なぜ芸術に公的支援は必要なのか?あいちトリエンナーレ補助金不交付問題を受けて映画人が激論

2019年10月24日 13:00

深田晃司監督(右)と土屋豊監督
深田晃司監督(右)と土屋豊監督

[映画.com ニュース]深田晃司監督、土屋豊監督が共同代表を務める特定非営利活動法人「独立映画鍋」が主催する集会「なぜ芸術に公的支援は必要か? みんなで考えるニッポンの文化~あいちトリエンナーレ補助金不交付問題を受けて~」が10月23日に下北沢アレイホールで行われた。客席には是枝裕和監督、諏訪敦彦監督らをはじめとした映画監督、興行関係者、プロデューサーなど幅広い映画人たちが来場。「芸術に税金を使うこと」「表現の自由と検閲」「公益性とは?」「今後の文化庁との向き合い方」といった明確な答えが出しづらいテーマについて、それぞれの立場から活発な議論をぶつけあった。

今回の議題に上がったのは、9月26日に文化庁が決定した「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付問題。こちらが特定の芸術分野にとどまる問題ではなく、民主主義の基本理念である「表現の自由」に対する大きな問題を孕んでいると考えた「独立映画鍋」は、この件に関して文化庁に抗議声明を提出。しかし、抗議文の文面を考える過程で「映画に関わる人の声があまり聞こえてこない」ことから、今回の集会が行われることになったという。「独立映画鍋」の立場としては、今回の文化庁の決定に対しては「反対」の立場を明確にしつつも、映画人として、現場の声を公的機関に伝える架け橋的な役割を果たしていくことを表明。文化庁の関係者からも「なぜ映画に公的資金を使わないといけないのか。映画人から納税者に対する説得力のある言葉が欲しい」という期待の言葉が寄せられているという。「文句があるなら自腹でつくれば?」「市民を不快にさせる芸術になぜ補助金が?」「税金に頼るな!」といった言葉を正面から受け止める映画人の言葉とは何か、といったテーマを踏まえてこの日の議論は行われた。

また、2014年に大阪アジアン映画祭での上映を目指し、地元住民やNPO、大阪市からの後援を受け製作されたものの、映画完成後、大阪市よりいくつかの修正を指示された太田信吾監督の映画「解放区」(現在公開中)、さらに文部科学省(文化庁)所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、 麻薬取締法違反で有罪判決を受けたピエール瀧氏が出演する「宮本から君へ」(現在公開中)の助成金交付内定を「国が薬物を容認する」との理由付けで取り消したことなども議題にのぼった。それに対して、会場からも「海外に比べ、日本には本当の意味での検閲はない」「行われているのは検閲ではなく、メディア側の自主規制」「『宮本から君へ』は麻薬を擁護する映画ではない。まずは作品を観るべき」「『宮本から君へ』のケースはもっと映画人が声を出すべき」「与党議員は表現の自由を理解していないのではなく、むしろ大衆が考えていることに敏感。だからこそ、アートや映画は余裕がある人がやるものだという大衆の嫌悪感に敏感になっている。それが世界的に見ると、トランプ主義、ネトウヨなどにつながっている」など、次々と意見が飛び出した。

「この2時間でこの議論に結論が出ることはない」と深田監督が宣言した通り、この日はさまざまな立場の映画人からの意見、問題点などが飛び交った。その様子に深田監督も「是枝さんなど、いろいろと発言をしてくださっている方が少しずつ増えてきて、いいことだなと思っているんですけども、それでもこれまでこうした議論をしてこなかったことが、今の日本の文化状況を作ってきたのかなと思っています。ですから、今日のこの議論は継続していけたらと思っています」と宣言し、集会を締めくくった。

(映画.com速報)

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