「ストーリー・オブ・マイライフ」グレタ・ガーウィグ監督、才能溢れる“4姉妹”と挑んだ愛読書の映像化
2020年6月11日 12:00
[映画.com ニュース] 「レディ・バード」で注目を浴びたグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンが再タッグを組んだ映画「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」が、6月12日に日本公開を迎える。ガーウィグ監督にとって、原作小説「若草物語」(著者:ルイザ・メイ・オルコット)は愛してやまない作品。映像化におけるこだわり、キャスティングの経緯について話を聞いた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)
マサチューセッツ州ボストンを舞台にした本作は、南北戦争時代を強く生き抜くマーチ家の個性豊かな4姉妹が織りなす物語を、作家志望で情熱家の次女ジョーを軸に描いたもの。しっかり者の長女メグ役をエマ・ワトソン、活発で信念を曲げない次女ジョー役をローナン、内気で繊細な三女ベス役をエリザ・スカンレン、人懐っこく頑固な末っ子エイミー役をフローレンス・ピューが演じ、ティモシー・シャラメ、ローラ・ダーン、メリル・ストリープらが脇を固めている。
初の単独監督作「レディ・バード」が、米批評家サイト「Rotten Tomatoes」で99%というハイスコアを記録し、次回作に注目が集まっていたガーウィグ監督。彼女が興味を抱いたのは、「第二の性」のシモーヌ・ド・ボーボワール、「ナポリ物語」シリーズのエレナ・フェッランテ、「ハリー・ポッター」シリーズのJ・K・ローリングといった作家に影響を与えた小説「若草物語」だった。
「原作は、14歳の時を最後にしばらく読んでいなかったけれど、30歳の時に読み返してみたんです。すると、今まで一度も味わったことのない感覚を覚えました。その瞬間までは、この作品がとてもモダンで、現代でもメッセージ性の強いものだとわからなかった。そこには“今の私”が興味を持っていること、作者と著作権、女性の芸術作品、そして野心などが細かく記されていました」と振り返るガーウィグ監督。製作への意欲が高まっていたが、その頃はまだ「レディ・バード」を撮影していない状況。その後、完成させた同作が高い評価を受けたことで、企画の実現へと結びついたようだ。
劇中では、豪華なキャスト陣の存在感に魅了されるはずだ。「シアーシャは、私が『若草物語』を映画化すると聞きつけて『私はこの映画に出演する。そして、私がジョー役を演じる』と強引に売り込んできました。一度は『考えとく』とはぐらかしたんですが、シアーシャの意気込みに押されました」と再タッグの理由を告白。その際に「レディ・バード」の撮影でローナンと意気投合していたシャラメへのオファーも決断したようだ。
ワトソンについては「彼女の“活動家”としての行動を、メグという役に投影させることができ、役柄を通した生々しい部分を見せることができる」と判断したそう。スカンレンはテレビシリーズ「KIZU 傷(キズ)」、ピューは映画「Lady Macbeth(原題)」を通じて、2人の並外れた才能に気づいた。ストリープに関しては、映画祭や授賞式で会うたびに自作への出演依頼をしていたそうで、ようやく念願を果たすことになった。
「2、3週間のリハーサルをできたことは、とても重要だった」と話すように、撮影前の下準備にはしっかりと時間をかけたそうだ。「4姉妹は、まるで1つの怪獣に4つの頭がついている感じでした。シーンによっては、8人もの人が同時にしゃべっていることも。そういった技術的な問題にリハーサルで取り組めたことは良かったですし、(演出の意図を)俳優陣の“記憶の筋肉”に落とし込むこともできました」と打ち明けた。また、感情の抑揚のバランスが秀でた脚本について、こう話している。
「自分は少女時代にどこへ行き、何を見て、どういう人物になっていったのか――大人になった際に、それらを振り返り、若き日の自分を諭すように脚本を作っていきました。また暖炉の前に集まった4姉妹が、父親からの手紙を読んでいるような記憶を“今は失ってしまっている”といった瞬間を告げることが、この映画の構成では重要だと思いました」
さらに、登場するセリフの90%は、原作小説に書かれたもの、もしくは著者ルイザ・メイ・オルコットの綴った手紙や日記からの引用であることを告白。最後に、撮影監督を務めたヨリック・ル・ソー(「カルロス」「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」「パーソナル・ショッパー」)との“仕事”を述懐した。
「幸運なことに、マサチューセッツ州のコンコード(ルイザ・メイ・オルコットが幼少期から成人初期まで住んでいた場所)で撮影ができたんです。そこは全ての景色が美しく、まるで当時のままの風景が保護されているような感じでした。どこにカメラを設置しても、まるでウィンスロー・ホーマーの絵画のように美しかった。でも、4姉妹が過ごす約10年間をとらえながら、何度も四季を撮影するというのは、かなり複雑なこと。そのため、あえてカメラを一カ所に固定せず、動きを感じさせる映像にしてみたいと思ったんです。だからこそ、ヨリックが『カルロス』で撮影したカメラワークは、この映画にはふさわしいと感じていました」
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