醍醐味。目が歓喜し、なんだかたまらない気持ちがあふれてくる。
本作を生んだクリス・バトラー監督といえば、「コラライン」や「KUBO」の影に隠れたもう一つの傑作「パラノーマン」を手がけた逸材。“孤独”に焦点を当てながらもアプローチの仕方はこれまたライカのどの作品とも違う。今回(第77回)のゴールデングローブ賞(長編アニメーション部門)受賞も相まって、この先、ストップモーション・アニメ界の名匠として独創的な魅力をより際立たせていくのは間違いなさそうだ。
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