「ジョーカー」続編否定のトッド・フィリップス監督、ゴーサイン出す唯一の条件は?
2019年9月24日 18:00
[映画.com ニュース] 第76回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、DCコミックスの映画化作品としては史上初めて、最高賞の金獅子賞を受賞した「ジョーカー」。早くもオスカー最有力の呼び声高い主演、ホアキン・フェニックスとともに、本作を生み出したトッド・フィリップス監督が映画.comの取材に応じた。続編製作やシリーズ化について「予定はない」と否定するフィリップス監督が明かす“唯一の可能性”とは?
「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、映画オリジナルのストーリーで描く本作。コメディアンとしての成功を夢見る大道芸人のアーサーはやがて、人々を恐怖に陥れる悪のカリスマへ――。その変貌を体現したのが、フェニックスの心身を追い込んだ演技だ。一説には役作りのために、約24キロの減量に挑んだと言われるが、フィリップス監督の目にはどのように映ったのだろうか。
「これは皆さんも納得してくれると思うが、ホアキンは間違いなく同世代のなかで、最も優れた俳優だ。実際、現場で彼がもたらしてくれたものは、驚きの連続だった。ただ、いかにすばらしいかを言葉で説明するのは難しい。1シーン撮るごとに『今の、見たかい? 信じられない!』と口をポカンと開けるばかりでね」
劇中でフェニックスが披露する“ダンス”シーンも必見で「初期の頃からホアキンと話したのは、アーサーとジョーカーの頭の中には、常に音楽が流れているということ。これを表現する手段がダンスであり、彼のメタモルフォーゼを表している」と意図を語る。
二日酔いで記憶をなくした男たちのドタバタ騒動を描く「ハングオーバー!」シリーズで知られるフィリップス監督が、DCコミックス、しかも史上最強のヴィラン(悪役)であるジョーカーを映画化することに、当初は懐疑的な声もあった。しかし、映画を見れば“笑い”が重要なエッセンスになっていることに気づくはずだ。「人生は笑えない喜劇なのだ」と――。
「アーサーは、『どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい』という母の言葉を糧に生きているが、その半生は悲惨なものだ。そんなときこそ“笑い飛ばすしかない”んだ。これは僕自身が、コメディ映画を数多く手がけるなかで、学んだこと。結果的にメッセージ色の強い作品になったが、伝えたいメッセージを定義づけはしたくないんだ。あくまで観客に委ねたい。政治的な作品だと思う人もいるかもしれないが、それは私たちの意図ではないよ。強いて言えば、人道的な作品だと言えるかもしれない」
ベネチアでのワールドプレミア実施以来、取りざたされるシリーズ化やDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)参戦については、「まったく考えていない。『ジョーカー』は独立した1つの作品だ」と断言。映画の舞台を70年代後半から80年代初頭に設定しているのも「DCEUとの接点を絶つため」だと説明し、「タクシードライバー」「狼たちの午後」「キング・オブ・コメディ」といった同時代に生まれた名作たちが、作品に影響を与えているとも語った。
それでも、あえて「もしも、ホアキンがもう1度、ジョーカーを演じたいと言ったら?」と質問すると、フィリップス監督は思わずニヤリ。「もし彼が本気でそう言うなら、真剣に検討すべきだろう。状況は一変するはずだ(笑)。今のところ、そういう提案は出ていないけどね。ただ、ホアキンとまた仕事ができるとしたら、わたしは何でもやるつもりだ。それほど、ホアキンはすばらしい俳優だし、今回のタッグは映画人生において最高の経験だったからね」
「ジョーカー」は10月4日から日米同時公開。
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