ランビール・シンがラップスターに! インドの格差社会と音楽シーンを描く「ガリーボーイ」監督に聞く
2019年10月17日 15:00

[映画.com ニュース]「パドマーワト 女神の誕生」などで知られる人気俳優ランビール・シンが主演、米国のラップスターNAS(ナズ)がプロデューサーに名を連ねるヒップホップ映画「ガリーボーイ」が10月18日から公開される。メガホンをとったゾーヤー・アクタル監督が来日し、作品を語った。
ムンバイのスラムで生まれ育った青年ムラードが、ラップとの出会いによって人生を一変させる青春サクセスストーリー。インドで活躍するアーティスト・NaezyとDivineの実体験を取り入れ、数多くのストリート系若手ミュージシャンが参加。ボリウッド映画史上初とも言える本格的なヒップホップ映画に仕上がった。超格差社会でサバイバルする主人公が、ラップで階級差別に闘いを挑む姿を軸に、現在のインドの音楽シーンや、インド映画のステレオタイプとは異なる、自立した女性たちの姿も描き出している。
私自身、ヒップホップ音楽が大好きで、米国の音楽を追っていましたが、インドのシーンに注目したことはなかったのです。しかしある時、一度もインドを出たことのない20代のラッパーの動画を見つけたのです。彼は、インターネットでラップを知って、自分の表現に昇華したのでしょう。今のインド社会を歌い、彼の境遇が伝わる正直なメッセージでした。映画製作者として、ここにストーリーがある、世界に伝えたい題材だと思ったのです。
もちろん私は、いわゆるストリートの人間ではありません。けれど、ムンバイという街で暮らす彼らと隣りあわせなのです。そこで実際に起きていること、現実を見ないことはできません。私たちは同じ人間で、感情も同じだと思うのです。私は、あくまでストーリーテラーという立場で、心が動かされ、この題材が感動を呼ぶもの、何かいいものになると確信したのです。これまで商業的でポップな音楽の使い方の一つとしてラップを使った映画はありましたが、このようにストリートから派生した音楽シーンそのものを描いたインド映画は初めてではないでしょうか。
彼はラップが好きで、音楽にも詳しいのです。ムンバイ出身なのでストリート風の話し方もわかっていて、私がこの話を持ちかけたら、即決してくれました。とても役にのめりこんでくれて、実際のラッパーたちともつるんでくれました。この作品の前に、「パドマーワト 女神の誕生」という大作に出ていてたので、今回役作りのためにかなり体重を落としたようです。
Divineと音楽活動を休止したNaezyに対してのトリビュートです。彼らの体験が物語の核となり、この映画のコンサルタントと言えるのですが、ふたり以外にも、多くのラッパー、とストリートの音楽に触れている人にインタビューをし、様々な人が見聞きしたことを盛り込んでいます。divineは1シーンMC役で出演し、スタジオでランビール・シンに歌唱の指導をしてくれました。
そのおかげか、興行は自分でも予想できないほどの評判でした。今回、54人の新人アーティストが参加しており、この映画の成功にある意味彼らの将来が掛かっていたのです。そういった意味でも、映画が成功してよかったと思っています。

仰るとおり、そういった目線で女性を描きました。実際に、私の周りのインド女性は精神的に自立しているので、こういったキャラクターは描くのは難しくないのです。もちろん、インドは家父長制が強い社会で、全ての作品がそうではありませんが、抑圧された女性が多く描かれています。ですから、意識的に今回、こういったキャラクターを映画の中で投影していきたいという気持ちはあります。同時に、男性をどう描くかも同じように大事です。マッチョで、毒にしかならない存在にしたくはありませんでした。
インドの映画業界はオープンなので、年々女性監督が増えています。男女問わず、商業的に成功できる映画を撮れるのであれば、誰も何も言いません。ただ、私は両親も業界で知られていた存在だったので、早くから活動できたということもあります。
しかし、俳優は男優の方が多くギャラが払われていると思います。スターシステムがあり、興行的に人を呼べるかどうかが大事なので。その点では、残念ながら女優の方が受け取る報酬は低いのではないでしょうか。
「ガリーボーイ」は、10月18日から新宿ピカデリーほか、全国公開。
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