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プレイリスト作成→脚本着想 「WAVES ウェイブス」監督が明かす音楽の重要性

2020年7月8日 14:00

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撮影中のトレイ・エドワード・シュルツ監督(左)
撮影中のトレイ・エドワード・シュルツ監督(左)
(C)2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.

[映画.com ニュース]「ムーンライト」「レディ・バード」「ミッドサマー」など次々と話題作を発表するスタジオA24の新作「WAVES ウェイブス」が、7月10日から公開される。心理スリラー「イット・カムズ・アット・ナイト」で注目され、本作のメガホンをとったトレイ・エドワード・シュルツ監督は、まず使用する楽曲のプレイリストを作成し、楽曲から受けたインスピレーションをもとに脚本を執筆した。「映画作りにおいて、音楽はすごく大きな存在」と語るシュルツ監督に話を聞いた。

ある夜を境に幸せな日常を失ったタイラー(ケルビン・ハリソン・Jr.)とエミリー(テイラー・ラッセル)兄妹の姿を通し、青春の挫折、恋愛、親子問題、家族の絆といった普遍的なテーマを描く。

シュルツ監督は、10年以上前から温めてきた企画だと明かし、「大半の内容は自伝的、もしくは実際に起きたことにインスパイアされている。人生経験を重ねていくにつれ、構造もテーマも次第に形が整ってきて、やっと映画として世に出すことができた」と道のりを振り返る。

使用された31もの楽曲は、本作の“主役”ともいえるほど重要な存在だ。レディオヘッド、カニエ・ウエストらの楽曲が登場人物の感情に寄り添い、あるシーンでは歌詞が心の声を伝える。その手法について、シュルツ監督は以下のように語る。

「映画を撮る時はいつも事前にプレイリストを作るんだけど、通常はスコアを選ぶことが多い。作風に合ったスコアを集めてプレイリストを作成し、それに沿って脚本を書いていくんだ。今回は登場人物が高校生ということもあって、もう一歩踏み込んで、楽曲(歌詞入りの曲)を用いた映画にすべきだと思った。試行錯誤しながら新しいことに挑戦するのは楽しいしね。この作品は映画よりも音楽に大きくインスパイアされた作品だ。作っていてすごく面白かったよ」

お気に入りの曲を集めた膨大なリストから使用曲を選んだそうで、「どれも僕にとって大切な曲」と思い入れが強い。特に、「フランク・オーシャンの『Seigfried』が流れるシーンは、脚本では同じくフランク・オーシャンの『Godspeed』を使う予定だった。実は脚本は完成した映画よりもずっと長くて、編集でカットして今の尺にしたんだ。そうすると『Goodspeed』がうまくハマらなくなってしまった。『Seigfried』に入れ替えてみたものの、ロードトリップのシーンに切り替わった瞬間、スコアを流していたから、どうもしっくりこなかったんだ。その理由が当時は分からなかった。ある時、ロードトリップに切り替わる瞬間に『Seigfried』のクライマックスを持ってきたら、魔法のように完璧に合ったんだ。編集室で泣いたのを覚えているよ」と述懐する。

続けて、「『Seigfried』は僕が最も好きなシーンの直後に流れるんだ。映画の核心であり、作品のテーマとも言えるシーンだ。次の場面でも曲は続き、エミリー(テイラー・ラッセル)とルーク(ルーカス・ヘッジズ)のロードトリップの場面でクライマックスを迎える。僕はすい臓癌で危篤状態だった実父に恋人と会いに行った経験があるんだけれど、映画のロードトリップはその再現になっている。僕と恋人にとって大切な意味を持ち、僕たちは大切な局面でいつも旅をしてきた。『Seigfried』は僕も恋人も大好きな曲だし、そういうすべての理由から『Seigfried』は映画の中で最も大切な曲だと言える」

最後に、公開を待つ日本の映画ファンへ向けて「僕のすべてを注ぎ込んだ映画だし、心の底から信じている作品なんだ。ストーリーに共鳴できた人は、この映画は君のために作ったと思ってほしい」と呼び掛けたシュルツ監督。来日が中止となってしまったこともあり、「今度日本を訪れた時に、みんなに会えることを楽しみにしている。近い未来であることを祈っているよ」と前向きなメッセージを送った。

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