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現代ロシアの伝説的作家の半生描く アレクセイ・ゲルマン・Jr.が語るベルリン受賞作「ドヴラートフ」

2020年6月19日 16:00

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アレクセイ・ゲルマン・Jr.
アレクセイ・ゲルマン・Jr.

第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品され、銀熊賞(芸術貢献賞)とベルリーナー・モルゲンポスト紙読者賞の2冠に輝いた「ドヴラートフ レニングラードの作家たち」が、6月20日から公開される。メガホンを取ったのは「フルスタリョフ、車を!」「神々のたそがれ」などで知られる鬼才、アレクセイ・ゲルマン監督の息子であるアレクセイ・ゲルマン・Jr.。このほど、現代ロシアの伝説的作家の半生に迫った本作について語った。

――セルゲイ・ドヴラートフを知ったきっかけを教えてください。
彼の本を読んだのは遅いです。20代半ばを過ぎたころでした。ただ、私の父(アレクセイ・ゲルマン)がドブラートフとは家がたまたま近所で知り合いだったこともあって、よく話を聞かされていたんです。それは、例えば警察に捕まった話とか、そういう世間ではあまり知られていない逸話です。
――彼の著作を実際に読んでみての率直な感想は?
おそらく本国ロシアだけではなく、日本を含む世界でも、知られている作家でそれぞれにイメージがあると思います。僕自身は手に取る前は、どちらかというと悲劇を書く作家というイメージがありました。ただ、一概にはそういえないかなと。読み込むと、ユーモアやアイロニーも含まれている。だから、優れた悲喜劇の書き手ではないかと思いました。
画像2(C)2018 SAGa/ Channel One Russia/ Message Film/ Eurimages
――映画の舞台を1971年に設定した理由を教えてください。
理由はいくつかあります。ひとつはドブラートフがまだ作家として広く知られる前、まだ何者にもなれていなときを描きたいと思いました。偉大な作家ではなく、ひとりの人間として彼を描きたいと思ったのです。もうひとつは、映画にも登場する作家、ヨシフ・ブロツキー。彼がレニングラードにいた最後の年でしたので。のちにノーベル賞を受賞する彼にも触れたかったのです。
そして、1971年のロシアというのは、少し緩んでいたネジがキュッと締められ始める時期にありました。自由の残響がありながらも統制がじわじわとはじまり、体制の望むものではなく、自分の作品を世に出したい作家たちにとっては窮屈な時代だった。こうしたことが1971年に設定した大きな理由です。そして、このようなある種の締め付けがあった時は1985年まで変わらず続きました。そのころの時代の空気は私自身も体験しています。その時代の空気を私は描きたかったのです。
――その時代の空気や作家の生き方を、約1週間の物語に集約してしまうという、大胆な発想は、どこから生まれたのでしょうか?
彼はドラマツルギーの作家ではなく、アンチドラマツルギーの作家といっていいでしょう。短編の作家でもあった。ですから、例えば彼の人生を子ども時代から、結婚、そして晩年までたどるように描くのはちょっと意に反するなと思ったのです。
画像3(C)2018 SAGa/ Channel One Russia/ Message Film/ Eurimages
――主演のセルビア人俳優ミラン・マリッチについて教えて下さい。
主演をロシアで見つけられれば、それに越したことはなかった。実際、この役を「やりたい」と熱望したロシアの有名俳優は何人かいます。でも、どうしても私のイメージとは違ったのです。それでロシアだけではなく、ヨーロッパにも広げて探すことにしました。そこで出会ったのがマリッチでした。
彼は外見がどことなくドヴラートフに似ていたことに加え、そのたたずまいが知性を感じさせる。そして、なにより彼はドブラートフの内面にある哀しみや苦しみをよく理解していました。実際、彼の演技がこの作品をより説得力あるものにしてくれたことは間違いありません。
――あなたの実父である、アレクセイ・ゲルマンもまた偉大な映画監督です。あなたにとってはどんな存在でしょう?
私にとって偉大な作家です。父は生涯は苦難の連続でしたが、それに屈することなく、常にチャレンジをもって、自らの芸術を追い求めました。その芸術家としての姿勢は今でも尊敬しています。

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