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寺島しのぶ×蜷川実花×スプツニ子!が語る、現代女性が直面する課題やジェンダーによる格差

2019年11月1日 13:00

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日本文化を牽引する女性たちが熱くトーク
日本文化を牽引する女性たちが熱くトーク

[映画.com ニュース] カンヌ国際映画祭で2015年から公式プログラムとしてスタートした「ウーマン・イン・モーション」は、同映画祭のオフィシャルパートナーで、グッチ、ボッテガ・ヴェネタなどのラグジュアリー・ブランドを擁するケリングが主催するプログラムだ。映画界、アート界の表舞台・裏舞台の両側面で活躍する女性にスポットを当てるために始まった。それが今年、発足5周年を迎えたことを記念し、第32回東京国際映画祭の公式プログラム/特別シンポジウムとして、10月31日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された。

会場には、招待された100人超の観客が来場。本イベントに際して、3人の豪華ゲストが招かれた。俳優・寺島しのぶ、写真家・映画監督の蜷川実花、アーテイストのスプツニ子!。グローバルな活躍がめざましく、日本の文化を牽引する女性として知られる3人が、現代女性が直面する課題やジェンダーによる格差などを語り合った。

ジェンダー格差や性差別といった問題は、2017年の「#Metoo」運動を皮切りに、ハリウッドを震源地としてカンヌ、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞など、映画人の女性達が立ち上がり、世界にそれが波及したのが記憶に新しい。それを受け、日本はどのような状況なのか。

蜷川は「私がデビュー当時、映画にしても写真にしても“女性の”“女流の”といった枕詞がつきまとってきた。でも最近はそれはなくなり、むしろ“父が蜷川幸雄”という呪縛の方がのしかかってきた」と笑い交じりにコメント。今年のカンヌ国際映画祭での“ウーマン・イン・モーション”に参加したスプツニ子!は#Metoo運動に触れ、「あの運動のおかげで“声をあげてもいいんだ”という世の中にはなったと思う。SNSは功罪があるものの、発信力は絶大。人口の半分は女性なのに、女性がニッチ扱いされるのはおかしな話」と問題点を鋭く指摘。それに対して寺島は、「日本には若くてかわいい女性を愛でる文化が強く残っているせいか、大人の女性が主役の脚本自体が非常に少ない。私のところに来る脚本でも、“誰かの母親役”というようなものばかり」とため息交じりに語った。

どんな仕事の現場でも女性よりも男性の方が多数派であることや、映画で描かれる女性が“男性が理想とするヒロイン”であること、働く女性が家庭で旧来の“主婦”として扱われる矛盾など。各分野の第一線で活躍する女性だからこそ見える景色が飛び出し、三者自身も問題点を明確に顕在化させた。

トークの中でも最も盛り上がったのは“育った環境”。寺島は梨園、蜷川は父が演出家、スプツニ子!は両親とも数学者で母親が英国人と、日本の一般的なサラリーマン家庭とは異なる環境で育っている。そこで寺島は蜷川幸雄から言われたことが、今に生きていることを明かした。

「育った環境は本当に大事。歌舞伎界という男性主体の特殊な環境で育ったことで、若い頃は反発心を抱えていた。でも19歳で『血の婚礼』に出演した際、蜷川(幸雄)さんに“コンプレックスのかたまりだな”と指摘されてハッとしたんですよ。“これから確実に君は苦労する。周囲を怒らせることもあるかもしれないが、怒らせることを言ってもいいくらいの技術をつけろ。正々堂々とやれ”とも言ってくださった。そのことが今でも胸に刻まれていて、感謝している」

それに対して蜷川は「私が小さいころは母が稼いで父が育児ノイローゼになるほど熱心なイクメンであり主夫だったし、私に対しても“男でしか社会とつながれない女にはなるな”と言われて育った。男女不平等ではない環境だったおかげで今がある」と思い出をポロリ。「学生時代、母からは“私は大学でバリバリ教えてる教授なんだからかっこいいのよ”と言われていた。私もそう思っていたし、同級生が立派なお弁当を持ってきていても“うちの母はかっこよく働いているから”と誇りに感じていた。やはり育った環境で子どもがどう受けとめるかということは大事」と、スプツニ子!も自身の体験から教育や家庭環境が与える子どもへの影響を受けとめていた。

社会において、ジェンダーの壁はいまだ厚く、それゆえの問題は多数ある。#Metoo運動をきっかけに噴出した女性たちの不満が世界に広がったのは、問題提起としては有効。だが、現状は特定の問題だけに萎縮している傾向がある。三者三様ながら彼女らの自由な生き方、育てられ方こそが、ジェンダーにとらわれることのない自由に発展する社会への一歩であることを感じさせられた特別なひとときだった。

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