現代ノルウェーのキリスト教カルト問題を描いた「ディスコ」監督が語る製作意図
2019年10月30日 21:30

[映画.com ニュース] 第32回東京国際映画祭のコンペティション部門出品作「ディスコ」の公式会見が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木で行われ、ヨールン・ミクレブスト・シーベシェン監督、主演女優のヨセフィン・フリーダ・ペターセンが登壇した。
「ディスコ」は、フリースタイルディスコダンスの世界大会で優勝を重ねる少女ミリアム(ペターセン)が、出生の悩みや家族の影響でキリスト教カルト団体に傾倒していくという衝撃作。音響・照明などを利用しキャッチーな集会を行う教会、テレビ番組の放送をする教会、山奥のキャンプ地で「浄化」と称して虐待を行う教会など、現代のノルウェーに実在するカルト宗教団体の姿がリアルに描き出されている。タイトルの「ディスコ」は、主人公のダンスであるとともに「表面的には接しやすいが、ダークな場所へと連れて行く」という意味と、「保守的なキリスト教徒からみる『世俗の世界』のイメージ」を重ねて付けられた。
脚本も務めたシーベシェン監督は、製作に際し信者・元信者・牧師へのインタビュー、数多くの集会に訪問するなど、入念なリサーチを行ったと振り返る。作品自体はフィクションだが、それぞれの団体や出来事には、インスパイア元となった実在の組織や証言が存在するという。
宗教問題に鋭く切り込んだ本作は、ノルウェーでの公開以後、多くのキリスト教新聞や全国紙に取り上げられた。元信者であった観客からこの題材を取り上げたことへの感謝の声が届くなど、ポジティブな反応も多くあったが、カルト宗教団体からは反発も多く、一部団体からはインターネット上にヘイトが書き込まれることもあったようだ。
「『組織の話ばかりで、キリスト教の本当のメッセージは含まれていない』という反応もありました。しかしそのメッセージの無さこそが、私が本作で描きたかったテーマです。映画の公開後、テレビ番組で宗教団体の人と議論を行う機会が何度かありましたが、彼らは口では『議論は歓迎です』というものの、『この映画に描かれているのは個々人の問題であり、宗教組織の構造自体の問題ではない』とわい小化したり、核心を突こうとするとはぐらかしたりするのです」
主人公ミリアムを演じたペターセンは、世界大会のシーンでは激しいダンスを披露。一方で家族関係に悩み、揺れ動く内心も繊細に演じた。作品のリサーチに際しては、シーベシェン監督とともに数多くの教会を実際に訪れたそうで「体力的にも、肉体的にも、精神的にもハードな役で、やりがいを感じました。監督が求める演技の水準の高さも、本作のメッセージ性も魅力的でしたが、一番の魅力は素晴らしい監督と組めたことです」と誇らしげに語った。東京国際映画祭は、11月5日まで開催される。
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