斎藤工の“シネマティックな瞬間”は、映画館からの帰り道 ウィズ・コロナの映画界への思いを明かす
2020年8月8日 11:00
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[映画.com ニュース]俳優で映画監督としても活躍する斎藤工が、「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)」が8月6日に主催したオンライントークセッションに参加した。同映画祭の代表・別所哲也、アンバサダーを務める映画コメンテーター・LiLiCoとともに、「映画業界が挑戦するビヨンド・コロナ」をテーマにトークを展開。配信は終了したが、現在はアーカイブ映像(https://www.youtube.com/watch?v=l68nWHDYh18)で視聴することができる。
新型コロナウイルスの影響を受け、リモート映画制作プロジェクト「TOKYO TELEWORK FILM」(TTF)を立ち上げた斎藤。ほぼ全編リモート撮影された岩井俊二監督作「8日で死んだ怪獣の12日の物語 劇場版」(公開中)や、日本を代表する5組の監督と豪華キャストが参加したオムニバス映画「緊急事態宣言」(8月28日からAmazon Prime Videoで独占配信)に出演するなど、コロナ禍の中にあってもクリエイティブに活動を続けている。

斎藤は自身が携わった作品を配信する特別サイト「A TAKUMI SAITOH FILM」について、「(新型コロナウイルスは)人との距離を奪う疫病であると同時に、選択肢も奪っている気がしまして。在宅でありながらも選択肢が増える手段として、映像作品があるのではないかと思いました。自分が制作、監督したものを無料で公開するハブみたいなものを作りました」と説明。そんな斎藤のスピード感に、LiLiCoは「工くんのような役者がちゃんと行動して、皆に声をかけて、世間に届けられるというパワーが素晴らしいですよね」と賛辞をおくる。
監督としても俳優としてもリモート制作に挑んだ斎藤。撮影の延期などにより、俳優たちの間にも「『何かしたい』というエネルギーがマグマのように溜まっている感覚があった」といい、「企画や脚本を読んで頂いて、何かを感じて良いと思って下さった方に協力を要請しました」と振り返る。さらに、「ウィズ・コロナ」の映画界を見据え講じた施策を、以下のように語る。
「『TTF』がこだわったポイントは、あえて有料のコンテンツにしたいなと思ったんですね。4、5月の段階ではリモート制作の作品はほとんど無料という形をとっていて、その思いにはもちろん賛成するんですが。同時に裏方の方々にとっては現場がなく、劇場も危機的状況にあるという現実が見えてきた中で、早く収束してほしいという願いはあるんですが、長く「ウィズ・コロナ」という状況が続くとしたら、エンタテインメント自体が新しい形を擁するんじゃないかと思うようになって。リモート時代に作られる新作が、有料で生まれるという回路に意味があるんじゃないかと思ったんです」
オンラインセッション終了後、斎藤はインタビューにも応じてくれた。最初に、映画館で映画を見ることの意義を聞いてみた。
「好きな映画館って、劇場内の記憶というよりは、ロビーや、劇場に行くまでの時間や、映画を見た後に感化されて高揚した自分の感覚で覚えている。上映前に入ったトイレが違う空間のように思えて、鏡に映る自分の顔に、今見たものや体験したものが宿っているような。映画館に行くまでと、見た後に帰るまでの、助走のような部分が1番シネマティックなんじゃないかなって、自粛期間中に思っていました。オンラインだと接続を切った瞬間にプライベートの時間になって……間がないんですよね。映画を見た帰り道に何か咀嚼したり、今見たものと帰路の風景が交点を持って融合したりして、作品をちゃんと捉えていくことが、自分の中では芸術の味わいの時間として、とっても大事だったんだなと痛感しています」
ほとばしる映画愛を存分に語った斎藤は、4月に本サイトで「いま自宅で見るべき映画5本」(https://eiga.com/news/20200425/6/)を発表してくれた。新たにおすすめしたい作品を聞いてみると、「(緊急事態宣言が解除されて)久々に映画館で見たのが、『マルモイ ことばあつめ』。日本の統治下の朝鮮半島で、朝鮮語の辞書を作るというユ・ヘジン主演の作品なんですが、これはちょっと食らいましたね」と言葉に熱をこめる。
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「ちゃんと僕、“不時着”(Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』)しまして。号泣して、ヒロイン目線で見ていました。人間関係を継続して描けるというドラマの良さを痛感しました。映画だと主人公は限られた人になっちゃうけど、ドラマだといろんな人が主人公の回があるので、素晴らしいなと思いました。あと僕、『愛の不時着』は『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』とセットで見ることをおすすめしていて。(朝鮮半島の)南北の緊張感をエンタテインメントの中で、どの角度で、どの配分で選ぶか、というあたりが巧妙でした」
さらに、映画館選びのこだわりも明かしてくれた。「劇場がハブというか、劇場がキュレーションしているもののために、そこに行く。『この作品が見たいから映画館に行く』という文法じゃなくて、映画館を信頼して、作品を選ぶということですね。映画館に(良作との出会いを)採取しに行くという行為に対して、『これが映画館だな』と思いました」としみじみと述べた。
「SSFF & ASIA」は9月16~27日に開催。24日の午後8時からは、斎藤が参加する生アテレコイベント「2020年 斎藤工、仲間たちとの新たなる挑戦」がオンラインで実施される。
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