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【パリ発コラム】再びロックダウンのフランス 文化省は業界に37億円の援助を約束するも、劇場は閉鎖

2020年11月1日 08:00

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人通りのないシャンゼリゼ通り(右のポールに見えるポスターは、カンヌレーベルに選ばれたマイウェンの「ADN」)
人通りのないシャンゼリゼ通り(右のポールに見えるポスターは、カンヌレーベルに選ばれたマイウェンの「ADN」)

新型コロナの感染者数が24時間で3万人を越し、10月17日からイル・ド・フランスと8都市で、21時以降朝6時までの外出を禁止する夜間外出禁止令が敷かれたフランス。だがその後も感染者はうなぎ登りで、ついに28日、マクロン大統領は再び厳しいロックダウンを翌日の夜中から開始することを発表した。これには飲食店をはじめ映画館など、娯楽施設の閉館も含まれている。数日前の予想では、週末だけや地域別のロックダウン、もしくは外出禁止時間が早まる程度と言われていただけに、多くのフランス人が落胆を露わにしている。

これで再び映画界に深刻な影響が出るのは避けられない。すでに夜間外出禁止令が出た時点で、興行側は対応に追われていた。フランスの映画館は通常、最終上映の回が21時過ぎまであり、仕事帰りや夕食後に映画を観る人が多く、この枠は週末に続いて書き入れ時だ。チェーンの映画館MK2は、夜間外出禁止令の翌日から、朝8時に開館し始め、他のところもこれに倣い、朝の上映を増やし、公開プログラムも、毎週予定が変わっているような状況だった。

もともと7月末から11月末に一度公開を延期していたフランス映画のブロックバスター、「Kaamelott 第1章」が、無期延期になった。本作はテレビの人気ドラマシリーズの映画化で、クリスチャン・クラビエアラン・シャバ、アントワーヌ・ド・コーヌといった人気喜劇役者が揃っている他、なぜかスティングまで出るコスチューム・コメディ。鳴り物入りの話題作なだけに、ファンの失望は大きい。一方、10月28日に封切りを予定していたルーベン・アルベスの「Miss(原題)」は、逆に一週間公開を早め21日に封切った。「天国でまた会おう」に続くアルベール・デュポンテルの監督、主演作「Adieu les cons」も話題を集めていたが、こちらは予定通り21日に公開。デュポンテル監督は、「いまや観客が観に行きたいかどうかではなく、観に来られるかどうかという問題で、深刻な事態と言わざるを得ない」とコメントしていたが、まさか封切り一週間で中断になるとは予想していなかったに違いない。

人があまりいない映画館(シャンゼリゼのPublicis Cinema)
人があまりいない映画館(シャンゼリゼのPublicis Cinema)

さらに文化大臣のロズリーヌ・バシュロ=ナルカンは、23日の発表で、映画業界に新たに30ミリオン・ユーロ(約37億円)の援助を約束したが、そのときのスピーチでは、「映画館が閉まる事態を防ぎ、観客が映画館に通い続けることができるようにすることが、我々の目的です。それにはまた、配給会社のみなさんがリスクを負って作品を公開していただくことも必要です」とまで語っていたのである。

今回マクロン大統領がラジカルな決断に踏み切ったのは、第二波の勢いが早いということと同時に、なんとしてもクリスマスまでには感染数を減らし、平常に戻したいという狙いがあったと思われる。クリスマスが一番の家族行事であるヨーロッパにおいて、この時期にロックダウンをすることは、猛反発を受けるのは目に見えているからだ。ただし、現状ロックダウンは12月1日までとされているものの、状況次第では延長の可能性もないとは言えない。

例年であれば、映画界はこれから年末にかけて話題作が目白押し、のはずだが、いったい12月にはどんな状況になるのか。もはや誰にも予想のつかない厳しい事態を迎えている。(佐藤久理子)

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