深田晃司監督「オンラインは映画館の敵ではない」 コロナ禍の映画祭開催に持論
2020年11月4日 14:00
NPO法人独立映画鍋、第21回東京フィルメックス、第33回東京国際映画祭が共催するトークイベント「インディペンデント映画の未来と映画祭」が11月3日、オンライン上で開催され、独立映画鍋の共同代表を務める映画監督の深田晃司、市山尚三(東京フィルメックス ディレクター)、矢田部吉彦(東京国際映画祭シニア・プログラマー)らが登場。コロナ禍における映画祭の意義とオンライン上映の可能性、インディペンデント映画の未来について語り合った。
現在開催中の第33回東京国際映画祭「Japan Now」部門で特集されている深田監督は、「商業性や娯楽性が高いといえない作品を撮っている身として、映画祭はとてもありがたいショーケース。多様な映画が後押しされ、それに見合った市場でお客さんを獲得する貴重な場だと思う」と映画祭の意義を強調。また、「ほとりの朔子」(13)が仏ナント三大陸映画祭で上映され、現地入り際には「ちょうど(次に撮る)『さようなら』の企画書を持っていたので、声をかけてくれた配給関係者に『一緒にやらないか』と持ち掛けた」といい、貴重な縁をもたらす映画祭ならではの交流を振り返った。
それだけにコロナ禍で海外渡航が制限される現状は「悲痛に感じる」。最新作「本気のしるし 劇場版」は第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション「カンヌレーベル」に選出されたが、「せっかく選んでもらっても、行くことができず。特にヨーロッパは大変な状況なので、日本にいると引き裂かれたような気持ちになる」と胸の内を明かした。
一方で「オンラインは映画館の敵ではない」とし、オンラインでの配信や映画祭開催には前向きな姿勢。その上で「ちょうど美術館と画集の関係性に似ている。画集があるからといって、美術館がいらないなんてナンセンス。(両者は)並走していくべきだし、どう有機的に発展し合っていくか議論すべき。(文化予算や助成金など)日本はその点がものすごく遅れている」と持論を交え、国内のインディペンデント映画業界が抱える問題を指摘した。
市山氏も「期間中のパーティで映画人が出会い、新たな企画が盛り上がることも。オンラインでビジネスライクな話もできるが、特に若い監督にとっては、本人同士が出会うことがかなり重要」と従来型の映画祭開催がもたらすメリットに言及。同時に「以前からフィルメックスはオンラインでもやるべきという意見があった」といい、「地方にいて、アート系の作品に興味がある方々をはじめ、『今は映画館に行きたくない』という人にとっては悪くない手段。権利やセキュリティの課題で、すべての作品とはいえないが、結果的に多くの人に映画を見てもらえることも」と話していた。
東京国際映画祭について「映画館で見る楽しみを盛り上げたいという思いから、早い段階からフィジカルでの開催を検討していた」と明かした矢田部氏は、開催を前に「出品者の皆さんには、当初(劇場の)客席は50%使用だと説明していたが、思っていたよりも早く100%に戻るかもしれないという話が浮上した」とあわただしい舞台裏を告白。「まだ映画祭が始まって3日目。全然安心していないし、気が抜けない」と背筋を伸ばし、「予定通り10日間無事に開催されれば、劇場=安心安全というアピールになり、今後のイベント開催にも良い影響はあるはず。ルール、ルールと言い過ぎると、お祭り感もなくなってしまうので、映画って楽しいという雰囲気を保ちつつ、ルールと楽しさを両立させたい」とコロナ禍でのチャレンジに意欲を燃やした。
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