【「ペコロスの母に会いに行く」評論】老いとどこまでも前向きに対峙した快作 森崎東、25本目の監督作
2020年6月5日 21:00
[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(https://eiga.com/alltime-best/)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論を毎週お届けいたします。今回は「ペコロスの母に会いに行く」です。
喜劇映画の名手として知られる森崎東にとって、「ペコロスの母に会いに行く」は25本目の監督作となった。「ニワトリはハダシだ」(2004)以来のメガホンで、撮影時は85歳(現在92歳)。故郷・長崎で撮り上げた今作は認知症をテーマにしているが、決して重いトーンの作品ではなく、軽快に、そして真摯に老いと向き合っている。
監督が御年85歳ならば、岩松了とともに作品を牽引したベテラン女優・赤木春恵は、クランクインした12年9月5日時点で88歳と175日。これは、ギネス世界記録に「世界最高齢での映画初主演女優」として認定されている。「二百三高地」(1980)以来、実に33年ぶりの銀幕復帰となった赤木だが、長らくテレビドラマで植え付けられた姑役というパブリックイメージを鮮やかに払拭し、認知症だった亡き実母を参考にしながら岡野みつえ役を見事に演じ切った。その姿は愛らしくもあり、絶妙ともいえる間の取り方が笑いを呼び込み、コメディエンヌとしても一流であったことを難なく実証してみせた。
岡野雄一の介護日誌コミックが原作で、離婚して子連れで長崎に戻った主人公ゆういち(岩松)と、85歳になりグループホームで暮らす認知症の母みつえの心温まる日常を描いている。映画でも、原作に通底する「ボケることも悪かことばかりではない」という精神を踏襲している。
今作が多くの人々から支持された要因のひとつに、誰にでも均等に訪れる“老い”を、介護する家族の苦労話だけで構成していないという点が挙げられるのではないだろうか。ひとりの“母”が懸命に歩んできた80余年の人生とはどのようなものだったのか、逃げずに向き合う。必ずしも綺麗ごとばかりで括れなかった時代だということは、歴史が証明している。それぞれの人生が「事実は小説より奇なり」ということを、観客ひとりひとりも知っているからこそ、この認知症の母とペコロス頭の息子が紡ぐ笑いと哀切の連続に引き込まれ、どんどん愛おしくなっていく。
「記憶は愛である」。長崎の撮影現場で森崎監督は、そう口にしている。森崎監督自身も認知症と診断を受けていたのだが、浜田毅をはじめとする長年の付き合いになるスタッフたちと総力を結集させ、完成に漕ぎ着けた。過去の記憶をさかのぼっていく母みつえの内面を、実に丁寧に追っていく。忘れずにいることも愛、忘れていたことをふと思い出すことも愛、思い出したくないことまで思い出してしまうこともまた愛。そんなことを、眼鏡橋で迎えるラストシーンで考えずにはいられなくなる。
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「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
2012年に逝去した若松孝二監督が代表を務めていた若松プロダクションが、若松監督の死から6年ぶりに再始動して製作した一作。1969年を時代背景に、何者かになることを夢みて若松プロダクションの門を叩いた少女・吉積めぐみの目を通し、若松孝二ら映画人たちが駆け抜けた時代や彼らの生き様を描いた。門脇むぎが主人公となる助監督の吉積めぐみを演じ、「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」など若松監督作に出演してきた井浦新が、若き日の若松孝二役を務めた。そのほか、山本浩司が演じる足立正生、岡部尚が演じる沖島勲など、若松プロのメンバーである実在の映画人たちが多数登場する。監督は若松プロ出身で、「孤狼の血」「サニー 32」など話題作を送り出している白石和彌。
若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクションの黎明期を描いた映画「止められるか、俺たちを」の続編で、若松監督が名古屋に作ったミニシアター「シネマスコーレ」を舞台に描いた青春群像劇。 熱くなることがカッコ悪いと思われるようになった1980年代。ビデオの普及によって人々の映画館離れが進む中、若松孝二はそんな時代に逆行するように名古屋にミニシアター「シネマスコーレ」を立ち上げる。支配人に抜てきされたのは、結婚を機に東京の文芸坐を辞めて地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治で、木全は若松に振り回されながらも持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていく。そんなシネマスコーレには、金本法子、井上淳一ら映画に人生をジャックされた若者たちが吸い寄せられてくる。 前作に続いて井浦新が若松孝二を演じ、木全役を東出昌大、金本役を芋生悠、井上役を杉田雷麟が務める。前作で脚本を担当した井上淳一が監督・脚本を手がけ、自身の経験をもとに撮りあげた。
惑星クリプトXの研究施設では、宇宙ザメと宇宙植物が秘密裏に育てられていた。しかし宇宙船が隕石にぶつかり地球に落下。その際にサメ型クリーチャーも地球へと送り込まれてしまう。宇宙船が落下した荒野では、麻薬中毒のセラピーを受けていた若者たちが、地球の環境に適応し狂暴になったサメ人間 <シャークベイダー>に次々と襲撃され殺されていく!残った彼らは、宇宙船唯一の生き残り・ノーラと合流し、荒野からの脱出を試みるが…果たして、宇宙ザメと宇宙植物の恐怖から逃げ延びることはできるのか!