【映画食べ歩き日記】第4回:ショートフィルム×カクテルのペアリングイベントに潜入! 日常に寄り添うショートフィルムの楽しみ方
2020年3月7日 11:00

[映画.com ニュース] ショートフィルム専門のオンラインシアター「ブリリア ショートショートシアター オンライン」(BSSTO)が2周年を迎えることを記念し、ショートフィルムとカクテルを組み合わせて楽しむペアリングイベントが2月19日、東京・池尻大橋のイベントスペース&カフェ「BPM」で開催されました。さらに、同月21日には両国の“泊まれるシアター”「Theater Zzz」でオールナイト上映会も実施。映画.comは両イベントの様子とともに、日常生活の中で気軽に楽しむことができる、ショートフィルムの楽しみ方をレポートします。(映画.com編集部/飛松優歩)

2008年から10年間、神奈川・横浜で営業していたショートフィルム専門映画館「ブリリア ショートショートシアター」。そのブランドを受け継いだBSSTOでは、米アカデミー賞公認の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)」が厳選した作品を毎週金曜に公開。会員登録を済ませると、常時10~12作品を無料で視聴することができる、夢のようなコンテンツなんです。
オンラインだけではなくスクリーンでショートフィルムの魅力を味わってほしいと考えたBSSTOが「BPM」とタッグを組み、上映イベント「池尻ショートフィルム」がスタートしました。これまでも上映時にはアルコールやフードを提供されていましたが、6回目となる今回で初めて、作品の内容に合わせたオリジナルカクテルが誕生。ペルノ・リカール・ジャパンによるクリエイターとバーテンダーを掛け合わせた体験プロジェクト「Jigger Collective」とコラボレーションし、代々木上原のバー「No.」のバーテンダー・荻島渉氏が腕を奮いました。
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この日は、シークレット作品を含め3本のショートフィルムを上映。普段はジャズライブやギャラリーの企画が行われることもあるという会場に入り、まずは1本目「バレンタイン」と2本目「リアル恋人体験」に備え、カクテルを取りにカウンターへ。「バレンタイン」と名付けられたカクテルは、シングルモルトスコッチウイスキー「アベラワー」をベースに、カカオと薬草を合わせた大人のチョコレートカクテル。グラスにはチョコレートパウダーがあしらわれており、ビターな味わいが口に広がります。この濃厚なテイストに合う作品とは、どんな内容なのか……? 期待がぐんぐん高まります。
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オープニングを飾った「バレンタイン」は、親友同士の女の子ふたりを軸に、愛は身近にあると感じられる1日を描いたイギリス映画。メガホンをとったケイト・ヘロン監督は、Netflixオリジナルドラマ「セックス・エデュケーション」のいくつかのエピソードや、マーベルのテレビシリーズ「ロキ(原題)」を手掛けるなど、活躍の幅を広げている注目のクリエイターです。続く「リアル恋人体験」は、失恋を引きずり、インターネットのあるサービスを利用する青年が主人公の米コメディ映画。人気ドラマ「フレンズ」の脚本に携わったマーク・J・クナースが監督を務めています。アルコール度数高めのカクテルを喉に流しこみながら、両作品で表現されている恋愛の切なさや価値観の違いを見つめていると、過去の思い出がよみがえってくるような、特別な時間だと感じられました。
BSSTOを運営するビジュアルボイス社の大竹悠介氏は、「テレビの世界で活躍していた人が映画を撮る時に、最初にショートフィルムから始めるパターンもありますね」と解説。ショートフィルムの世界には、将来の映画界を支える若き才能がたくさんひしめいており、フレッシュなキャストやスタッフを発見できることも、魅力のひとつになっているようです。
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休憩時間にサーブされた2つ目の飲み物は、「ハグ」という名を冠し、47種類のボタニカルを原料に、アルコール度数47%を誇る「モンキー47」のドライジンと、フルーティなアペリティフワイン「リレブラン」を使用したカクテル。先程の「バレンタイン」の甘さとは一転、すっきりした中に幾層にもなる複雑なテイストと香り高さが感じられます。「ハグ」片手に鑑賞するシークレット作品(3本目)は、スペイン映画「ハグ」。スーパーで買い物をしながら、電話で兄弟ゲンカの仲裁をしようとしていた男が、ふとある人物に見つめられていることに気付き、いつも通りだと思えた夜が大きく変化していくという物語。
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2種類のオリジナルカクテルを生み出した荻島氏は、「『バレンタイン』は大人の複雑な関係を、甘苦いニュアンスの味で表現しました」とカクテルづくりの裏側を明かします。もうひとつの「ハグ」は、境界が曖昧な真実と嘘をイメージ。真実の中の優しい妄言や、嘘の中の一握りの確かさなどが伴う妖麗な雰囲気が、「飲む香水」と表現するほどの香り高さで、グラスの中に閉じ込められています。

