【「パルプ・フィクション」評論】斬新な手法がクールな輝きを放ち続ける、バイブル的なバイオレンス犯罪映画
2020年4月25日 09:00

[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは、「映画.comオールタイム・ベスト」(近日一覧を発表予定)に選ばれた、ネットですぐ見られる作品の評論を毎週お届けいたします。今回は「パルプ・フィクション」です。
長編9作目の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019)で、改めて独自の脚本力の才能をいかんなく発揮したクエンティン・タランティーノ監督。1969年のハリウッドを舞台に、ハリウッド史上最も凄惨な事件の被害者として知られる女優シャロン・テートを登場させながら、別次元の世界に展開させるラストには度肝を抜かれた。
そんなタランティーノが、監督デビュー作「レザボア・ドッグス」(1991)で世間をあっと言わせ、その高評価を受けてオールスターキャストで撮った2作目で、第47回カンヌ国際映画祭のパルムドール、7部門にノミネートされた第67回アカデミー賞で脚本賞を受賞したのが「パルプ・フィクション」(1994)である。約25年前の映画であるが、改めていま見直してみても色あせることはなく、クールで映画的な輝きを放ち続けている。
1930~40年代に流行したアメリカの大衆向け犯罪小説である“パルプマガジン”的な物語をコンセプトに、3つの物語が交錯するバイオレンス犯罪映画だが、ユーモアがあり、その語り口、脚本の構成、編集などが映画界に衝撃を与え、タランティーノは時代の寵児となった。その後、似たような構成の映画は“パルプ・フィクション的”と言われることもあり、作り手にとってもバイブル的な映画となっている。
登場人物たちは他愛ない会話をしている。しかし、各シーンにはそのキャラクターの些細な癖や言動が含まれていて、彼らが次に起こすアクションとの対比や矛盾が、キャラクターやシーンを効果的に機能させる。そして時系列通りには描かれないその語り口が、映画作家としてのタランティーノの才能を際立たせている。当時としては斬新な手法で、その後の様々な映画に影響を与えた。
監督デビュー前はレンタルビデオ店で働いていた映画オタクとしても知られるタランティーノ。随所に日本映画など様々な映画の影響やオマージュが見られる。また、役者の新たな魅力を引き出す才能にも秀でており、「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977)で一世を風靡したジョン・トラボルタがこの映画で華麗なる復活を果たした。スタイリッシュな衣装から美術セットまで細部にこだわりを見せているのも特徴だ。
さらに劇中で使用されるジャンルを超えた楽曲の選曲センスも素晴らしく、そのサントラは何度も聴きたくなるナンバーが揃っている。サントラを聴くだけで、一本の映画を見たような満足感を得られるほどクールだ。
未見の方は是非この機会にその作家性を堪能してほしい。遊び心溢れる台詞まわしと突発的なバイオレンスとともに、ラストには今まで味わったことのない映画的な余韻を味わえるはずだ。
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