武田梨奈、20代ラストイヤーに掲げたアクション映画への大きな夢
2020年3月28日 11:00
[映画.com ニュース] 女優の武田梨奈が、俳優の毎熊克哉とダブル主演した映画「いざなぎ暮れた。」が東京・テアトル新宿でレイトショー公開されている。15分ほどの短編として企画された作品が長編になり、世界32の映画祭で16の賞を獲得する快挙を達成。晴れて日本への凱旋を果たし、喜びもひとしおだ。今年は20代ラストイヤー。「やり残したことに挑戦したい」と、アクション映画の代表作を生み出すという大きな夢を掲げた。
「毎熊さんと2人で『こんなに決まっているの?』とちょっと疑うくらい上映されているので、作ったものがいろいろな所に飛び立っていくのが映画のだいご味。小さな映画でも海外の人に届くことに感動して、改めて映画が好きだなって思えました」
武田は、世界を駆け巡る主演作の偉業に映画の魅力を再確認する。「いざなぎ暮れた。」は、沖縄国際映画祭の地域発信型映画として企画された。崖っぷちに立たされた男ノボルが、恋人のキャバ嬢ノリコを連れて遠ざけていた故郷に帰り一発逆転を試みるロードムービー。島根・美保関町でわずか3日間の撮影だったが、その分濃密な時を過ごせたという。
「朝の支度時間の流れの中で、本読みが始まったりするんです。予算も時間もない切羽詰まった状況の中でも自然体でできました。スタッフさんも片手で数えられるくらいだったので、皆を信用して撮ろうという気持ちが強く1カ月くらい一緒にいたような結束がありました」
2人が口論になった後、ノリコがノボルを海に突き飛ばし共にずぶ濡れになるシーンがある。2月の日本海。想像するだけで身が凍る。
「リハーサルをする予定だったんですけれど日が暮れてきて、その日のうちに撮らなければいけなかったのでぶっつけ本番になったんです。だから、現場で一番緊張感のあったシーンですね。毎熊さんには『思い切り投げます』とだけ伝えました。入った時は無我夢中だったので寒いという感覚はなかったんですけれど、カットがかかった瞬間に震えてすぐにお風呂に入りに行きました」
完成した作品は83分の長編となり、沖縄でのお披露目から世界各国へと発信。4月以降も米ヒューストン国際映画祭などに招待されており、その数は35に達する。武田は、2月にモナコ国際映画祭に笠木望監督とともに参加。最優秀主演男優賞(毎熊)と最優秀撮影賞(原俊介)の受賞の瞬間に立ち会った。
「授賞式の前夜祭で、審査員の方が涙ながらに『あなたたちは映画の中で本当に生きていた』と訴えてくれたんです。だから、毎熊さんには絶対に獲ってほしいなと思いました。モナコでは犬を連れて来て一緒に見ている方が何人かいて、そこがすごく面白かった。日本の人たちとは笑うポイントが全く違っていたり、海外の映画祭に行くと毎回いろいろな発見があります」
自身もインド・ムンバイのシネマ・オブ・ザ・ワールドで最優秀女優賞、ハリウッド・ヴァージン・フィルム・アワードで最優秀助演女優賞を受賞。実感はないというが、「神様に一番近い港町」といわれるロケ地・美保関町の“ご利益”は感じている。
「共演した青山(フォール勝ち)さんが、美保神社に行ったら急に仕事が増えたとか、運気が上がったという方がたくさんいたので、そこで撮影の安全祈願ができて味方に付いてくれているのではと感じます。新型コロナウイルスの影響で、いろいろなものが中止になっている中でも無事に公開できていることは、この映画が何かを持っているなと思いますし、私も少しずつ変わってきた感じがします」
その変化の萌芽が、吉村界人とともに初めて企画から参加した映画「ジャパニーズ スタイル Japanese Style」だ。やり残したことを抱える2人の男女が偶然出会い、空港から横浜までトゥクトゥク(タイの三輪タクシー)でさすらうこちらもロードムービーで、昨年末から年始にかけて撮影された。
「皆で朝まで、居酒屋でメモを取りながら話し合い、キャスティングもこの役はこの方にやってもらいたいなど、すべて0からやらせていただきました。今までは与えられた環境があって、公開に向けて動いていたんですけれど、公開に向けて自分たちで発信していかなければならない。本当に大変ですけれど、改めて映画作りに対して勉強になりますし、すごくいい機会だと思っています。大みそかがテーマなので、今年の年末に公開できればいいねという話をしています」
そして、「私、今年が20代最後の年になるんです」とポツリ。6月で29歳となり、やり残したことに挑戦する意欲を新たにし、その第一歩が「いざなぎ暮れた。」であり「ジャパニーズ スタイル Japanese Style」だという。
そこで、やり残していることを問うと「アクション映画です」と即答。昨年9月、韓国で開催されたアジアのアクション映画の国際会議に“日本代表”として招待されたことが大きな刺激になった。
「『ザ・レイド』のヤヤン・ルヒアンや各国のアクション映画の代表の方たちと、それぞれの国の現状や今後どうしていくかという話し合いがあって、皆さんがだいたい同じ意見だったんです。それはマーシャルアーツをテーマにした映画が、カンフー以外ではすごく少なくなっている、ハリウッドに似たような派手さだけのアクション映画が増えているというものでした」
さらに、日本のアクション映画への各国代表の思いも聞いた。千葉真一、倉田保昭、志穂美悦子らの作品へのリスペクトが強く、その後継者にも“指名”され意気に感じた。
「『ハイキック・ガール!』もすごくフィーチャーしていただいたんですが、あれから11年もたっています。先日、久しぶりに『マッハ!』のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督にお会いしたら企画を5本くらい持っていて、私の名前が入っているものもありました。私もこの数年はアクション作品が少なかったのですが、海外の方たちが必要としてくださっていることを実感できたんです。皆さんは映画の未来を見て常にアイデア出しをしているのに、私はやりたいと言っているだけで何もしていない。それが空しくて今、企画書ではないですがプロットのようなものを書き始めています」
そして、「20代のうちにアクション映画の代表作を作りたい」と力強く宣言。その笑顔は、希望に満ちあふれていた。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。