【「ユージュアル・サスぺクツ」評論】巧妙な回想とラストに鳥肌が立つ、クライム・サスペンス映画の傑作
2020年5月30日 22:00
[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(https://eiga.com/alltime-best/)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論を毎週お届けいたします。今回は「ユージュアル・サスぺクツ」です。
この映画のエンディングを見終えてからというもの、似たような設定やキャラクターが映画やドラマに出てきた時、もしくは実生活においても裏で何か得体の知れない大きな力が働いているのではないかと感じた時などにふと思い出す名前がある。それほどブライアン・シンガー監督の「ユージュアル・サスペクツ」(1995)のラストに鳥肌が立ったのを覚えている。
シンガー監督は、長篇デビュー作「パブリック・アクセス」(1993)でサンダンス映画祭グランプリを受賞。次に手がけたこの「ユージュアル・サスペクツ」で一躍注目を集めた。5人の前科者による犯罪計画の顛末を巧妙なストーリー展開で描いたクライム・サスペンスで、脚本はその後トム・クルーズといくつもの作品でタッグを組んでいるクリストファー・マッカリーが手がけた。第68回アカデミー賞で脚本賞を受賞している。
そして、その巧妙なストーリー展開と演出をさらに魅力あるものにしているのがキャストだ。クセのある前科者5人を演じた、ガブリエル・バーンの渋み、スティーブン・ボールドウィンとベニチオ・デル・トロのキレ味、ケビン・ポラックの狂気、ケビン・スペイシーの不敵な笑みが相乗効果を発揮。さらにチャズ・パルミンテリ、ピート・ポスルスウェイトらが脇を固めている。彼らの絶妙な演技の応酬が、この映画のもう一つの見どころだ。
なかでも物語の語り手であり、左側の手足が不自由で気弱な詐欺師のヴァーバル・キントを演じたスペイシーは、この演技により第68回アカデミー賞で助演男優賞を受賞。同年製作の「セブン」(デビッド・フィンチャー監督)でも圧巻の存在感を見せ、「L.A.コンフィデンシャル」(1997)に続く「アメリカン・ビューティー」(1999)では第72回アカデミー賞主演男優賞を受賞した。そのほかドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などでの名演を今さら映画ファンに説明する必要はないだろう。(但し2017年から告発が相次いだ性的暴行疑惑のため現在は主だった俳優活動を行っていない)
黒澤明監督の「羅生門」(1953)では複数の登場人物の回想によって物語が進行するが、「ユージュアル・サスペクツ」ではパルミンテリ演じる関税局捜査官が、多数の死者が見つかった麻薬密輸船爆発事件の生き残りの一人であるキントを尋問する形で、回想シーンが効果的に用いられている。キントが語る出来事によって事件が次第に明かされていくが、その中に出てくる、実在しないとも言われる伝説のギャングの名前が“カイザー・ソゼ”だ。
まるでパズルを組み合わせていくような面白さがあるのだが、次第にキントが語る話はどこまでが真実なのか、映画を見ながら組み合わせていたパズルが果たしてあっているのか、見終わった後に自分の頭の中で組み直すことになるだろう。そして、“カイザー・ソゼ”が事あるごとに頭の中でリピートされるようになったら、この映画の術中に嵌ったことになる。
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