カクテルを飲みながらショートフィルムを鑑賞する、ゆったりした時間。平日夜の開催だったため、会社帰りと思われるスーツ姿の観客も多く、せわしない日常の中に潜んでいた非日常を皆でこっそりと共有しているような、どこか親密な空気に包まれていました。トークセッションでは、上映作品の感想や質問コーナーはもちろん、ショートフィルムの楽しみ方にも話がおよびます。登壇したSNSで人気を集める映画レビュワー・DIZ氏は「『最近映画見られてないな』と思った時は、BSSTOさんのオンラインで、ショートフィルムを見る生活をしています」と紹介。大竹氏もその意見に賛同し、「映画鑑賞は体力が必要なので、時間がなくて疲れている平日には、難しいこともあると思います。その点、ショートフィルムは短時間でリフレッシュできる、息抜きできる。ちょっと気分転換して、『明日から頑張ろう』と思えるところが良いなと思います」とアピールしていました。
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すっかりショートフィルムの虜になり、2日後に行われたオールナイト上映会にも参加。会場となった“泊まれるシアター”「Theater Zzz」は、男女混合ドミトリータイプの体験型宿泊スタイルのホステルとして営業しています。スクリーンの前には芝生が敷きつめられ、座椅子や寝袋とともにリラックスした状態で映画を楽しむことができる、おしゃれな空間。天井からはドライフラワーが下がり、テントが張られ、野外での夜間映画祭のような趣も感じられます。入口でドリンクやスナックをチョイスし、6時間半(午後10時~午前4時30分)にわたるショートフィルムの世界を全力で楽しむため、幸運にも空いていたテントの中におさまることができました。好ポジションをゲットし、飲んだり食べたりリラックスしながら、あとは上映を待つばかり。最高の週末の始まりです!
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ショートフィルム計23本というボリューム、そしてBSSTOの編成会議で配信が見送られたというエッジのきいたディープな内容もあいまって、先日のペアリングイベントよりも濃密な時間になりました。初対面の観客の間にも、非現実的な一晩をともにすることで、不思議な絆が育まれたように感じられます。上映作品は「きわどくてNG 愛のプログラム」「ハードコア過ぎてNG アートフィルムプログラム」「不思議ちゃん過ぎてNG ファンタジープログラム」「そのうち機会があればで 実は良作プログラム」という4つのユニークなカテゴリーに分けられていました。カテゴリーの合間には、コンセプトや内容を解説するトークの時間も設けられており、めまぐるしく始まり終わっていく各作品を、じっくりと振り返ることができる工夫も。フランス、スペイン、スウェーデン、オーストラリア、インドネシアなど世界各国から、実写やアニメーションなど多彩な形態の作品が集結。ショートフィルムと一口に言っても、5分程度のものから30分におよぶものまで、上映時間も様々です。
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折り返しに設けられた長い休憩時間では、「久芳焙煎所」がブレンドしたオリジナルコーヒー「ShortShorts Blend」とフルーツサンドのおやつタイムでリフレッシュ。休憩中に会場を探索していたところ、スクリーンのそばに気になるものを発見! 何とハーゲンダッツのミニ冷蔵庫で、中をのぞくとクリスピーサンド(ザ・キャラメル味&期間限定のイチゴのトリュフ味)がギッシリ詰まっています。こんなにたくさんのハーゲンダッツが入った夢のような冷蔵庫、見たことない……。感動にうち震えていると、キャンペーン期間中だったようで、アンケートに答えればおかわり自由とのこと。ハーゲンダッツは大いに好評で、来場者はアイスで頭をすっきりさせながら、めくるめくショートフィルムの世界に身を投じていました。
印象的だった作品は、「ファンタジープログラム」で上映された30分のスイス映画「彼女とTGV」。ヨーロッパを代表するベテラン女優ジェーン・バーキンが主演を務め、第89回アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされています。孤独な女性と鉄道運転手との間に起こる物語を描いた、切なくもあたたかい物語。また、「アートフィルムプログラム」のスウェーデン映画「THE BURDEN(英題)」は、ネズミや犬がスーパーマーケット、ホテル、コールセンター、ハンバーガーショップなど様々な場所で歌い踊る、シュールな雰囲気のミュージカル。「愛のプログラム」のフランス映画「DAD IN MUM」は、情事の音が漏れる両親の部屋の前に立ち尽くす幼い姉妹を描いています。セックスをのぞく姉妹の会話がユーモラスに展開しますが、やがて思いもかけない結末へと向かっていきます。
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映画館に足を運んだり、動画配信サイトで映画を見たり……、仕事で疲れて家に帰ってくると、「映画のある生活」を夢見ながらも、なかなか時間をとることができない人も多いのではないでしょうか。しかし、上映時間が短いショートフィルムなら、構えることなく、気軽に映画を楽しむことができます。現実から少しの間抜け出し、様々な世界や感情をのぞき見ることができる、非現実世界への入り口。ショートフィルムはまさに、映画とともにある生活を実現させる身近なコンテンツなのです。さらに、イベントを通して気付いたのは、(当たり前ですが)長編映画以上のスピード感で物語が展開すること。様々な暗示や伏線に満ちたストーリーも多く、一度見ただけでは理解できないものも。しかし、ストーリーが短いことで解釈の幅も広くなり、そして何より何度でも見返すことができるんです。 ショートフィルム最高!
池尻ショートフィルムで上映された「バレンタイン」は5月6日まで、「リアル恋人体験」は同月27日まで、また「ハグ」は3月6日~6月5日まで、BSSTO(https://sst-online.jp/)の無料会員登録をすると視聴できます。また、オリジナルカクテル「バレンタイン」と「ハグ」は、3月20日までの期間限定で、代々木上原のバー「No.」で提供されています。
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