「クレイジー・リッチ!」監督、賃金格差論争で降板のアジア人女性脚本家にエール
2019年10月3日 12:00

[映画.com ニュース]大ヒット映画「クレイジー・リッチ!」のジョン・M・チュウ監督が、米ワーナー・ブラザースが準備中の続編で再び共同脚本を手がける予定だったものの、賃金格差をめぐる争議のすえ降板したアジア系女性脚本家アデル・リムへの支持を表明した。米ピープル誌が報じている。
チュウ監督は自身のTwitterに長文コメントを投稿。「言うまでもなく、僕は100%アデルの味方だ。あの映画を撮る前から彼女の才能を信じていたし、撮り終えた今ではその確信がさらに強まった」とリムに全幅の信頼を寄せるチュウ監督は、「契約交渉というのは、誰にとっても厄介なもの。控えめな提案をするスタジオ側とより好条件を求めるタレント側が、オファーと逆オファーを繰り返して妥協点を見出すわけだが、アデルはとても親しい友人だから、彼女が最初の提示額に不満だと聞くや否や、2人の脚本家に支払う賃金を同額まで引き上げるべく行動を起こしたんだ」と経緯を説明したうえで、「自分の価値を毅然と主張した彼女のことを誇らしく思うし、過小評価されたと感じたのであれば、自ら降板して当然」とリムを擁護した。
米ハリウッド・レポーターが情報筋から入手した話によれば、そろって続投が決まっていた共同脚本家のピーター・チアレッリへの提示額が80万ドル(約8600万円)だったのに対し、リムには11万ドル(約1180万円)しかオファーされなかったという。さらにワーナーがその理由を、「実績に基づく業界基準の範囲内であり、ここで例外を認めれば、映画業界にとって好ましくない前例となり得るから」と説明したことで、昨今のハリウッドで問題視されている男女、ならびに白人・有色人種間の賃金格差をめぐる論争にまで発展。見かねたチアレッリが、自身とリムのギャラを足したものを等分するという妥協案を提示するも、問題解決には至らなかった。
降板を発表するに際してリムは、「ピーター(・チアレッリ)の申し出には心から感謝していますが、白人脚本家のご厚意に頼らなければ、自分の価値に見合う賃金がもらえないなんて、間違っていると思うのです。業界基準が実績に基づくものだとしたら、『クレイジー・リッチ!』であれだけの成果を出した私でさえ平等賃金が得られないというのに、そもそも雇われもしないゆえ実績を積むことも出来ない有色人種の女性たちは、一体どうすればいいのかと案じずにはいられません」と同紙に語っていた。
チュウ監督はこれに触れ、「映画業界が健全に発展していくためには、女性と有色人種をあらゆる面で平等に扱うことが不可欠、というアデルの意見はもっともだと思うけど、実現するまでにはまだ長い道のりがあるというのも事実。簡単に答えが出る問題ではないものの、大事なのは解決に向けて自分なりに考え、歩みを止めないこと。最後に、今回の出来事に関心を示してくれたり、意見をくれたり、僕たちを応援してくれたりした皆さんに、心からの感謝をささげます」と締めくくった。
ちなみに続編も、前作の原作となったベストセラー小説「クレイジー・リッチ・アジンズ」に続くケビン・クワンの著書、「チャイナ・リッチ・ガールフレンド(原題)」と「リッチ・ピープル・プロブレムズ(原題)」を映画化するもので、2本立て続けに撮影する計画のもと、2020年末のクランクインを目指しているとのことだ。
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